リスニング力をつけるためには、発音を良くするとよいと聞く。そこで発音を改善する方法について考える。
発音のポイントは母音、子音、そしてリエゾンにあると私は思う。リエゾンとは、単語と単語がつながって発音される現象だ。
発音に関するテキストとして、本棚を探したところ次のようなものが見つかった。
魔法の発音!ハイディの法則77
これはリエゾンの本で、But Iを「バライバライ」と60回練習してマスターするという代物である。Amazonでは絶賛されているが、流し読みしたくらい。
英語のリスニングは発音力で決まる!―UDA式30音練習帳
有名な本であるが、これもまだぱらっと見た程度。
American Accent Training
テキスト、5枚のCDに加えて、手鏡まで付属している。このガジェット感がたまらない。お楽しみは後に取っておく性格のためか、まったくといってよいほどページが進まないまま5年ほど放置している。
フォニックス“発音”トレーニングBook (アスカカルチャー)
フォニックスとは、つづりと音のルールであり、ネイティブの子供が学ぶらしい。この本は大人のためのフォニックスと謳われており、いつかマスターしたいと思っている。
TOEIC Test「速効!」リスニング
これは8年前に通ったTOEIC講座の先生が書かれた本。「藤澤博士のスピーチセラピーメソッド(R)」という発音法により、リスニングがよくなるという、本コラムの趣旨にピッタリな内容である。8年前の藤澤先生のTOEIC講座における発音の部分は、今の私の発音の基礎になっている。今、この本で発音をやり直したい気持ちでいっぱいである。
猿はマンキお金はマニ―日本人のための英語発音ルール
ピーター・バラカンさんの本。カタカナ発音を撲滅せよという内容だ。日本人はカタカナの外来語に英語の発音が引っ張られてしまうそうだ。たとえば、お金のことをマネーなどと発音しては、画家のモネに間違われるそうだ。お金はマニである。
そんな中、最近、私は「発音力」というソフトウェアで発音を学習している。プロンテストと産業技術総合研究所で共同開発されたこのソフトは、マイクを使って録音すると、発音を判定してくれて、アドバイスをもらえるという双方向型のソフトだ。技術の進歩はすごいもので、このソフトは口の中の舌の位置まで判定してくれる。
たとえば、cityの[s]の発音が、「日本語の「し」に近いようです。舌先が上あごの天井の高い部分に近づきすぎています」とか、layの[l]の発音が、「舌先で上あごを弾いています。舌先を上の歯の付け根につけてください」などというコメントがもらえるのだ。ちなみに100点になると先生が動画で褒めてくれるという、やる気を出す仕組みも備わっている。このようなソフトはほかに見当たらない。ぜひ、繰り返しやって発音を身につけたい。
さらに発音を極めたいと思ったので、先週、プロンテストの代表取締役で、発音力の開発者である奥村真知さんの「発音クリニック」という4時間のセミナーに参加した。
セミナーでは子音と母音について、簡単に矯正できるものから順番に直していった。奥村先生によると、短母音の[I]をまず直すとよいそうだ。長母音の[i:]とは明確に発音を分ける必要があるということだ。次にthの音を[z]にしてはいけない。たとえば、theyをzeyのように発音しないこと。この2点を直すことだけでも、日本人の発音はすごく良く聞こえるようになる、ということらしい。
奥村先生のお話の中で印象深かったのは、「発音が通じるとは、相手の音声認識の幅におさめることである。相手から聞き返されないような発音をすればよい」という部分だった。
自分は日本人だからネイティブを同じ発音などできるはずがない、いや、日本人発音でいいのだ、話す内容がのほうが重要だなどと、発音を軽視していてはいけない。コミュニケーションに問題がない程度に発音力をつけておく必要はやはりあるのだということを再認識した。
セミナーの中で私の発音は多少変わったかもしれないが、その実感はない。重要なことは発音は矯正できるという事実だ。ただ、ひとつの単語なら注意深く発音すれば正しく発音できるが、文章になると全ての単語を正しく発音するのは至難の技だ。今後は、素振りのように、日々身体に定着させるトレーニングをしていくことが必要だろう。たくさんある手持ちの発音本も有効に使って、この夏は発音トレーニングをしていきたい。
最後に奥村先生が書かれた『オバマネ オバマに学ぶ英語スピーチ・トレーニング』を紹介しておく。これはリエゾンのトレーニング本だ。独自のリエゾン法(R)により、オバマ大統領のスピーチを発音できるようになるというものだ。
あなたも今年の夏休みは発音を強化してみてはどうだろう。
数年前に購入したまま、ほとんど手つかず状態の『American Accent Training』とその中身(手鏡が特徴!)。ちゃんとやれば確実に力が付く教材だとはわかっているのだが、未だ取り組めていない…英語オタクの部屋にはこのように"買っただけ"の教材が数多く放置されている |
著者紹介
本多義則 (Yoshinori Honda)
日立製作所勤務のIT系研究者。10年前に趣味と実益を兼ねて英語学習を再開以来、アナログからデジタルまであらゆるツールを駆使して英語学習に励んでいる。職場では「英語ができる男」と見られているが、実はそうでもない真の実力との差を埋めるべく、英語学習をやめられなくなっている。休みの日の朝は英語のメルマガ執筆にいそしむのが習慣。取得した英語関連の資格は、英検1級、TOEIC955(瞬間最大風速)、通訳案内士(英語)。座右の銘は「あきらめない限り必ず伸びる」。著書に『伸ばしたい!英語力―あきらめない限り必ず伸びる』