クラウドインフラの自動化を実現するソフトウェアとは

企業はクラウドの利用により業務を効率化できている一方で、クラウドの無駄がコストを増大させています。その背景には、クラウドは容易に利用を開始できるけれども、そのためのルールが徹底されておらず、利用状況も可視化されていないことがあり、結果として、クラウドの無駄を減らすことができていません。

前回に説明した「クラウドの無駄を減らせない3つの要因」は、いずれもクラウドプロビジョニングに対するガバナンスが不十分であることに起因していると考えられます。これに対処するには、より包括的で、企業全体のレベルでクラウドコストを監視および制御するためのソリューションが必要です。

クラウドの無駄を減らすには、クラウドの利用における体系的な管理が必要です。この管理は非常に難しいですが、それを手動で実行しようとする企業もあれば、専用のクラウドインフラストラクチャ自動化ソフトウェアを用いてクラウドのプロビジョニング、コンプライアンス、および管理を自動化することを検討している企業もあります。

クラウド利用の管理は、各従業員の水道の蛇口を把握するようなものです。一人で複数の蛇口を持つ従業員もいれば、不要なのに開きっぱなしの蛇口もあります。このような状況を把握するのが、クラウドインフラストラクチャの自動化ソリューションで、次の3つの主要コンポーネントで構成されます。

(1)コードとしてのコラボレーションインフラストラクチャ

これは、リソースを定義し、それらのリソースの作成を自動化し、コードを再利用可能なコンポーネント(モジュール)として標準化および承認するための一貫したアプローチを提供するもので、プロビジョニングの把握を実現します。

(2)マルチクラウド管理

多くの企業は、部署や目的に合わせて複数のクラウドサービスを使い分けています。この現状に対応するため、「マルチクラウド管理」では、複数のプロバイダーにわたるリソースのプロビジョニング、ガバナンス、コンプライアンス、および運用に一貫性を持たせるとともに、一括管理を可能にします。

(3)セルフサービスを実現するインフラストラクチャ

このコンポーネントにより、エンドユーザーが、全社を管理するIT部門によって設定されたガードレール内で必要なインフラストラクチャをプロビジョニングし、何千人もの従業員によるプロビジョニングを把握し、クラウドインフラの正確な利用状況を記録・維持することを可能にします。

自動化ソフトウェアの最大の利点は、クラウドインフラにおけるプロビジョニングを標準化、簡素化することに加え、チームメンバーが手動で行うリマインダーやタスクをスケジュールすることなく、未使用またはアイドル状態のリソースを自動的にプロビジョニング解除できることです。

クラウドインフラ自動化ソフトウェアを選ぶ4つのポイント

ITインフラストラクチャの自動化は、収益性と競争力に大きな影響を与える“クラウドの無駄”を抑えるための重要な要素です。インフラストラクチャのセルフサービスツールと自動化ツールは複数ありますが、すべてが同じではありません。ツールの選定にあたっては、自社のコスト最適化のための戦略をサポートできるかどうかが重要です。その際のポイントとなるのは、以下の4点です。これらの機能を提供するソフトウェアを選択するべきでしょう。

(1)コードとして再利用可能なインフラストラクチャ

クラウド運用において、インフラストラクチャをコードとして構築・運用管理し、事前に検証および承認されたテンプレートを作成・公開する方法を提供する機能。これにより、コストを重視したクラウドインフラ管理を始めることができます。

(2)マルチクラウド

マルチクラウドのサポートとあらゆるクラウドやインフラストラクチャに適用できるコスト管理のアプローチを提供する機能。これにより、複数の異なるクラウドサービスを利用していても、一括管理を実現します。

(3)ガードレール施行の自動化

予算と目標に合わせた運用の一貫性を実現するために、環境全体でプロビジョニングガードレールの実施を自動化する機能。これにより、安易なプロビジョニングを抑制し、予算の範囲内に収めることが可能になります。

(4)可視性と追跡

インフラの状況をリアルタイムで一元的に可視化して、監査をログに記録し、未使用または孤立したプロビジョニングやインスタンスをクリーンアップする機能。

クラウドのコスト最適化で新規ビジネスの立ち上げ加速を

リソースを自由に追加して手軽にシステムを構築できるクラウドサービスは、業務の効率化やビジネス革新を実現できる効果的なツールです。しかし同時に無駄なコストを生んでしまう可能性があるため、先進的なビジネスリーダーやITリーダーはインフラストラクチャ自動化ソフトウェアを採用しています。

これは、クラウド支出を効果的に管理および制御することに苦労しているためであり、過剰なクラウドコストを抑えることが、自社のクラウド導入の道のりと継続的なデジタル変革の取り組みにおいて不可欠なステップであることを認識しているからです。

インフラストラクチャ自動化ソフトウェアは、組織がクラウドの活用を加速すると同時に、不要な支出や一貫性のないプロビジョニングを排除し、運用コストを大幅に削減して効率を向上させることに役立ちます。

このテクノロジーは、コストを予算内に収めることで、クラウド利用の最適化に必要な余裕と選択肢を増やし、ビジネスに価値をもたらす新規プロジェクトの立ち上げを加速させ、長期的かつ持続的な成長と収益性の向上に貢献するのです。

著者プロフィール

花尾 和成(はなお かずなり)

HashiCorp日本法人 カントリーマネージャー 約19年にわたり、日本企業の顧客インフラの近代化、経営管理/データ分析やクラウド技術の活用や、それらを利用したDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に尽力。日本ヒューレット・パッカード(現Hewlett Packard Enterprise)でキャリアをスタートさせ、日本オラクルを経て、Pivotalジャパンのカントリーマネージャーとして、アジャイル開発やクラウドネイティブなインフラを活用した企業のDXをリード。直近は、VMware日本法人でTANZU事業の拡大を主導。2020年12月より、HashiCorp日本法人であるHashiCorp Japanにてカントリーマネージャーを務める。