先日、古い同僚と飲む機会があった。場所はK市駅前の居酒屋。名物ふわとろ鍋をつつきながら。ふわとろ鍋は、豚をベースにした鍋にとろろを上からかけており、マイルドな味に仕上がっていた。

その元同僚A氏は転職して今は海外営業をしている。毎日、電話で英語を使って仕事をしているそうだ。以前のA氏は英語はからきしだめだったはずだが、果たしてちゃんと、やっていけているのだろうか……と心配していたのだが、A氏、驚くべきスピーキング力の上達を成し遂げていた。その会話の中から我々も学ぶべき心得があったように思うので、ここでシェアさせていただきたい。

A氏は毎日海外部署と英語で30分くらい電話をしているそうだ。最初は英語もまともにしゃべれず、「お前の英語はわからないからメールする」と言われる毎日だったという。それでもへこたれずに毎日英語でがんばって会話をするうちに、1年くらいたつと英語での会話も苦もなくできるようになっていた。

最初のころは日本語で考えそれを英語に直して話していたが、いつの間にか英語が直接口から出るようになったという。そんな経験がしてみたいっ!!

TOEICも最初は400点程度だったのが、2年たった今は700点程度にアップした。特筆すべきはリスニングだけが300点近くアップして、リーディングはまったく変化がないという点だ。電話で英語を話しているだけでリスニングが300点アップするものだろうか。TOEICリスニングパートの「技術」をあざ笑うかのような、恐るべき上達である。

まず、ここにひとつのヒントを見つけることができる。

英語上達への道 その壱 - 毎日、英語で30分話す

今では英語でジョークもやり取りするようになったA氏であるが、英語上達のコツはあるだろうか? あるならぜひ知りたいっ!! 飲み会は一気に私からのインタビューの場へと変わった。

A氏は英会話スクールにも通ったらしいが、スクールが役に立ったというよりも、毎日の英語の電話で鍛えられたそうだ。ただ、そのスクールは毎月イベントがあり、いろいろな出会いがあり楽しかったという。なんと顧客ニーズをつかんでいるスクールだろう!

A氏が言うには、中学校で習う英語で十分仕事になっている、日ごろ心がけていることは、間違ってもいいからまず英語で話すこと。間違えたら言い直せばいい。日本語だって正確な文章を話しているわけではない…… なるほどねぇ。日本人はどうしても文法を気にするからいけない。

第2のヒントはこれだ。

英語上達への道 その弐 - 間違いを気にするな、ただ話せ

英語を話す際に意識的に積極的に話していくマインドを持つことが必要なのだろう。

ここらあたり、コミュニケーション能力が日本人離れしているA氏だけのことはあると感じた。実は、A氏から海外営業の仕事すると聞いた2年前、すぐに英語が上達するだろうと私は確信していたのだ。というのも、A氏はa natural born talker(口から先に生まれる)だからだ(もちろんいい意味でっ!)。

私は常々、よくしゃべる人は英語、特にスピーキングの上達が早いと感じてきた。日本語と英語の違いがあるにせよ、話すという能力には共通の要素があり、日本語でおしゃべりな人は英語も話せるようになるのが早いのではないか。

だから普段話すのが好きで、話すと止まらない、人の話を聞くより自分が話すほうが楽だ、というあなた。あなたは英語のスピーキングの上達はきっと早いと思う。あなたはその英語スピーキングの能力をすでに持っていることに気づいていないだけなのだ。あとは英語に触れる機会、話す機会をたくさん作ることだけだ。

第3のヒントはつまりこれ。

英語上達への道 その参 - おしゃべりな人は上達が早い

逆に、普段寡黙な人が、英語になるとぺらぺらと話せるようになるとはあまり思えないだろう。私自身、無駄口はいっさい叩かない性格なので、スピーキングに関しては自分自身大きな期待はしていない。もって生まれた才能なのでいかんともしがたいのだが、運命に逆らうがの如くあえてこれに抗ってみたい。

こんな話があるではないか。英語になると性格が変わるという人。英語を話す際に、具体的な誰かでもいいし、架空の人物でもいいのだが、誰かをイメージしてその人になりきって話すといいのではないだろうか。自分の素を出す必要はない。ペルソナ(仮面)をかぶるのだ。

あとは話す内容を事前に準備しておく。事前の準備は何事においても大切だ。村上式によると自分に関する100の文章を作っておくことはご承知の通り。私はまだ1個しか作っていないが……。

英語上達への道 その四 - 寡黙な人は事前準備をしっかりと

さて、この4か条の中で最初の「毎日、英語で30分話す」が最重要なのではないかと思う。そこで次回は予定どおり、Skypeを使ったスピーキング実践法を考えてみたい。

著者紹介

本多義則 (Yoshinori Honda)

日立製作所勤務のIT系研究者。10年前に趣味と実益を兼ねて英語学習を再開以来、アナログからデジタルまであらゆるツールを駆使して英語学習に励んでいる。職場では「英語ができる男」と見られているが、実はそうでもない真の実力との差を埋めるべく、英語学習をやめられなくなっている。休みの日の朝は英語のメルマガ執筆にいそしむのが習慣。取得した英語関連の資格は、英検1級、TOEIC955(瞬間最大風速)、通訳案内士(英語)。座右の銘は「あきらめない限り必ず伸びる」。著書に『伸ばしたい!英語力―あきらめない限り必ず伸びる