計画停電は日本全国共通の課題

東日本大震災が発生してから約1ヵ月間、首都圏の最重要事項だった「計画停電」も今ではうやむやになりつつあります。とはいえ、初めて1日2回の停電が実施された「3・17」を経験した筆者にとって、そうそう忘れられることではありません。

当日はまったく仕事になりませんでした。「真冬並みに気温が下がったため」と東京電力は釈明しますが、2回目の停電中、都心をぐるぐる回るJR山手線の車内はガラガラで「空気」を運んでいたのですから、「無計画停電」と揶揄されるのもさもありなんです。

現在、東京電力は計画停電を終了し(正確には「原則不実施」)、真夏に向けて自主的な節電を呼びかけ、停電を回避しようとしています。本稿をお読みの東北・関東以外にお住まいの方には関係がない……と言えないところに、事態の深刻さがあります。それは「原発」です。

未曾有の地震に想定外の津波による福島原発を受けて、浜岡原発の停止が政府から要請されました。これにより、中部電力の電力供給能力は最大のピーク時とほぼ同等となり、綱渡りの運営が危惧されます。

電力不足は対岸の火事ではありません。沖縄を除いたすべての地域電力会社で原発は使われ、特に関西電力では管内電力の48%が原子力で発電されており、東京電力の28%を大きく上回ります(関西電力は2010、東京電力は2009年の値)。政府は浜岡原発だけを「特別」としますが、定期点検で停止している原発の再稼働に懸念を示す世論への広がりが懸念されます。

気温が1度上がると電力消費量は80万キロワット増えると言われています。するとこの夏……と脅かすわけではありませんが、地震大国であり、原発中心の電気政策を採用している日本において、電気のない生活というのは他人事ではないわけで。「電気が止まった日」をどうサバイブするかは都市生活者にとって喫緊の課題と言えます。

メタルは災害に強し

我が町足立区の3分の1は計画停電によって電気が止まりました。テレビやラジオ、インターネットから遮断されると、無性に「人恋しく」なり、小社の在宅スタッフに電話をかけてしまいました。携帯ではなく「固定電話」にです。

昔ながらの銅線で接続されたNTTの固定電話は、電気が止まっても通話ができます。固定電話は基地局から流れてくる微弱な電気を信号に変えて通話する仕組みをとっており、NTTの基地局は緊急の停電にも堪えられる発電施設を備えていると、NTTの「お客様センター」のお嬢さんが胸を張って答えます。

ただし、いわゆる「黒電話」のように電源がなくても通話できる機種に限られ、集合回線や無線子機からの通話はできません。そして、スタッフは私の暇つぶしに付き合わされたのでした。

状況は前回触れた震災直後と同じです。連絡手段の確保は「電気が止まった日」の必須命題です。携帯電話があれば事足りるという慢心はバッテリーに命運を委ねるリスキーなものです。そこで、固定電話を「通話用」、携帯電話は「ネット用」とリスクを分散します。

ただし、携帯電話には「着信機能」もあり、上司や取引先からの電話を拒否すれることは至難の業です。バッテリー切れ対策として、ノートPCとUSB携帯充電ケーブルを用意します。これでノートPCが携帯用バックアップ電源に変身します。ケーブルは100円ショップでも売っており、連絡手段確保の保険料と考えれば安いものです。

ネット通信は無計画停止

連絡手段と言えば、「計画停電」の実施エリア以外でもネットが止まることがあるのをご存じでしょうか? ネットが繋がらなければ、前回に紹介したiChatもスカイプも使えません。2回目の停電が終わった夕方から仕事を再開した2時間後、ネット回線が不通になり、比喩ではなく「仕事にならない」と布団に潜り込みました。

翌18日も夕方の6時20分から計画停電が予定されていたので、ニワトリよりも早く起きて昨日の遅れと、当日の予定をこなしました。計画停電まで残り1時間を切ったラストスパートの5時30分、ネットが不通になりました。この時刻は隣の第4グループが停電してから2時間ほどたっており、前日ネットが不通となった時間も第4グループが停電してからおおよそ2時間後です。どうやら第4グループに当社が契約するネット回線の「中継局」があり、そこの非常用電源が落ちたことで不通になったようです。

「無計画停電エリア」の外部スタッフに固定電話で指示し、取引先からのメールは携帯からアクセスした「Gmail」で返信。ネットが不通になると、電気が通じていても仕事にならないと知りました。

災害時でも使えるグループウェア

現代人にとって、電気が止まった日は「非日常」です。震災と同列には語れませんが、日頃からの「連絡手段」の確保がものをいう点においてはまったく同じです。前回、連絡手段の1つとして、BBSをグループウェアのように使ったと紹介しましたが、「本物の」グループウェアはもっと進化しています。

グループウェアでは、メールでコミュニケーションが取れるほか、プロジェクトの進捗状況を一目で確認でき、ネット上に置かれた会議室で議論を戦わせ、出退勤の管理に出張旅費の仮払い計算に対応しています。

例えば、掲示板を使えば、会社の人に自身の安否情報を知らせることができます。また、会社の状況など、掲示板に書き込むことで、一斉に社員に情報を伝えられます。さらに、会議室やファイル共有機能を活用することで、家にいながらにして業務を継続することも可能です。次回は、今回の震災時にグループウェアによって社内コミュニケーションを図った企業を紹介します。

被災地以外の計画停電対象外の住民は「電気が止まる日」にリアリティを感じません。しかし、それはすぐそこにある危機です。電気は必ず流れているものではないと1日2回の停電で知りました。