CDPを活用するための3STEP
CDPを活用するために必要なことは、次の3Stepで行う。
1.データ収集と結合
2.データ活用
3.パーソナライズ
まずはデータ収集と結合をどのようにしていくか解説する。
ビジネス課題の明確化とそれに合わせたデータを集めるマーケターの人が最終的に達成したいことは、売上を上げるということだと考える。そのためにWeb広告を出稿したり、メールマガジンを発行されたり、さまざまな施策を実施しているはずだ。ここでは、マーケターの立場ではなく、訪問者の立場になって少し考えてほしい。
例えば、あなたは車の購入を考えているとしよう。あなたは検索エンジンで「車 購入」と入力する。すると多種多様な広告が表示され、とあるメーカーのサイトをクリックする。約10分程度、何種類かの車を確認し、スポーツカーのカタログを請求する。この時、メールアドレスや氏名住所、年齢や家族構成などの個人情報を入力した。
数日後、カタログが自宅に届きカタログを見ていると、試乗の案内がメールで届く。あなたは週末に試乗予約を最寄りのディーラーにする。試乗のためディーラーに到着すると、あなたが試乗予定だったスポーツカーのほかに、カタログは請求していないファミリーカーも用意されていた。あなたはファミリーカーも購入候補と考えており、ディーラーの気遣いに感動するのであった。
と、少々大げさな例をあげたが、マーケターの立場に戻り、それぞれの行動がCDPではどのように記録され、活用されるかを説明する。
ステップ | お客様の行動 | CDPに蓄積されるデータおよび分析 |
---|---|---|
1 | 検索エンジンで「車 購入」と入力してページにたどり着いた | 購入希望者にセグメント化 |
2 | 約10分、数種類の車を確認した | ・スポーツカーが最も興味がある。だが、ファミリーカーも気になると分析 ・ページを見るたびに履歴をもとにページをパーソナライズ |
3 | スポーツカーのカタログを請求した | ・匿名状態から訪問者の名前に特定 ・Webサイト履歴、年齢、家族構成からファミリーカーが必要な世代と分析 ・カタログ到着ごろに試乗予約を促すメールを発行 |
4 | 試乗予約をした | ・ディーラーが予約者の分析情報を確認 ・リクエストのあったスポーツカー以外にファミリーカーもレコメンド |
5 | 試乗に来た | ・ディーラーは試乗結果をCDPに入力 ・CDPが次のアクションをリコメンド |
このようにCDPでは、単純に検索エンジンで調べたことやWebで見たページだけでなく、個人情報と紐づけた強力な意思決定とパーソナライズが可能だ。まるで訪問者一人一人に優れたコンシェルジュがついているかのように錯覚さえしてしまうかもしれない。
今回は新規訪問者を例にあげたが、既に顧客として登録されている訪問者であれば、過去の応対履歴や車のメンテナンス履歴に応じてまた別の提案も可能となるだろう。
オンライン、オフライン問わずデータを集めることで、意思決定を行い、必要なタイミングで通知することが可能となる。
データ収集時の課題
肝心のデータ収集だが、システム面の課題よりも組織の課題が大きいことが多い。組織によっては、必要なデータが必要な時に取得できないこともあるだろう。例えば、顧客情報のデータを連携したいとなった場合、個人情報に当たるため申請書を印刷。押印。上長以上承認が必要で2週間かかり、なおかつ紙のデータを手入力しなければならない。
このようにプロセスが複雑化してしまう要因は、対象データの取り扱うにあたり、リスクと対処が明確になっていないからだ。個々のデータにリスクアセスメントを実施し、どのようなリスクがあるか?リスクは受容可能であるか?もしリスクが起こってしまった際の対処を明確にしておくことで、プロセスの省略が可能になることもあるはずだ。
また、CDP導入のようなプロジェクトは自部署だけではなく他の部署も巻き込むことが必要だ。データの提供を他部署に依頼する場合、他部署からしてみれば、また面倒ごとが増えたと思われがちだ。これは他部署にはプロジェクトの当事者意識が薄く、CDP導入のメリットが見いだせていないからだ。
他部署に対しても、CDP導入のメリットを提供し、彼らのKPIにも役立つようであれば喜んで協力してくれるはずだ。
このようにCDP導入時は組織自身や組織間の問題が起きやすく、業務フローやプロセスの見直しなど包括的な取り組みが必要になることが多い。導入経験豊富なコンサルティングサービスを依頼するのも一つの手だろう。
具体的なデータの収集と結合方法
CDPに必要なデータ収集の機能は次の3つだ。
1.ストリーム
2.インタラクティブ
3.バッチ
ストリームはWebやアプリの行動をリアルタイムに収集する。CDPには膨大なデータを高速に処理する性能が求められる。
インタラクティブはシステムからの注文の更新や会員情報の更新などを受け取るほかに、CDPで変更されたデータをシステムに送り、相互にデータの交換が可能なことが求められる。
バッチは大量の顧客データなどをCSVやデータウェアハウスから、定期的に、正確にインポートできることが求められる。
これらの過去の顧客データとオムニチャネルの行動データを結びつけ、プロファイルを統一し、スタック全体で同期可能な単一の情報源を作成することが重要だ
CDPは、CookieやデバイスIDではなく、人に根ざしている。リアルタイムに送られてくる大量のデータを瞬時に誰のIDかを認識し、セグメント化とオーディエンスターゲティングを実行できることが重要だ。
データの結合に必要になるIDはシステムにより考え方が異なるだろうが、最も多い例はメールアドレスだろう。メールアドレスはグローバルで一意なIDだからだ。しかし、メールアドレスは変更されたり失効してしまう場合がある。そのような変更に対応できるか、そもそもメールアドレスではない変更されない別のユニークなIDを用意するなどの考慮が必要だ。
CDP導入の第一歩
ここまで多種多様なデータが必要であると説明したが、ではどこから始めればよいか?と疑問を持たれている方もいるだろう。
筆者としてはまずはWebからのストリームデータを集めることをお勧めする。Webのデータは最も集めやすく、Webの改善も効果の測定がしやすいからだ。
また、導入前にPoCなどを実施し「これならうちでも活用ができそうだ」という実感を持っていただくことが重要と考える。CDPは大規模であり、決して安くは無いものだ。ビッグバン的に「せーの」で一気に導入するよりは、細かくステップをわけ、小さな成功体験を積み重ねていただき、効果を実感しながら適用範囲を広げていただくのが良いと考える。
著者:山本 誠樹 サイトコア セールスグループパートナーテクニカルイネーブルメントマネージャー
通信系システムや会員管理サービスの設計・開発から保守まで、システムエンジニアとして様々なプロジェクトに約20年従事。近年はクラウドにフォーカスしたコンサルティングを小売・流通・電力系など業種を問わず行う。
2013年から2021年まで8年間、Microsoft MVP for Microsoft Azureを受賞。2021年7月より現職。