企画や原稿、リリースなどを作成したら、当然、自分で校正や推敲を行います。しかし、なかなか自分が作った成果物のダメな点に気が付くことはできません。これは自分で作ったものは実際よりよく感じてしまう心理によるもので、IKEA効果とも言われます。→過去の「柳谷智宣のChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」の回はこちらを参照。

できれば第三者に見てもらいたいところですが、そんな能力があり、時間に余裕があり、面倒を見てくれる人が近くにいることの方が珍しいでしょう。また、人にダメ出しされると、反論したくなってしまうかもしれません。

そこで、オススメなのがChatGPTにダメ出しをしてもらうことです。AI相手なら腹も立ちません。成果物を一度チェックしてもらい、ブラッシュアップに役立てましょう。

さまざまなペルソナに分析・ダメ出しをしてもらう

まずは、ChatGPTに成果物を見せて、ダメ出しをしてもらいましょう。今回は、記事のタイトルをブラッシュアップしてみましょう。まずは、直球で「効率的な働き方の秘訣!ビジネスパーソン向け10の方法」というタイトルのダメ出しをしてもらいます。

  • プロンプト

    「効率的な働き方の秘訣!ビジネスパーソン向け10の方法」という記事タイトルを分析し、ダメ出しをしてください

  • 出力

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第8回

    まずは直球のダメ出しをしてもらう

言葉の区切りごとにがっつりとダメ出しされました。よく読むとブラッシュアップのヒントが混じっているのですが、何をどうしていいのかわかりにくいのがネックです。

そんな時は、例えばChatGPTに編集者としてチェックしてもらうようにするといい返答がもらえます。また、ダメ出しの理由と改善点があるとブラッシュアップしやすくなります。

どうせなら、複数の役割で一気にダメ出しをしてもらうプロンプトを作ってみましょう。複雑な構成にする場合は、###出力フォーマットを指定すると、ChatGPTが迷わず回答できるようになります。今回は、編集者に加えて、マーケター、読者の視点からもダメ出しをしてもらいました。

  • プロンプト

    ビジネスパーソン向けに仕事の効率をアップする記事を書きます。そのタイトルについて、分析し、厳しくダメ出ししてください。ダメ出しには理由や改善案があるとうれしいです。
    ###タイトル
    効率的な働き方の秘訣!ビジネスパーソン向け10の方法
    ###出力フォーマット
    1:編集者
    ここにプロ編集者の視点で分析したダメ出しを書いてください。
    2:マーケター
    ここに凄腕マーケターの視点で分析したダメ出しを書いてください。
    3:読者
    ここに一般読者の視点で分析したダメ出しを書いてください。30歳の

