今回のテーマはCPMだ。
だがそんなことはどうでもいい。それより先に伝えたいことがある。先日担当より、「原因不明の腰椎圧迫骨折になりました」とメールがあった。
それを読んだ私はこう思った、「何を言っているんだ。原因は俺に決まっているだろう」と。
このコラムも通算85回、つまり担当を呪い続けて85回、ついにやりました、である。もちろん「殺りました」と書く。つまり私はこのコラムを通じて「継続は力なり」ということを皆さまに説きたかった、諦めなくて本当に良かった。
しかしこの腰椎圧迫骨折とやら、症状やなりやすい人間のタイプなど調べれば調べるほど、近々、自分も患うような気がしてならないのである。「人を呪わば穴二つ」、これも当コラムを通じて皆さまに伝えたい重要なことだ。
ネットコンテンツとカネのキーワード
すでに最も重要なことは伝えてしまったが、ついでにCPMの話をしておこう。
CPMとはCost Per Milleのことである。Milleとは1000の意味であり、1000あたりのコストということになる。では何が1000かと言うと、ネット広告の表示回数だ。つまり広告収入の話である。
ネット上には、このようなコラムはもちろん、漫画や動画など、無料で見られる物がたくさんある。当コラムに関しては、読後こっちが金をもらいたいと思った人がいるかもしれないが、とりあえず無料だ。もちろん、そういったものをボランティアで見せているわけではない。大体のところがそれによる広告収入を得ているのだ。
このマイナビニュースとて例外ではない。というか、外部から当コラムにアクセスしようとすると、まず本文ではなく広告ページに飛ばされる。これでもかと広告収入である。
そこから数秒待つか、スキップを押すなどしてコラムのページに飛ぶわけだが、正直、せっかちな奴はその数秒間にブラウザを閉じると思う。というか、私がまさにそうで、マイナビニュースで仕事をする前、この手の広告ページが出た時点でブラウザを閉じていた。待つと本文に行けることを知ったのは、このコラムを始めてからである。
広告を見せられる時間はたかが数秒であるが、その間にパソコンが爆発しないという保証はない。生き馬の目を抜くネット業界において「待たせる」というのはあまりクールなやり方ではないように思える。数秒あれば、指を両鼻につっこみ、前髪を口でフーフーするなど、もっと有意義なことができるからだ。
もちろんネット広告とは、こういった数秒ほど強制的にCMを見せてから本文に行かせるものだけではない。むしろページの空きスペースに広告が張り付いている方が主流だ。今まさにこのページの横にも何らかの広告が表示されているはずだ。
ちなみに、マイナビのサイトではセクシー系広告は出ない。にもかかわらず今、セクシーなものが出ているという人が来たら、セクシー開拓スピリットがマイナビのシステムを凌駕したということになる、誇っていい。
広告料の「コスパ」
広告料は表示されただけで発生するもの、クリックされることによって発生するもの、またはクリック先で、ユーザーが会員登録や商品を購入して初めて発生するものなどがある。
もちろん、広告を出す側からすれば、多く表示されたり、クリックされたりする方がコスパは良い。その率を表すのがCPMである。
例えば広告料が30000円だとして、表示回数も30000回としたら、30000÷30000×1000でCPMは1000円ということになる。当コラムであれば、見ているのは私を含め3人なので、30000÷3×1000、つまり1000回表示させようとしたら一千万円かかるという、死ぬほどコスパが悪い状態になるのだ。今このページに表示されている広告が不憫でならない。
つまり、広告を出す側からすれば、CPMは低い方がコスパはいいということになる。もちろん、このページが何回表示されようが、広告がクリックされようが、原稿を書いている私には何も入ってこない、おそらく多くのネット記事を書いているライターがそうであろう。
では、アクセス数がどうであろうとライターには関係ないかというと、そうでもない。企業としては、広告料を多く得るために、よりアクセス数を稼げるライターを使いたいからだ。よって、アクセス数が稼げる記事を書くライターに仕事は集中し、そうでない者は餓死である。
私がよく「読まなくていいからアクセスしろ」というのはそういうことだ。なので今回も言うが、次回も読まなくていいからアクセスしろ。
だが問題は、前述の通り、このページを見ているのが当方を含め3人しかいない上に、最後まで読むのは1人しかいないので、ここでいくら言っても無駄なところだ。
広告というのはたとえ興味を持つ人間が1パーセントでも、やはり多くの目に触れた方が勝ちなのである。
<作者プロフィール>
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。
「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2016年11月8日(火)掲載予定です。