今回のテーマは皆様も最近よく目にするだろう「UI」そして「UX」である。
…と、「UI」を説明するページに書かれていたが、初見である。
たまに自分がシャバにいるのが信じられなくなるぐらい私は物を知らないが、そう断言されたからには仕方がない。最近良く見るという体でUIの話をするしかない。
こういう「最近良く聞くと思うけど」「知っていると思うけど」という話の始め方が人を知ったかぶりに走らせ、収拾がつかないところまで追い詰めるということを覚えておいて欲しい。いくら有名なものでも、知らない奴は知らないのだ。
人が使うものは使いやすいようにデザインされるべき
そういうわけで、最近良く聞く、知らないほうがおかしいUIとUXだが、まずUIは「User Interface」のことである。
ユーザインタフェース:機械、特にコンピュータとその機械の利用者(通常は人間)の間での情報をやりとりするためのインタフェースである。 (引用:「ユーザインタフェース」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2017年9月25日 (月) 16:00)
「インタフェース」の意味を知らないと何一つ意味がわからぬ説明だが、簡単に言うと、我々がデジタル機器を上手く扱えるように手助けしてくれる、スマホやパソコンの画面に表示される内容のことを指すようだ。
平素、私が目にも止まらぬスマホさばきで、10秒に1回エゴサができるのも、このUIのおかげだ。まずツイッターを立ち上げようにも、それがアイコンではなく「ツイッター」とか「インターネットエクスプローラー」とか「夢王国と眠れる100人の王子様」とか、すべて文字で羅列されていたら、まず「ツイッター」を見つけるのに時間がかかる。
また、アイコンが表示されていても、アイコンとアイコンの距離感がゼロか、半分くらい重なりあっていたら誤タップは避けられないし、音ゲーのように決まったタイミングで押さないと立ち上がらない、とかでも困る。
つまり、我々が快適にデジタル機器を使えるのは、快適に使えるようなUIデザインがされているからなのである。
デジタル機器だけではない、階段だって、登りやすいように段差をつけてあるのだ。これが傾斜45度の坂のままだったら、永遠に二階に行けない恐れがある。人が使うものは使いやすいようにデザインされるべきであり、それがなっていないものは「このクソ設計をした奴は誰だ」と海原雄山に叱責されるのである。
この「快適に使用できる」というのは時として、内容よりも重要だ。どんなにキャラやストーリーが良くても、操作性が悪すぎるゲームだと、人はストレスを感じ投げ出してしまう。また、人を凶暴化させるのは、暴力的なゲームではなく、ロード時間が長いゲームだとも言われている。つまり、いらぬ傷害事件を起こさぬためにも、使いやすさは重要なのだ。
ではUIが、快適に電子機器を使うための画面デザインだとしたらUXは何かというと「User Experience」のことだ。
ユーザエクスペリエンス:ユーザが特定のサービスを使ったときに得られる経験や満足など全体を指す用語 (引用:「ユーザエクスペリエンス」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2017年9月25日 (月) 16:00)
簡単に言えば、「インスタに自慢のインテリアの写真を上げ、いいねがたくさんついて得意絶頂」みたいな気分も「ユーザエクスペリエンス」の一つだ。承認欲求を満たす、などと言うと聞こえが悪いので、今後は「ユーザエクスペリエンス感じてる」と言うようにしよう。
ちなみに、使いやすい画面のアプリを使って「快適だ」と感じるのもUXなので、UIはUXの内の一つと言える。
つまりソシャゲで言うと、快適にゲームをプレイできるような画面デザインがUIで、ストーリーに感動したり、キャラを尊いと感じたり、ガチャ爆死に怒りを通り越して、笑いが出てきてしまうのはUXということだ。
そして、良いUXを感じるにはUIが重要である。UIがダメだと「このクソシステムが」という怒りのUXしか巻き起こらない。
逆に言うとUIがものすごく悪ければ、ゲームにはまることもなく、ガチャを回すこともなく「爆死しすぎて感情を失う」という、逆にUXが崩壊してしまうような、体験をせずにすんだのかもしれない。
しかしそこまではまらなければ、ソシャゲは「喜怒哀楽」すべてのUXを感じることが出来るツールなので、UIおよびUXを体験したい人はぜひプレイしてほしい。
ついでに、ガチャを回した末に「無」を経験してもらえると私が喜ぶ。
<作者プロフィール>
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集「ブス図鑑」(2016年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。
「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2017年10月3日(火)掲載予定です。