マイケル・ジャクソンが急死した。私にとって、マイケルの思い出といえば高校生の時、運動会の仮装行列でクラス全員でスリラーのダンスを完コピしたことくらいか。黒いものを顔に塗ってヒリヒリしたことが思い出される。

かつてタモリがどこかで、こういうことを言っていた。

マイケル・ジャクソンの日本公演で、日本人女性のファンが、「マイケルゥー、マイケルゥー」と、"ルゥー"にアクセントをおいて叫んでいたけど、あれではマイケルには通じない。「マイコゥ」と"マイ"にアクセントを付けるのが正しい発音

思えば、これが英語の発音を気にし始めたきっかけだったかもしれない。

YouTubeで話題になっているこのビデオを見てほしい。これは思いっきり日本人発音で映画『マトリックス』のセリフを読む人のビデオだ。セリフのスピードは速いが、この人は、ちゃんとついていっている。

私にはこの人の話すセリフが非常によく理解できてしまう。セリフのスピードは速い。しかし、何を言っているかはわかってしまう。オリジナルの俳優のセリフでを聞いたのではおそらく理解できないであろうセリフがなぜ、日本人発音なら理解できてしまうか。

それは、悲しいかな、英語のカタカナ発音が、私の頭に染みついているからにほかならない。このビデオの人の発音が、私の頭の中にあるカタカナ発音の英語にパターンマッチングしてしまうのだ。

頭の中にある発音に一致するものしか、聞き取ることはできない、という理論。げらっ げらっ げらっ げらっ ばーにらー♪

逆に、こういう例はどうだろう。中森明菜の名曲『DESIRE』に慣れ親しんだ私には、「げらっ=get up」の公式が頭にあるため、"げらっ"と聞くと"get up"が頭に浮かぶ。これは正しいパターンマッチング。

リスニングの学習とは、「げらっ=get up」のような、本当の発音とスペルの対応関係を頭の中に作っていくことなのだと思う。

頭の中にこのような組み合わせをつくろう!-『魔法の発音!ハイディの法則77』(講談社)より

英語が速くて聞き取れない、という場合、実は問題は速さではなく発音がわからなくて聞き取れないのだ。

私たち日本人にとって、英語の発音の難易度は次の6段階に分かれるのではないだろうか。

  1. 完全なるカタカナ英語(マイケルゥー状態;日本人は非常によくわかる発音)
  2. 日本人向けの初級英語教材のようなクリアな発音
  3. 日本人向け英会話教室で、ネイティブがはっきりとしゃべってくれる場合の発音(この辺りからマイコゥ?)
  4. TOEICのリスニングテストのようなクリアな発音(ちょっと難しくなってきた!)
  5. ネイティブのニュースキャスターのようなクリアだが、スピードが速い発音(←私は今ここで伸び悩み中)
  6. 映画やドラマのような日常生活での発音(これはほぼあきらめている…)

発音を勉強するなら、なんてったってネイティブ講師!というわけで、皆さんの中にも英会話スクールに通っている人がいるだろう。そういう人が注意すべきことは、初心者コースの場合、ネイティブ講師が日本人にわかりやすい発音をしている可能性があること、そして、講師が日本人のカタカナ発音を理解できてしまうので、カタカナ発音が矯正されないかもしれないということだ。

私も数年前に、英会話スクールに通っていたことがあるが、そこで私の発音が直された記憶がない。もちろん、そこの米国人講師は、細かな発音の間違いを修正するよりも、自由に話させることを優先した、のだろう。その結果、私は多少話せるようになったかもしれない。ただし、今でもカタカナ英語のままだ。

実は、発音とリスニングの関係について長年の疑問がある。発音できないものは聞き取れないと、よく言われる。では、めちゃくちゃな発音をしているように見えるインド人は、ネイティブの英語を聞き取れているのだろうか? 聞き取れているとすると、発音とリスニング力は関係ないでのはないだろうか。この「インド人の謎」の答えを誰か教えてほしい。

しかしながら、カタカナ発音をしていたのでは、リスニング力はつかないのだということを、このYouTubeの日本人男性から、あらためて学ばせてもらった。

私たちは、ネイティブの発音、それも日本人向けではない、現地で話される普通の発音に慣れなければならない、という結論にやはり行き着くのだろう。

マイケルのニュースも、日本のテレビのワイドショーからではなく、現地のテレビからその情報を得ようではないか。

そんな芸能好きな人にお勧めなサイトを紹介しよう。E! Onlineというサイトは、芸能ニュースのサイトだが、芸能ニュースの動画も見ることができる。たぶんアメリカのサイトだと思うのだが、あちらの芸能界に興味のある人は覗いてみるといいだろう。

著者紹介

本多義則 (Yoshinori Honda)

日立製作所勤務のIT系研究者。10年前に趣味と実益を兼ねて英語学習を再開以来、アナログからデジタルまであらゆるツールを駆使して英語学習に励んでいる。職場では「英語ができる男」と見られているが、実はそうでもない真の実力との差を埋めるべく、英語学習をやめられなくなっている。休みの日の朝は英語のメルマガ執筆にいそしむのが習慣。取得した英語関連の資格は、英検1級、TOEIC955(瞬間最大風速)、通訳案内士(英語)。座右の銘は「あきらめない限り必ず伸びる」。著書に『伸ばしたい!英語力―あきらめない限り必ず伸びる