  • 出力

    1:編集者
    タイトルの「効率的な働き方の秘訣!ビジネスパーソン向け10の方法」は、確かにビジネスパーソン向けの内容を提供する意図は感じられますが、いくつかの改善点があります。
    まず、タイトルが少し長すぎるかもしれません。読者がタイトルを一目で捉えることが難しく、インパクトが薄れてしまう可能性があります。シンプルで覚えやすい言葉を選ぶことで、読者の興味を引きつけやすくなるでしょう。
    また、「10の方法」という表現は一般的であり、他の記事でもよく見かけるフレーズです。オリジナリティを出すために、より具体的で魅力的なキーワードを検討してみると良いでしょう。
    改善案:
    「効率アップのプロヒント!ビジネスパーソン必読の仕事術」
    2:マーケター
    提案されたタイトルは、ビジネスパーソンにとって興味深いテーマを反映していますが、マーケティングの視点からは以下の点に改善の余地があります。
    まず、タイトルの冒頭に「効率的な働き方の秘訣!」という表現がありますが、これがあまりにも一般的で目新しさに欠ける可能性があります。読者が既に聞き慣れた内容だと思うかもしれません。差別化を図るために、より特定のアプローチやキーワードを取り入れることを考えてみましょう。
    また、「ビジネスパーソン向け10の方法」という部分も、具体的な内容が伝わりにくくなっています。読者は具体的に何が学べるのかを知りたいと思うでしょう。数字を使うことは良いアイデアですが、それだけでなく、どのような方法や戦略が紹介されるのか、もっと具体的に表現することが大切です。
    改善案:
    「超効果的!ビジネスパーソンのための5つのタイムマスタリング術」
    3:読者
    このタイトルについて、一般読者の視点から見てみましょう。
    「効率的な働き方の秘訣!ビジネスパーソン向け10の方法」というタイトルは、仕事の効率向上に関心を持つビジネスパーソンにとっては魅力的です。ただし、少しフォーマルな印象を受けるかもしれません。読者は、自分にも取り組みやすい方法やアイデアが提供されているかどうかを重要視する傾向があります。
    また、「10の方法」という部分は、多くの情報を提供していると感じさせますが、一方で具体的な内容が把握しづらいかもしれません。タイトルだけでは、どのようなアドバイスが含まれているのかが十分に伝わらないかもしれません。
    読者は、具体的なケーススタディや成功事例、実際のアクションプランなどを期待することが多いです。タイトルにそれらの要素を取り入れることで、読者の興味を更に引きつけることができるでしょう。
    改善案:
    「仕事のストレスを半減!ビジネスパーソンによる実践効果の高い3つの効率化術」

  • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第8回

    編集者、マーケター、読者の視点からダメ出しをしてもらった

それぞれの分析にはやや突っ込みどころはありますが、指示された役割を演じているのがわかります。改善案のレベルも高く、筆者では「効率アップのプロヒント!」といったフレーズは絶対に出すことができません。別に、ChatGPTの指示に従う必要はありません。それぞれのアドバイスを元にブラッシュアップすればいいのです。

ちなみに、生成されたタイトルをChatGPTにダメ出しさせれば、また異なるダメ出しをしてきます。ChatGPTにはタイトルの完成版を出力させようとするのではなく、完成版を作るためのヒントや候補を教えてもらうように使うとよいでしょう。

また、複数の候補がある場合、対象のペルソナを逆引きすることで、選定の参考になることもあります。例えば、10個の記事タイトル候補を入力し、それぞれのペルソナを出力させるのです。読んで欲しい読者のペルソナが表示されているタイトルが有力候補となるでしょう。

  • プロンプト&出力
    • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第8回

      10個の記事タイトル候補を入力し、それぞれのペルソナを出力させる

ChatGPTに足りない要素を洗い出してもらう

成果物をChatGPTに添削してもらい、不足部分を教えてもらうことでブラッシュアップすることもできます。この場合、途中まで自分で作っているので、最初からChatGPTに作らせるよりもクオリティが上がる可能性が高くなります。

処理内容と成果物を分けて書くことで、ChatGPTに出してもらった要素を追加して、複数回ブラッシュアップできます。複数タスクを処理するコツという記事に入れる内容を考えてみましょう。まずは、3つ考えて入力してみます。

  • プロンプト

    「膨大なタスクをパラレルに処理するコツ」という記事を書こうと考えています。構成案に追加すべき、足りない内容を教えてください。
    ###構成案
    PCのディスプレイは可能な限り大きくする
    なるべく高性能なPCを使う
    紙資料はスキャンして電子化する

  • 出力

    • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第8回

      ChatGPTに出してもらった要素を追加して、複数回ブラッシュアップできる

関係性の低い内容もあるのですが、それでも「タスクの優先順位を考える」「タスクの自動化とバッチ処理」「タイムマネジメント技術の活用」「インプットとアウトプットのバランスを取る」「メンタルと体調を整える」といった項目が得られました。

プロンプトにこれらを追加し、再出力させることを繰り返すことで、どんどんブラッシュアップされます。一度、人間が取捨選択することで、効率的に完成度を高められるのです。

