帳票開発ツールは、数多くの製品が販売されていますが、実際にツールを利用するとなった場合、数が多すぎてどれを選択したらいいかわからなくなります。一番の要素はコストでしょうが、それ以外について、選択の際にキーワードとなるポイントを見ていきましょう。
帳票開発ツールの構成
ほとんどの帳票開発ツールは、設計部分と実行部分に分けられます(図1)。
設計部分は、データを用紙上にどのようにレイアウトするかといったレイアウト設計(フォームデザイン)、出力するデータの取得、フォームに対してデータをどのようにマッピングするかという3つのフェーズに分けることができます(図2)。
実行部分は、設計部分で作成した帳票定義ファイルに、アプリケーションからの条件によって抽出した実際のデータをマッピングし、帳票として出力するエンジン部分のことです。
実行部分の多くはサーバ側で動作
Webシステム全盛の現在、ほとんどのツールの実行部分はサーバ側で動作します。特にJavaで動作するものが増えてきているので、OSに関してはWindowsでもUNIX、Linuxでも問題ありません。
ただ、開発環境のAPIや開発言語が何になるのかは重要なポイントとなります。この辺りの情報は、ツールのサンプルコードが参考になります。これらはベンダーのWebサイトや、評価版のオンラインヘルプなどで見ることができます。
レイアウトデザインの容易さと正確さ
ほとんどの帳票ツールには、レイアウトデザインを行うための設計ツールが用意されています。グラフィックツールのように、ドラッグで罫線や図形を描画したり、テキストの配置位置を定義できたりするGUIのフォームデザインツールは、レイアウトの効率化やスピードアップに不可欠です。またツールがあれば、デザイン感覚に優れている人(場合によっては外部のデザイナ)との分業を行うことも可能になります。
既に出力する紙のフォームがある場合、それらをスキャンして読み込み、下絵として利用する機能を持つツールもあります。
なお、レイアウトの精度や、望んだレイアウトをきちんと実現できるかどうかは帳票ツールによって当然差があります。この点については、ツールのカタログやWeb情報などを参考にするだけではなく、評価版をダウンロードして実際に試用してみるべきでしょう。
グラフやチャート、バーコードの描画
多くの帳票開発ツールが、データソースから動的にグラフを作成する機能を持っています。単なる表だけではなく、グラフやチャートなどのビジュアル要素を含んだ帳票で出力することができるのです。
開発ツールによって、描画できるグラフの種類や表現力は異なるので、どのようなグラフが作成できるのかも1つの目安になるでしょう。
バーコードの印刷についても、汎用的なバーコードであれば、ほとんどの帳票開発ツールが機能を備えているので、特殊なバーコードが求められる場合に、それを取り込めるのかといったことがポイントとなります。
データの取得方法
データベースからどのようにデータを取り出すのかも、帳票開発ツールの大きなポイントと言えるでしょう(図3)。
データ形式として主流となるのはCSV、XML、ODBC/JDBCやRDBベンダー提供のネイティブDBドライバ経由によるデータベース接続で、ほとんどのツールがこれらのデータとやりとりできるようになっています。
また、帳票開発ツールの実行環境に対して、データソースをアプリケーション側が用意するのか、それともツール側で取得できるのかも大事なポイントです。ツール側にAccessのクエリーのようなSQLを生成できるツールがあれば、アプリケーション側で帳票開発ツールに渡すためのデータ作成工数を削減できるからです。
ホスト系のレガシーシステムのデータを使う場合は、どうしてもCSVなどのテキストデータがデータソースになってしまいます。ツールによっては、これらのテキストデータを実行環境にうまく引き渡す仕組みを持っているものがあるので、これもツール選択の際のポイントとなります。
『出典:システム開発ジャーナル Vol.5(2008年7月発刊)』
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。