現在、日本国内におけるデータンセンター事業者は約170社であり、これらの事業者は提供主体によってデータセンター専業、システムインテグレーター、地方、通信事業者の4つのカテゴリーに分類できる。事業者間の競争が激しくなる中で、各事業者は他社との差別化を図っている。前回はデータセンター専業、システムインテグレーターについて説明したが、今回は地方、通信事業者について、その特徴を紹介する。

地方データセンター系

日本国内のデータセンターは、大半が都市部に存在しているが、首都圏以外の地方データセンターの存在感も大きくなっている。寒冷地域のデータセンターがその気候を利用して効率的な冷却システムを構築するなど、地方の特色を活かした工夫が施されている。これらのデータセンターは、地方自治体の積極的な誘致により、首都圏で展開している事業者が地方進出しているケースもあれば、電力会社など地域の企業が新規事業として展開している場合もある。

地域の企業が利用するのはもちろんだが、首都圏の企業が災害対策として利用するケースも多く、過去の震災の経験から、データを遠隔地に保管したり、バックアップのシステムを用意したりする必要性を認識している。以前からリモートで運用監視することは難しいことではなかったが、仮想化、自動化の技術により、遠隔地でシステムを管理することに伴う不都合は解消されてきている。

地方のデータセンターは、首都圏と比べて利用費の抑制が期待できることが1つのメリットである。また、電力会社やガス会社などのインフラ事業者が提供している場合、電力供給の安心感も大きい。ただ、競争の激しい首都圏のデータセンターと比べて、サービスメニューや柔軟性がやや劣ると感じる利用者も多い。依頼できる作業に制限がある場合、現地に行かなくてはならないといったこともあり得る。

通信事業者系

ほとんどの通信事業者がデータセンターサービスを展開しており、その歴史は長く、インターネットが企業活動に使われ始めたころまで遡る。現在もインターネットへの接続はデータセンター利用における主要要件であるが、特にインターネット黎明期には、インターネットへ接続し、メールサーバやウェブサーバを設置する場所としてデータセンターが利用されていた。

通信事業者は、従来から堅牢なファシリティ(通信設備の局舎)で止められないシステム(通信設備)を24時間体制で運用管理していたため、同じことが要求されるデータセンターの運用も無理なく実施できたのである。このカテゴリーの事業者には、ネットワークサービスも含めたソリューション展開やサービスの充実といった特徴がある。

システムインテグレーターとは異なり、アプリケーションを含めた運用は期待できないが、インフラ部分のみを一元的にアウトソースしたい場合には最適である。ただ、通信業であるがゆえに、利用できる通信サービスがその事業者のサービスに限定されていることが多い。つまりキャリアニュートラルではないのだ。使用している通信サービスが利用できないこともあるため注意が必要である。しかし例外もあり、Coltテクノロジーサービスでは必ずしも自社のネットワークサービスを使わなくてもよいとしており、キャリアの制限から解放され、通信事業者系の強みを活用できるという。

データセンターは提供主体により、おおよそ4つのカテゴリーに分類できる。Coltはデータセンター専業系・通信事業者系の両方の強みを持つ

まとめ

以上、2回にわたりデータセンターの提供主体によって分類した4つのカテゴリーごとに特徴を紹介してきた。このように各カテゴリーの傾向を把握することで、数多くの事業者の中から自社に最適なデータセンターを選択する際の参考となるだろう。選定にあたって最も重要なのは、利用する際の目的と、そこから導かれる各種要件の優先順位だ。これらを明確にしたうえで、各社の特徴を比較し、後悔しないデータセンターを選択できるだろう。

Coltテクノロジーサービス株式会社
ヨーロッパ全域で事業展開するColtグループのAPACにおけるビジネスユニット。旧称 KVH株式会社。自社構築のインフラを世界28カ国48エリアで所有の上、超低遅延・完全冗長化ネットワークをグローバルに展開し、法人向けネットワーク、音声、データセンターサービスを提供している。