今回のテーマは「POS」だ。
この用語に関しては「検索したらグロ画像が出てくるやつじゃねえか」と放置していたら締め切りが迫っていた、という次第である。「パチンコ」のように、一文字減ったり増えたりするだけで、意味がまるで違うものになる、という好例だ。
話は変わるが、私は毎日のようにコンビニを利用する。ペペロソチーノの素を買ったりペペロソチーノの素を買うための金を下ろしたり、ペペロソチーノの素を買う片手間に荷物を送ったりしている。
大体の用事はコンビニで済むと言っても過言ではない。使う側は便利だ、だが逆に思うことがある。「コンビニ店員、仕事多すぎないか」と。
商品を売るだけではなく、公共料金の支払いやチケットの受け渡し、宅配便の受け付け、コピー機の使い方がわからないボンクラの相手など、コンビニが便利になればなるほど店員のやることが増えている。
しかし、「や…やることが多い!」と、金田一少年の事件簿の犯人状態になっている店員はあまり見たことがない。皆、そつなく仕事をこなしている。コンビニの店員は全員デキる奴なのか。
しかし、コンビニ店員の仕事がそんなに難易度の高い仕事だったら、誰も時給820円(おらが村調べ)で働こうと思わないだろう。つまり、コンビニ店員のやることは多いが、それが誰でもスムーズにこなせるようなシステム、あるいはマニュアルができている、ということだ。
それに一役買っているであろうものが「POS」である。
人手不足に機械が歩み寄る「POS」
POSとはPoints of Salesの略で「販売時点情報管理」という意味だ。
販売時点情報管理(はんばいじてんじょうほうかんり)は、物品販売の売上実績を単品単位で集計する経営の実務手法。POSシステム(ピーオーエスシステム、ポス システム、英語: POS system, point of sales system)ともいう。単に「POS」というと、このPOSシステムに必須な個々の機器を指す場合もある。(引用:「POS」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2018年1月29日 (月) 16:00)
商品が販売された時点でデータを集計してくれるシステムのことであり、その機能を備えたレジは「POSレジ」と呼ばれ、現在コンビ二ではほとんどの場合、このPOSレジが使われている。
商品が売れた時点でそのデータが取得できるため、在庫管理をわざわざ行う必要がなく、売れ筋なども把握することができる。また、手入力の作業がほとんどないため、会計時のミスも大幅に減らせるのだ。
最近では客から受け取った金額と代金の計算をして、つり銭まで自動で出してくるレジも珍しくない。もはや人間は、商品バーコードの読み取りと袋詰めさえできればいいような状態だ。あとは、レジ袋に商品をつめる時、一番下にシュークリームを配置するなど、玄人のどうぶつタワーバトルみたいなことをしなければ完璧だ。
そんな、すでにかなり高機能なPOSレジだが、2017年の年末に、大手3社コンビニのPOSレジが10年ぶりに刷新されたという。
冒頭で「コンビニ店員やること多くね? 」と言ったが、やはり事実多いのだ。しかしアルバイトを全員、そんな煩雑な仕事をすべてすぐ覚えられる者でそろえるのは無理だろうし、そういう人間は多分、時給820円(当村基準)で働かない気がする。
実際、コンビニ業界は少子高齢化の影響に加えて、「なんか、仕事ややこしそう」と敬遠されることで、人手不足が問題になっているそうだ。
確かに、私もこれから先アルバイトをする可能性は大いにあるが、コンビニは選ばない気がする。もちろん「なんか、仕事ややこしそう」だからだ。
つまり、業務の複雑化、人手不足に対応するには「POSレジの方が便利で簡単になるしかない」ということである。
新しいPOSレジでは、画面上に宅配便やチケット、金券販売など、多すぎるコンビニの業務をわかりやすく細かく表示し、スタッフが迷わないようにしているそうだ。また、これから英語や中国語にも対応し、日本に不慣れな外国人でも操作できるように改良していく予定だという。そして新しいPOSレジでは「例のボタン」が3社中2社で廃止になったそうだ。
「例のボタンとは何か、続きが読みたければ、会員登録をしろ」
担当から資料として教えられたサイトはそういう仕様であった。そんな雑な資料の出し方があるかよ、と驚愕したが、続きを読まねばならぬ。
それに、私はこれを「年齢確認ボタン」と推察した。酒類を売るとき、客が「私は成人ですよ」、と確認ボタンを押すやつだ。あれは定期的に議論というか、炎上している案件である。「そんなの見ればわかるだろ」「何の意味が」「なくせ」という廃止論者に、「そのぐらい押せよ」「その程度のことで権限のないバイトに文句を言う、品性下劣な親父」と反論がぶつけられるのが定番である。
つまり、バズりやすい話なので、ぜひ触れねばと、二度と立ち入ることがないであろう経済ニュースサイトにあらゆる個人情報を入力して会員となった。
そこに書いてあった「例のボタン」とは、店員が客の顔を見て、「30代」など年齢を判断して入力する「客層ボタン」のことだった。
どうやら、「年齢確認ボタン炎上」は今後も定期的に見られそうである。
<作者プロフィール>
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集、「ブス図鑑」(2016年)、「やらない理由」(2017年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。
「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2018年2月6日(火)掲載予定です。