将来のイメージセンサはフォトンの持つ他の情報も利用する
イメージセンサは入射するフォトンを受ける装置であるが、フォトンは次の図のように色々な情報を含んでいる。
空間情報としては、2次元の位置、距離、入射方向などの情報があり、波動情報としては振幅、スペクトラム、偏光、位相などの情報がある。また、時間方向には時刻や継続期間の情報がある。
例えば、2眼のステレオカメラを使えば距離情報を取り出すことができる。次の図の右側の写真は距離が近いものを赤く表示した検出結果である。このような距離情報の抽出はゲーム機などですでに使われている。
将来のイメージセンサの方向性
これまでに説明したように、イメージセンサの解像度の改善やダイナミックレンジの拡大などのイメージ品質の向上は、今後も続けられることは間違いない。
ピクセルのサイズを小さくすると解像度が上がるが、微細加工技術が必要になる。フレームレートを上げるためには高速でも消費電力の低いプロセスや回路の開発が必要となる。一方、ピクセルを大きくするとSN比やダイナミックレンジは改善されるが、ノイズのもととなる半導体プロセスの汚染や欠陥を減らす必要がある。そしてグローバルシャッターやカラーリアリティを改善するには微細加工技術が必要となる。
また、イメージセンサに多くの機能を持たせるためには、現在のピクセルチップとADCなどのロジックチップのスタックだけでなく、プロセサチップやメモリチップも積層することが必要となってくる。
フォトンの持つ未利用の情報を利用して機能を向上
また将来は、現在のイメージセンサが十分に利用していないフォトンの情報を利用してセンサの能力を向上させることも行われる。現在のイメージセンサはRGBの3原色のスペクトラムに入射光を分解しているが、次の図のように、より多色のフィルタを使い、微妙な色彩の違いを識別するという拡張もある。
また、偏光を識別するという手もある。次の図の左の写真ではフロントグラスの反射で運転者の顔は識別できないが、反射の影響を受けにくい偏光だけを取り出せば、右の写真のように運転者を識別でき、監視カメラの有効性を改善することができる。
パルス発光する光源を使って、反射光のタイミングを測れば、レーダーのように対象物までの距離を精度よく測ることができる。
まとめ
まとめとして、
- イメージセンサは顧客のニーズにあわせて異なるものが作られており、種類が多い
- 特性によっては、人の目を超える能力を持つ
- 3Dスタック構造により、高性能化と多機能化を実現
- フォトンのもつ情報をフルに活用することにより、イメージセンサのビジネスを拡大することができる
- それには3つの方向性がある
将来の方向性としては、
- More Imaging:低電力、低ダメージ、低汚染の半導体技術を利用したイメージング性能の改善など
- More Than Imaging:3Dスタックによる多機能化など
- Beyond Imaging:新しいマテリアル、新しい構造を使うフォトンの情報の利用の拡大など
がある。
現在の延長の画像品質の改善(More Imaging)、3Dスタックによる多機能化(More Than Imaging)、現在は利用されていないフォトン情報を使う新しいセンサの開発(Beyond Imaging)などが将来の開発方向となる |
車の自動運転やロボットの発達には、イメージセンサは欠くことのできないデバイスであり、今後も大きな発展が予想される。この平山氏の講演レポートは、イメージセンサの現状と将来の方向性を分かりやすくまとめたものであり、イメージセンサの理解に役立つと思う。