今回のテーマは「サーバ」だ。これは漠然とした理解のまま普段使いしてしまっている用語10年連続1位ではないだろうか。

例えば、ソシャゲの大型アップデートの後、1秒でも早くプレイしたいのに、何回やっても猛烈にゲームにアクセスできないことがある。そんな時、とりあえず「鯖(サーバ)が落ちてやがる」とツイッターに叫んでしまうものだ。

最近ではそれより先に「詫び石! 詫び石! 」と言うことの方が増えてきたが、とにかく「何かにアクセスできない=サーバとやらが落ちている」という印象だ。

担当からも「サーバというのはソシャゲも弊社媒体もみんなこれがないと生きていけないものです」という説明を受けている。むしろこれ以外の説明が一切なかった。この一文で2000字のコラムを書かせようというのがすごい。

そんな御社媒体のことはどうでも良いが、ソシャゲが出来なくなるのは困る。つまり「サーバがなくなる=世界滅亡」という理解でいいだろう。

サーバーダウンと世界の滅亡

サーバあるいはサーバー(英: server)は、サービスを提供するコンピュータである。コンピュータ分野のクライアントサーバモデルでは、クライアントからの要求に対して何らかのサービスを提供する機能を果たす側のシステムを指す。 (引用:「サーバ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2017年8月28日 (月) 18:00)

相変わらずウィキペディアさんの説明は馬鹿にわからせる気が一切ないが、ともかくサーバというのはWebサービスが格納されている場所である。

今見ているページもサーバに格納されているものである。貴殿の「この記事を読みたいんや」という強い意志によるクリック、もしくは尋常じゃない手の脂が起こした誤クリックにより、サーバからこの記事は呼びだされ、今あなたの眼前にあるというわけだ。

つまり、現実世界の店と同じように、客からの「お母さんと同年代の女性がセーラー服を着ている動画を」などの注文に応じて、格納庫から該当するサービスを出してくるということだ。

ソシャゲのガチャに関しては「このキャラを出したい」という客の求めをガン無視している気がするが、おそらくサーバには「適当に10個選んで持って来い」というオーダーしか伝わっていないのだろう。

つまり「サーバが落ちた(ダウンした)」というのは、この格納庫自体が機能停止してしまい、何も出せない状態のことを指す。では、なぜサーバがダウンしてしまうかというと、人間がダウンする理由とさほど変わらず、多くの原因が「負荷がかかりすぎ」というものだ。

サーバにも一度に処理できるタスク量には限りがある。店員が一人しかいない飲食店に客がたくさん来たら、処理がおいつかず、料理を出すのが遅くなる、そしてさらに客がきたら店員はぶっ倒れ、何も出せなくなる、それと同じだ。

つまり、ソシャゲのメンテ後、サーバが落ちてしまうのは、私を筆頭とした、それしか楽しみしかない連中が一気に大挙して押し寄せ、「水着!水着!」「土方さん! 土方さん! 」など、各々が欲しいサービスを叫びながら店の扉を叩きまくったため、「こんなの相手にできるか」とサーバが静かに息を引き取ってしまったからということだ。もしかしたら自害かもしれない。

ともかく、Web上で得られるゲームや音楽、画像や、動画、セクシーな動画のほぼすべてがサーバ上にあるため、それがダメになったらサービスを享受できることはできず、世界が滅亡する、というわけである。

ユーザーがサーバに格納するパターン

そして我々は、サーバから引き出すだけではなく、自らサーバに何か格納したりもしているのだ。現在だと各種SNSや、ブログがある。今、イラストや漫画を発表したいならピクシブを選ぶだろう。

いろいろと便利なものがあるが、これらもSNSのサーバにデータをアップするという点では、昔主流だった個人HP(ホームページ)と同じだ。最近はあまり個人HPを持っている人はいないと思うが、私がJKだった原始時代にはそんなサービスはなかったので、自分の絵をネットで発表したい、と思ったらHPを開くのが主流だった。

そしてHPを開設するにあたり、まずやることは「サーバを借りてくる」ことである。HPに載せるものが揃っていても、それを入れるサーバがなければ、カレーの材料は揃っているが鍋がねえ、みたいなもので、永遠にHPという名のカレーはでき上がらない。

このサーバも、多くの人間が共用する共有サーバや、個人専用サーバまで種類はいろいろあるようで、専有度が高いほどレンタル料は高いようだ。そして、そのサーバに公開したい絵だけでなく、各種HP用のボタン素材などのデータをアップロードして、配置を決めてリンクをはり、初めてHP開設となる。

そして客の求めに応じ、サーバに入れてあるイラストなどが表示されるわけだが、求め(アクセス)がなければ、サーバに入ったまま永遠にでてくることはないのだ。

サーバが落ちて、サービスがストップしてしまうというのは運営側からしたらおおごとなのかもしれない。しかし、それだけ人から求められたということでもある。

客がまったく来ないより、幾分ましではないだろうか。


<作者プロフィール>
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集「ブス図鑑」(2016年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2017年9月4日(火)掲載予定です。