自動運転

弊コラムでは再三「車はいつか完全自動運転になるだろう」というような話をしてきた。

これまでの自動運転関連キーワード回

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連続特集・カレー沢薫と「IT用語」(61)ADAS
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しかし、いつか、とはいつなのだ。これでは、親が子どもの強請りをかわす常套句と大差ない。つまり、「進捗どうですか」という話だ。

ちなみに上記の台詞は漫画家のやる気を低下させ、殺意を上昇させる、言っても何の得もない言葉だ。

自動運転の「レベル」

今、車の自動運転はどこまで行っているのだろうか。自動運転技術は大まかにわけて「レベル5」まであるという。

まず「レベル0」はドライバーがすべての操作を行う車だ。おそらく私のメーカー最安値軽自動車は「レベル0」である。レベルの高い車ではないとは思っていたが0とは驚きだ。ドラクエのレベルでさえ1から始まるのに手心がない。

もちろんレベル0だからと言って、ハンドルがないとか、逆にダミーのブレーキが2つついているとかいうわけではない。ただ「運転に関して、車側が気を利かせてくることはない」ということだ。

つまり、すべて運転者の操作通りに動き、操作通りに前方車やコンビニに突っ込んでいく、服従主義である。いくら車の見た目がイケていても、運転手の運転がダメだとそのまま「スタイリッシュなフォルムからクソのような走行」をしてしまうのが、レベル0の車だ。ある意味「再現度が高い」と言える。

続いて「レベル1」は運転支援を行う車である。走行車線をはみ出るとステアリング(舵取り)を補正してくれたり、前方車との車間距離を一定に保つため、自動的にスピードを調整してくれる車を指す。現在すでに多くの新型車にこのシステムが採用されているという。

買うときに金額で揉めた、夫の車は少なくともこの「レベル1」だ。さすが、家庭不和を引き起こす金額だけあって、見た目だけではなく、安全面もしっかりしている。しかしレベル1では、ステアリング操作の支援と加減速の支援は連携していないそうだ。

そして、それらが連携したのが「レベル2」になるらしい。連携するとどういうことができるか、というと「渋滞時追従支援システム」などが挙げられる。渋滞時、車線を出ないように、先行車を追従してくれ、先行車が停車すれば併せて停車し、また先行車が動きだしたら、勝手に併せて発進してくれるという。これで、ドライバー渋滞時の運転ストレスをかなり軽減できる。頭痛の根本的原因は治らないが、痛みは軽減できる、痛み止めのようなシステムである。

夫の車がこのレベル2の域なのかは不明だ、何故ならその車で渋滞にはまったことがないからだ。だからと言って、機能を確かめに渋滞にはまりに行くのもおかしいし、機能を確認しようとして追突してしまった場合、「座席ごと空中に脱出できる」というなら良いが、おそらくそういう機能はまだついてないはずだ。それは「レベル19」ぐらいだろう。

そして、現時点で公道を走れるのはこのレベル2までの車である。

ではレベル3になるとどうなるかというと「特定の場所ですべての操作が自動化、緊急時だけ人間が操作」となる。レベル2とレベル3の間に凄まじい隔たりがあるような気がするが、気のせいだろうか。

「特定の場所」というのは高速道路などだが、高速道路で運転しなくて良いというだけでもかなり大きい。

そしてレベル4になると「特定の場所ですべての操作が完全自動化」になる。つまり緊急時でも車が対応するようになる、高速道路などでは完全に人間の出る幕はない、というわけだ。

そもそも、「緊急時に人間が出てくる」というのがおかしい。重要な時こそ、すっこんでおくべきだ。さもないと緊急事態の緊急性がさらに高くなる。

そしてレベル5は言わなくてもわかると思うが「全部自動化」だ。場所の制限なく、すべての操作を車が行なうようになる、人間はただ乗っていればいい。乗っていなくてもいいぐらいだ。

どうやら技術的にはレベル3ぐらいまでは行けているようなのだが、道路側の問題、また法律的問題で、公道を走れるのは現在2までになっている。

レベル2と3の大きな差は技術面だけではない。レベル2までは、何か起こった際には運転者の責任だが、3になると車のシステムの責任になるそうだ。

車に興味がない私だが、「責任逃れが出来る」なら、高い金を払っても買う価値はあるように思える。

参考:フォルクスワーゲン「自動運転の基礎知識」

<作者プロフィール>

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カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集、「ブス図鑑」(2016年)、「やらない理由」(2017年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2018年1月23日(火)掲載予定です。