ちなみに、取捨選択したネタを追加し、再度プロンプトを入れたところ、以下の出力が出ました。

  • 出力

    タスクの分類とグループ化
    タスク管理ツールの活用
    コミュニケーションと協力
    タスクの優先度の見直し
    フロー状態の促進
    短い休憩の取り入れ
    ストレスの管理とリラックス法
    タスクの分割と並列処理

タスクの優先度はプロンプトに含まれていますし、タスクのグループ化は先ほどスルーした項目です。とは言え「ツールの活用」や「フロー状態の促進」など追加するべきネタも出てきました。

さらに、取捨選択と再出力を繰り返し、まともな候補が提示されなくなれば終了です。自分で悩んでいると時間が吹き飛びますが、ChatGPTであれば秒で出てくるので、どんどん活用しましょう。

記者の質問をChatGPTに考えてもらいプレスリリースをブラッシュアップする

プレスリリースや発表会の台本、プレゼン資料などをChatGPTに読み込ませ、それを見た記者がどんな質問をしてくるのか、予測してもらいましょう。その情報をあらかじめ盛り込んでおけば、クオリティが上がりますし、質問対応の手間も減らせます。

  • プロンプト

    以下のリリースを読み、記者が質問してくる内容を10個予測してください。 #リリースタイトル
    飲み進むほどお得!日本初の漸減式料金、Stairs BARがグランドオープン!
    #本文
    株式会社ハイテンションと株式会社トゥールビヨンは、新しいコンセプト、「Stairs BAR(ステアーズバー)」を2023年10月1日にオープンします。
    【概要】
    Stairs BARは、日本初となる漸減式料金を導入した、お酒を手頃な価格で楽しむことができるバーです。この新しいスタイルは、お客様にお得感を提供しながらも、飲食店側の収益確保を実現する画期的なアイデアです。
    ・店内の写真
    【スライド(漸減式)方式について】
    Stairs BARは、世界初のスライド方式を導入しています。この方式では、お酒の注文数に応じて割引率が上昇していきます。具体的なスライド方式は以下の通りです。
    1杯目:通常価格
    2杯目:1割引き
    3杯目:2割引き
    4杯目:3割引き
    5杯目:4割引き
    6杯目以降:5割引き

  • 出力

    Q: 漸減式料金という斬新なアイデアですが、なぜこのようなコンセプトを選んだのですか?
    Q: スライド方式による割引がお客様にとって魅力的ですが、そのアイデアの元となる背景は何ですか?
    Q: スライド方式を採用することで、飲食店側の収益確保が難しくなる可能性はありませんか?
    Q: お得な価格設定が多くのお客様を引き寄せることが期待されますが、競合との差別化ポイントは何ですか?
    Q: この新しいコンセプトがどのようなお客様に向けて提供される予定ですか?ターゲット層は?

ありえそうな質問リストが得られました。営業時間や将来の価格調整の可能性など、実際には考えにくい項目もありましたが、概ね参考になります。

どんな理由・背景でこのコンセプトを考えたのか、どんなビジネスモデルなのか、想定ターゲット層などは確かにリリースに入れておくべきでしょう。これらの内容をリリースに追加し、もう一度質問案を出してもらいました。

  • プロンプト
    • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第8回

      そのほかの要素もリリースに追加

収益減少は客数でカバーしているのにそのことを聞いてきたり、これからオープンするリリースなのに客の反応を質問してくるなど、ちょっとトンチンカンな質問が増えました。ということは、現実的な想定質問に対する情報は網羅できた、と考えてよいでしょう。

  • 出力
    • 柳谷智宣の「ChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」 第8回

      現実的な想定質問に対する情報は網羅できた

以上が、ChatGPTにダメ出しをしてもらってブラッシュアップするテクニックとなります。自分の成果物に対して微に入り細に入りチェックし、重箱の隅をつついて指摘してくれる、というのは大きな学びになります。

年を取るとそのように面倒を見てもらう人がいなくなり、考え方が硬直しがちです。ChatGPTにダメ出ししてもらうことで、成果物のブラッシュアップと同時に凝り固まった頭をほぐしておきましょう。