ITマネージャーが通信事業者を選定する場合、海外の動向を気にするのはもはや、当たり前だ。海外動向を押さえて、より良い通信事業者の選択につなげたいものだ。今回は通信事業者が海外において、どのような動きを見せているのかを紹介する。5つのポイントに絞って掲載するので、参考にしてほしい。

1. 高い信頼性

日本と比較して必ずしも海外の品質レベルは高くない。だが、品質の向上は常に求められており、今後は国や地域によらず一貫した品質をより高いレベルで総合的に提供できる事業者が望まれている。特に各国都市部で事業展開されている金融業界で要求されることは、回線ダウンを絶対に許容しない、いわゆる冗長構成だ。

回線の断裂は金融業界にとって命取りであり、圧倒的な低故障率も必須要件である。金融ほどの高い信頼性を求められなくとも、ネットワークの堅牢さや故障率の低さを求める業界は多い。それらの要求にいかにして応えられるかが重要となってくるだろう。

ネットワーク構成を含め通信事業者が故障発生に備え、どのような対応能力を有し高い信頼性を保つかについては、グローバルに展開する企業のITマネージャーにとって要チェックポイントといえる。

また、ローカルの人員を抱えていることも大きな要素だろう。現地国のスタッフとノウハウを持つことで、通信状況の把握などが容易に行えるというメリットがある。国内のみならず海外現地国においてもエキスパートレベルのスタッフを揃えていることが大事だ。

グローバルなネットワークの提供が可能な事業者の例(Coltテクノロジーサービス)

2. 企業のグローバル展開に応えられるネットワーク基盤

工場などは、地方に展開しているケースが多いため、地方と都市部との連携が必要となる。しかし、企業がビジネスをグローバル展開する際に多く求められるのは、グローバル市場へのビジネス拡大を叶えるグローバル都市へのネットワーク接続ではないだろうか。

企業のグローバル展開ニーズに合わせ、進出したいと思った都市にネットワーク基盤が構築されており、企業の既存拠点とネットワークの接続が可能であることはとても重要だ。グローバル展開を見越すのであれば、展開の可能性のある各都市にすでにネットワーク基盤が構築されていることが望ましいだろう。

そして、各都市ごとに自前の設備を持っていることも重要だ。他国とのパートナーとの連携に頼っているのか、それとも自社でフルコントロール配下にある設備を持っているのかでは、どちらがグローバルな需要に応えられるかは明白だ。やはり、自前のアセットは大切だ。

3. 都市ごとのローカル対応能力とクオリティの高さ

例えば、アジア諸国と日本では回線のクオリティが異なるのは実感としてわかるだろうが、企業のネットワークとしては進出する国のクオリティのコントロールが可能であることが求められる。これには国ごとに独自のノウハウと経験が求められるため、例えば都市ごとに専門知識豊富なチームがグローバル品質との整合性を図れると良い。

進出する国へのネットワーク接続の際には、回線敷設、運用、故障復旧とレポート対応のすべてにおいて、海外ローカル回線を含むエンド・ツー・エンドで通信事業者1社で一元的にコントロールが可能であれば、クオリティの差は歴然だろう。ここでも、それぞれの都市ごとに自前の設備を備えていることは、グローバル対応にとっても重要ではないだろうか。

ネットワーク所有区間は提供事業者によってそれぞれ異なり、対応能力の高さやクオリティは各区間の所有形体に依存する

4. 仮想化への対応

SDN(Software-Defined Network:ソフトウェア定義型ネットワーク)は、ソフトウェア技術により動的なネットワークの仮想化を実現しようという考え方だ。SDNに対応していると、物理マシンと仮想ネットワークを意識する必要がなくなる。

仮想ネットワークを作ったり、削除したり、物理マシン上の変更をソフトウェア上で展開できるなどの特徴があり、例えば企業ユーザがポータルサイトからA拠点とB拠点をGUIで表現されたディスプレイ上のクリックによって接続することが可能となるのだ。

また、ネットワーク設定やサービス品質のコントロールをはじめ、これまで通信事業者やデータセンター事業者に閉じられていた領域が企業ユーザに開放されることにより、ビジネスの状況に応じたネットワーク活用などでメリットが得られる。

クラウドは従量課金だが、肝心のそれを支えるインフラ、ネットワークは年間契約、月額課金がほとんどだ。クラウド時代に向けて、ネットワークも従量制に近い形に対応していく必要がある。

5. グロバールなマネジメント力とマルチリンガルサポート

高い信頼性、グローバル展開に応えるネットワーク基盤、ローカル拠点での対応能力とクオリティコントロールなどとくれば、最後はそれらを統括する総合的かつグローバルなマネジメント力が必要だ。総合力として、さまざまなロケーションで起きている事象を総合的に分析し、サービス提供における要点解析を1社でマネジメントできることも必要とされる。

また、グローバルにマネジメントを行うにはマルチリンガルサポートも重要だ。各都市ごとのローカルスタッフにより、現地の言葉でサポート対応できることも非常に重要となってくるだろう。

そして、そのクオリティをトータルで管理できることが大切だ。さらに、現地国でのパートナーとの信頼関係も非常に重要だ。現地に最適化したネットワークを持つことが最も大切なことだからだ。現地のサーバベンダー、現地のプロバイダー、データセンターなど、さまざまな事業者との連携の実績や、信頼関係を構築していることも、必須だろう。

まとめ

企業のグローバル展開に際しては、さまざまなポイントを考慮する必要がある。本稿に挙げた5点は、その中でも最重要ポイントに該当することだが、自社のグローバル展開を支援できるノウハウと実績を有するパートナー事業者の選定に役立ててほしい。

Coltテクノロジーサービス 執行役員 プロダクトマネジメント本部プロダクトマネジメント部の星野真人氏は「われわれは、ミリ秒レベルの超低遅延ネットワークの提供が可能なため、グローバルに展開する金融機関などのスピードと正確性が強く求められる業界で採用されてきたという実績があります。また、現在は28カ国48主要都市でネットワークを構築、所有、運営し、ヨーロッパとアジアの200以上の都市に接続しており、今後はさらにネットワーク展開を充実させていきたいと考えています。さらに、インカントリーのノウハウも十分にあり、各都市の正社員による総合マネジメントを目指していきます。われわれの得意分野は広帯域のネットワークですが、市場がクラウドの時代を迎え、IoTやビッグデータなどのキーワードが登場するにつれて、より広帯域ネットワークの需要は高まると考えています」と述べている。

Coltテクノロジーサービス株式会社
ヨーロッパ全域で事業展開するColtグループのAPACにおけるビジネスユニット。旧称 KVH株式会社。自社構築のインフラを世界28カ国48エリアで所有の上、超低遅延・完全冗長化ネットワークをグローバルに展開し、法人向けネットワーク、音声、データセンターサービスを提供している。