CEATEC JAPAN 2018にてタイコ エレクトロニクス ジャパン(TE Connectivity)は、これまでの出展スタイルを大きく変更。自社のコネクタやセンサの紹介と並行して、スタートアップベンチャーなどとの協業の成果を多数披露する展示を行っている。

これまでのCEATEC JAPANにおける同社ブースは、来場者が参加できるアトラクション的なものをブースの中心に据え注目を集める展示内容が基本路線となっていた(参考記事:「CEATEC 2016 - VRハンググライダーで大空を翔る体験ができるTE」)。しかし、今回、ステージ上に同社のコネクタなどを活用したVRを体験できるデモはあるものの、かつてのような、体感型のアトラクションといったものは置かれていない(一応、VRデモでは、最後に、同社のコネクタを挿す、といった作業を行なうこととなっているとのこと)。

同社ブースに居た櫛引健雄 マーケティング部長によると、「今回のテーマは"Engineering For Tomrrow ~次世代のイノベーションをサポート~"。次世代のイノベーションにはスタートアップの支援も含まれている。これまでTEは、部品メーカーとして、採用事例などを出したくても出せない状態が続いていたが、今回、複数のスタートアップ企業との協業の成果を出せることとなり、それを全面に押し出すことを決めたため」と、方針の転換理由を説明してくれた。

水に浮くEV

そうしたスタートアップの協業の中でも、ブースの前面に配置され、もっとも眼を惹くのが、日本のEVベンチャー「FOMM」がタイで販売を予定しているEV「FOMM ONE」。同社は2017年6月で解散したインホイールモーターベースの自動車開発企業SIM-Driveの系譜を受け継ぐ一社で、FOMM ONEは、軽自動車よりも小型なサイズながら、インホイールモーターを採用することで、4人乗りに十分な室内空間を実現。この充電インレット(プラグ/コネクタ)を同社は当初、IEC 62196-2 Type 1を選択して開発していたが、開発途中でタイではIEC 62196-2 Type 2に決まったことから、急遽の変更を余儀なくされた。その際、CEATEC JAPAN 2016にてTEの展示にてType 2のインレットが実績有りの製品として展示されていたことを見て、共同開発をスタート。2019年2月の発売にこぎつけたという。

  • FOMM ONEの実車
  • FOMM ONEの実車
  • FOMM ONEの実車
  • FOMM ONEの実車
  • FOMM ONEの実車
  • FOMM ONEの実車
  • FOMM ONEの実車
  • FOMM ONEの実車
  • FOMM ONEの実車と、EVなどに向けて提供されているTEのインレットおよびコネクタ類

FOMM ONEの最大の特徴はシャシーの上に樹脂を一体成型したボートが搭載されており、それで水に浮いて、その状態で前輪を回転させると、ホイールで水を掻き進むことができるというもの。FOMMの代表取締役 CEOの鶴巻日出夫氏によると、「あくまでエマージェンシー。保証外の機能」とのことだが、浸水被害にあった際などでも自動車で移動する、といったことも可能になる。

また、もう1つの特徴はバッテリの交換が自分でできるという点で、劣化時などにおける交換なども従来のEVに比べては容易に行うことができるようになっているという。

現在、同社はFOMM 2.0/3.0(開発コード名)といった次世代車両の開発も手がけているという。また、気になるのは、日本での活動というところだが、FOMM ONEそのままだと、自動車のカテゴリとして、軽自動車とミニカーの中間ということで、そのままでは販売できないとのこと。そのため、同社でも別途、日本向けのEVの開発も進めているとしており、まずはタイでの販売実績(すでに550台の受注を獲得しているという)を伸ばし、そうした成果をもとに、日本での展開を図っていきたいとしている。

温度が分かるフライパン

FOMMのほかにも、同社が協力して開発した製品が複数紹介されている。例えば、TEの温度センサを採用することで、温度を取っ手上に取り付けられた液晶に表示することで、フライパンがどれくらい熱されているかを知ることができるVitaCraftの「フライパン:TEMP PAN」の実機や、大学初ベンチャーのTersaが手がける壁掛け衣類スチーマー「Tersa Steam」のモックなどを見ることができる。

  • Tersa Steamのモック

    Tersa Steamのモック。実物は、ボタンを押すと10分でスチームで衣類の汚れを落としてくれるという優れもの機能を実現。TEの温度センサと湿度センサが採用されているという

ちなみにTEMP PAN、非接触の温度計で代替可能、という気もするが、次世代モデルでは、IH調理器側と連動し、調理の段階ごとに自動的に最適な温度に調整してくれる機能が搭載される予定だという。

  • TEMP PANの実物

    TENP PANの実物。取っ手は取れないが、先端にある液晶画面に、現在のフライパンの温度が表示される。TEの温度センサが採用されているとのこと

また、実機デモとしては、最大深度100mまで降下が可能なCHASING INNOVATIONの水中ドローン「GLADIUS(グラディウス)」が、実際に水槽の中で動いている様子を見ることができる。こちらには、TEの密閉防水型圧力センサが搭載されているとのことである。

  • 水中ドローン「グラディウス」のデモの様子
  • 水中ドローン「グラディウス」のデモの様子
  • 水中ドローン「グラディウス」のデモの様子。コントローラの左下に現在の水深が表示される

水中ドローン「グラディウス」のデモの様子

なお、同社は毎年、TEオリジナルハローキティを来場記念プレゼントとして配布しており、今年は地球を抱えたTEオリジナルI&D(Inclusion & Diversity)ハローキティとのことで、会場でTEのLINEアカウントをお友達追加した人にプレゼントされるものとなっている。