「自前」で作るなら読んでおきたい帳票開発入門(6) PDFと帳票の関係を理解する

PDFと電子文書

電子文書ですぐに思い浮かぶのがPDFだと思います。それぐらいPDFは電子文書のデファクトスタンダードになっています。

普及の理由はいくつか挙げられます。1つは、PDFの閲覧ソフトであるAdobe Reader(以前はAcrobat Reader)がアドビシステムズ社から無償配布されていて、かなりの確率で普及していることが挙げられます。Adobe ReaderにはPDFを生成する機能はありませんが、PDFを表示したり、PCに接続された各種プリンタに出力したりすることができます。

もう1つは、ワープロ文書と異なり、PDFは改ざんされにくいというメリットがあります。PDFの保存形式の1つであるPDF/Aが、国際標準化機構(ISO)が制定している国際基準となっていることが、その信頼性を証明しています。

WebシステムにおけるPDFの重要性

Webシステムにおいて、PDFは電子文書というよりも、帳票出力のファイルフォーマットとして使われるのが一般的です。企業内のWebシステムであれば、クライアントのOSがWindowsであることがほとんどですが、インターネットで公開される、不特定多数のエンドユーザーをターゲットとしたコンシューマー向けのシステムの場合は、クライアントの環境としてMac OSも含めて考える必要があります。

Webシステムでは、サーバ側でプログラムが動くため、環境を特定できないクライアント側から帳票を出力させるのは面倒なことです。Webブラウザで表示された画面をそのまま印刷することも考えられますが、環境の違いから、統一された印刷結果を得ることが困難です。

その点PDFなら、クライアント側のOSとAdobe Readerに、エンドユーザーが出力に使用するプリンタの違いを解決する部分を任せることができます。PDFや紙のレイアウトが維持されるので、どのクライアント環境であっても同じ品質で出力できるわけです。

PDFの仕様は公開されているので、ゼロからPDF出力するシステムを開発することもできます。フリー(オープンソース)のPDF出力ライブラリも数多くあるので、既存システムの帳票出力のPDF出力に利用したり、自前のPDF出力ツールを用意したりするといった応用も可能です。

前述した帳票開発ツールについても、ほとんどの製品がPDF出力機能を持っているので、帳票のレイアウトデザインから一貫してPDF生成を行うことが可能です。