米国の半導体メーカーが一斉にカーエレクトロニクスに目を向け始めた。最近のカーエレクトロニクスの最大のトピックスはADAS(Advanced Driver Assist Systems:エイダス)と呼ばれる自動車が事故を起こす前の安全技術である。先日、米国カリフォルニア州サンタクルーズで開催されたGlobalpress Connection主催のe-SummitのADASパネルディスカッションにおいて、EDAメーカーのCadence Design Systems、通信用半導体メーカーのBroadcom、FPGAメーカーのAlteraという異色の3社が議論を戦わせた。その模様を今回と次回の2回に渡ってお伝えしたい。なお、モデレータは市場調査会社GartnerのStephan Ohr氏である。
Ohr氏は自動車のシステムとして事故を予防する技術が使われるようになってきたことをあげ、センサ技術と組み合わせて、見る、聴く、知る、によってもっと制御可能になっていくことを述べた。これまではエアバッグによって衝突した場合に衝撃を和らげるという衝突後の安全性を上げたものだった。エアバッグの次は何か。もっと予防や予測による事故回避システムに向かう。
Gartnerが最近市場を調査した結果、車内の安全システムに使われる半導体製品の数は毎年平均8.2%で増えていくと見積もっている。2011年における37億ドルが2016年には55億ドルにまで成長すると予測しており、そうした市場の拡大を背景にそれぞれのメーカーがADAS技術にどう係わっているかについて意見を求めた。ADASシステムで使われるハードウェアとソフトウェア、そしてセンサはどのように統合していくのか、ビジョンシステムとレーザーとの融合がありうるだろうと指摘した。さらにソフトウェアも統合されるのだろうか。パネラーはそれぞれの立場から、ADASシステムへの関与について述べた。
EDA企業はアルゴリズムとAUTOSARに注力
まず、最初に登場したのがCadence Product Marketing担当Senior DirectorのFrank Schirmeister氏である。同氏はクルマ内通信システムの専門家である。ADASシステムにおいて同氏が力を入れているのはソフトウェアだ。EDAメーカーとしてADASシステムを見て、センサからA/Dコンバータ、通信(EthernetやCAN)、プロセッシング(MCUやソフトウェア)、さらに通信(Ethernet やCAN)、アクチュエータという流れを紹介した。このなかでCadenceが力を入れるのは、アルゴリズムやAUTOSAR(車載ソフトウェアの共通化、再利用性などを可能にするソフトウェア)のようなソフトウェアである。
ではEDAメーカーとして何を扱うか。これまでのEDA企業は半導体の設計に使うべきツール製品を中心に販売してきた。カーエレでは、MCU(マイクロコントローラ)のような半導体をECU(電子制御システム)に入れ、それをサブシステムに組み込み、最後にシステムとして仕上げる。この中で、自動車システムにはもはや10億行という膨大なソフトウェアプログラムを利用している。現在は2000以上もの機能を追加する。クルマ1台当たりのECUは75個もある。
自動車産業では、OEM(自動車メーカー)とサプライヤとの関係はまさに上から目線の垂直統合の流れがある。ここでAutosarは何を行うか。Autosarは、ソフトウェアのタスクをハードウェアにマッピングするために使われる。Schirmeister氏は、まるで携帯電話のAndroidを誰でもソフトウェアのアブストラクションレイヤをハードウェアにマッピングするのと似ていると表現する。
これを自動車用のソフトウェア開発フローに当てはめてみると、Cadenceは半導体メーカーと同様、Tier 2(図2のMCUレベル)に相当する。Tier 1(図2のECUからサブシステムレベル)はBoschやContinental、デンソーなどに相当し、OEM(図2のビークルレベル)はトヨタや日産などの自動車メーカーである。Tier 2ではチップ開発と検証を行い、チップをTier 1メーカーに収める訳だが、ソフトウェアメーカーとしては、ECUやサブシステムに使うソフトウェアに関してもできるだけ初期の段階、すなわちOEMに近いソフトウェア設計段階からかかわっていく必要がある、と述べた。