「引き寄せの法則」の真打ち
「ポジティブに願えばすべて叶う」と大胆にカスタマイズした『引き寄せの法則』。実は、同じテーマの書籍なら『ザ・シークレット』もあるため、どちらを先に紹介するかで悩んだ結果、前者の「わかりやすさ」を優先しました(第1回、第2回に掲載)。しかし、「引き寄せの法則」をより深く理解するには『ザ・シークレット』がオススメです。
もし、思春期に本書に出会っていたら、間違いなく初恋相手との恋の成就を望んだことでしょう。高校もその子が受験するという理由だけで決めたほどです。しかし、恋は実りませんでした。それを「引き寄せの法則」に照らし合わせてみると、振られることを引き寄せていたからです。
「失敗したくない」と強く願えば願うほど、「失敗」がやってきます。「○○でない」という否定形を「引き寄せの法則」は理解できず、意識を集中させた「○○」を引き寄せてしまうのです。「願いが叶わない」「何をやってもうまく行かない」という人は、失敗する未来を自ら引き寄せているのです。私の初恋で言えば、「振られたくない」というネガティブな発想が間違いだったのです。
そう、「ネガティブ」に「引き寄せの法則」の怖さがあります。
熱愛の末に待つ幸せ
一部上場のIT企業に勤務していたAさんは、職場の同僚の女性に一目惚れしました。やがて、片思いから両思いに発展します。しかし、すぐに振られてしまいました。Aさんはいつか彼女がまた戻ってくれる日が訪れることを願い、友人でいることを決心します。彼女が別の愛を求めている時も見守り、励まし続けていると、2人の間に新しい命が宿り、婚姻届を提出することになりました。
はい、これも「引き寄せの法則」です。Aさんは願い続け、求め続けて「引き寄せ」たのです。そして、Aさんが幸せと思うのなら、誰がケチをつけるものでもありません。しかし、結婚を機にAさんの周りから10年来の友人が次々と離れていきました。
彼女と友は、どちらかを得れば、どちらかを失うというトレードオフの関係にはありません。Aさんは「友を失う」ことも引き寄せていたのです。
ネガティブなことは願ってはいけない
付き合ってからの彼女との関係はトラブルの連続でした。縛られることを嫌うと自ら語る奔放な彼女と、ヤキモチ焼きのAさんです。友人たちが2人の交際を「難しい」と指摘しても聞く耳を持たず、逆切れすることもしばしばでした。そのくせ、Aさんは「愚痴を聞いてほしい」「相談に乗ってくれ」と友人を頼りにします。ある時などは、20時間も新婚の友人宅で愚痴をこぼし続けました。時折、冷静になり「迷惑ばかりかけていては友達がいなくなる……かも」と自嘲気味に笑っていたのが印象的です。
「引き寄せの法則」を活用する上でとても大切なカスタマイズ、それは、ネガティブな願いほど引き寄せやすい。
私の初恋と同じです。例えば、「人に馬鹿にされたくない」と願ったとします。これは「馬鹿にされる」ことに意識が向かっており、「引き寄せの法則」は意識が集中しているものに働きかけ、あなたが馬鹿にされるシチエーションを用意します。それは、平均台を歩く時に「落ちない」ようにと、足元ばかり見ているとフラつき、いずれ落下するのと同じです。Aさんは彼女の相談で迷惑をかけていることは認識しており、その結果、友を失う可能性に捕らわれていたのでしょう。
ネガティブなパワーが強い理由
崖から落ちたら死にます。毒蛇に噛まれれば死にます。「生レバーを食べたら時々死ぬ」と厚生労働省は脅かします。人がネガティブな情報にフォーカスしてしまうのは、死への恐怖という「本能」の仕事です。そして、この「本能」がネガティブな結果を引き寄せてしまうのです。
「○○したくない」「××されたくない」
望まないものをイメージした時、そのイメージに「引き寄せの法則」が働きかけてしまいます。Aさんは彼女を引き寄せると同時に、友がいなくなることもイメージしていたのです。だからこそ、「ポジティブなイメージ」が何より重要となります。そこで、次回は本能に抗うカスタマイズを。ついでに「引き寄せの法則」により不眠症の解消も可能です。
当初、友人たちはAさんの恋を応援していました。しかし、友の目から見るAさんは都合良く利用されており、彼女の奔放さは男性関係に現れ、それを交流サイトで披瀝する貞操観念の持ち主です。一方、Aさんは生真面目で、それまで女性と深いお付き合いをした経験はありません。友人の視点で見ると、2人の相性は最悪でした。
しかし「恋は盲目」。愚痴だけならまだしも、彼女の派手な男性関係を指摘した友人の女性遍歴を仕返しとばかりに披瀝し、彼女の男性交友録を正当化します。この友人とは、先の新婚家庭で、妻に語っていなかったエピソードからしばらく深刻な家庭不和に陥りました。
貞操観念については、別の男と付き合っていたはずなのに、2人の間に「命」が生まれたことが皮肉にも証明しましたが、それでも「新しい命」の誕生を祝福しようと、結婚パーティーの準備をしていたAさんの友人たちを、彼女はアゴで使い、Aさんはそれを止めもしません。別の友人は結婚祝いを「手切れ金」と呼び、パーティー終了後、着信拒否したうえ、Aさんのメモリを消去し10年経った今も絶縁状態です。まるで友をなくすために行動しているようだったと、友人の1人は述懐します。
「引き寄せの法則」が発動すると、まるで「そうなる」ために、すべてのストーリーが展開されるのです。
宮脇 睦(みやわき あつし)
プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)がある。