今回のテーマは「IIoT」だ。

あきらかに、あからさまに「IoT」の手の者だ。ちなみに、「IIoT」と検索しようとしたら「イイ男」と予測変換がでた。こっちを検索した方が、私にとって有益な情報が出るだろう。

太陽光パネル、お前だったのか。

「IoT」とは、おなじみ「モノのインターネット」のことである。さすがに覚えた。むしろ、「IoTを覚えるか、ノイローゼになるか」みたいなところまで来ている。

それだけ重要な「IoT」だが、いくら説明されても、具体的にIoTを使ったものを見る、または使用し、「これがIoTや」と言われない限りは永遠にピンとこない。「炊いた米を三角状に形成し、塩化ナトリウムを添付したもの」、と1時間かけて説明されるより、実物を食わせてもらったほうが、一瞬で「これがオニギリか」と理解できる。

などということを、前の記事で言っていたところ、担当とは別のマイナビニュースの編集者から、このようなメッセージが届いた。

「カレー沢さんのご自宅で太陽光発電をされているなら、発電量などを表示するパネルが屋内にあるかと思うので、それこそIoTで、太陽光パネルというモノの状態をネットワーク経由で可視化しているんですよ」

「それこそ」が絶妙にムカつくということは置いといて、「太陽光パネル…お前だったのか…」と、ごんを撃ってしまった兵十の気分だ。ただ、それだともの悲しすぎるので、ウソでも漫☆画太郎顔で「太陽光パネル!お前やったんかいワレー!!」と喜んでおこうと思う。

確かにあった。一日の電気使用量と、発電量が表示されるパネルがうちにある。もちろん、今存在に気づいたわけではない。ただ、これがIoTであることには今気づいた。やはり言われなければわからないものである。知らない内に、IoTと5年くらい暮らしていたのだ。

ただ、私はこのパネルを長らく見ていない一番の理由は、見てもしょうがないからだ。

使用量に関しては改善の余地があるかもしれないが限界はあるし、発電量においては「くもりで発電量が少ないから雲をどかそう」という話になったらもはや神の領域なので、それができるなら発電よりもっと稼ぐあてはあるはずだ。

IoTで産業を便利にする「IIoT」

IoTはありとあらゆるモノをネットに繋ぐシステムのことだが、もちろん、どれだけ斬新なモノをネットに繋ぐか競う競技ではない。ネットにつないだことにより、利益、簡単に言えば儲けに繋がらないと無意味である。

つまり「IIoT」の「I」は「イイ」ではなく「インダストリー」、産業分野で使われている「IoT」が「IIoT」である。

産業で使われているIoTには前にも触れたことがある。製造業のラインをオートメーション化、リアルタイムで情報を取得し、例えば「おがくずを大量に保管していたA倉庫が爆破され犯人は社内に潜伏中」という情報をキャッチしたら、すぐにそれを反映して、ロボたちは失われたおがくずを大量に作り始めるのである。

先にやるべきことがあるような気がするが、それは人間どもがやることである。つまり、状況に応じ自動的に生産量を調整してくれるというわけだ。

また、海外のタイヤメーカーは、タイヤという「モノ」にネットを繋ぎ、磨り減り具合や空気圧や走行距離を集計し、それによって運送会社からリース料金を貰うという新しいサービスをはじめたそうだ。トラックをたくさん持っている会社からしたら、タイヤの買い換えというのは軽視できない出費だ。1本いくらではなく、使った分だけ料金を払えばいいというシステムなら気軽に使えるようになるし、センサーから得た情報で「替え時」なんかもわかるようなので、かなりムダが省けるのだろう。

ヘビーに使うものならまだしも、たまにしか使わないものなら「使った分だけ課金」は助かる。おらが村は車社会なのでタイヤは間違いなく必要だが、問題はスタッドレスタイヤだ。

私のスタッドレスタイヤは4本あわせて2万円強だが、夫のタイヤは1本で2万円以上する、わけがわからない代物である。しかし、わが村は、滅多に雪も降らないし、道路も凍結しない。だが全く路面が凍らないわけではない、という中途半端さなのである。

つまり「スタッドレスタイヤがなければ即死だった」というシーンは年に2、3回程度だ。かと言ってオールシーズン、ノーマルタイヤで走行して、年に2、3回即死するわけにも、他人を即死させるわけにもいかないので、その2、3回のためにスタッドレスタイヤを購入している。これが「使った分だけ課金」システムになれば、相当な節約になるのではないか。

しかし、それだと雪が降った時だけスタッドレスタイヤに履き替えないといけないし、もちろん私は一人でタイヤの付け替えなどできない。

タイヤに仕込まれたセンサーがその日の天候情報を把握し、勝手にスタッドレスタイヤに変わるシステムを作ってくれまいか。そこまでできて、初めて「IoT社会」だろう。


<作者プロフィール>
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集「ブス図鑑」(2016年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2017年8月8日(火)掲載予定です。