COOL Chips XIXにおいて、Maxeler Technologiesの創立者でCEOのOskar Mencer氏が、同社のデータフローコンピューティングについて基調講演を行った。また、Mencer氏はImperial College LondonのSenior Lecturerも務めている。

MaxelerでCEO兼CTOを務めるOskar Mencer氏 (出所:Maxeler Webサイト)

Maxelerの計算エンジンは、プログラムに書かれた加算や除算などのそれぞれの処理をチップの上にそれぞれの演算器として作り込む。そして、演算器などのそれらの処理ブロックの間でデータを流して計算するデータフロー型の処理を行う。この処理はベルトコンベヤを使う製造ラインのように動き、コンベヤの入り口から出口までに掛かる時間とは無関係に、1ステップの工程を処理する単位時間ごとに1つの入力データの処理を行うことができる。

つまり、処理が複雑になり、パイプラインのグラフを通り抜ける時間が長くなっても、処理のスループットは低下しない。ただし、処理の複雑度に比例して処理ブロックの数が増えるので、チップの面積は多く必要になる。

Maxelerはプログラムに書かれた処理を生産ラインのように順にチップ上に作り、データフロー的に処理を行う (以降のすべての図は、COOL Chips XIXでのMencer氏の基調講演で示されたものである)

Maxelerが主導して、2013年に、この計算原理に基づく処理系の普及を目指す「OpenSPL(Spatial Programming Language)Industry Consortium」が立ち上げられ。メンバーに石油大手のChevronが入っているのは、Maxelerの最初のユーザがChevronの石油探査のデータ解析であったからである。また、シカゴの先物取引市場のCMEグループが入っているのは、J.P.Morganのデリバティブの計算でMaxelerのマシンが、これまで8時間かかっていた計算を2分に短縮するという高性能を発揮したことと関係がありそうである。

2013年に、スペースで計算を行なう処理系の普及を目指すOpenSPL Industry Consortiumを立ち上げた

Maxelerは、過去10年、FPGAを使ってデータフローエンジンを作ってきている。

FPGAで作られているMaxelerの第4世代DataFlow Engine(DFE)

そして、ラック搭載型のサーバにDFE(DataFlow Engine)ボードを何枚か搭載したサーバを作っている。DFEを使えば、通過するパケットの内容を解析して、処理を行うことができる。また、Juniperは、DFE部で通過するすべてのパケットを解析し、リスクの分析やロードバランスを行う機能をもつスイッチを作っている。

MaxelerはDFEボードを搭載したサーバを作っている。DFEを使えば、通過するすべてのパケットを調べて処理を行う事ができる

データフローコンピューティングを使えば、金融関係では、それぞれのトランザクションのリスクの評価や価格の妥当性の解析も可能になる。また、リアルタイム性を必要とする高速トレーディングの判断を行わせることも可能である。

DFEは、高い計算能力を持つので、政府機関のスーパーコンピュータ(スパコン)としての使用や、すべてのパケットを調べてセキュリティを向上させるという用途にも使える。高い計算能力は、産業界でも各種の用途に使える。

Maxelerのデータフローコンピューティングは金融、政府機関、科学やエンジニアリング、テクノロジなど色々な分野で役立つ