今回は、東京・新宿にあるUCLA Extension Tokyo Centerのビジネス英語実践セミナーに参加したので報告しよう。UCLA Extensionとは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の社会人教育機関だ。UCLA Extensionの英語教育プログラムを桜美林学園の協力のもとに開設されたラーニングセンターがUCLA Extension Tokyo Centerである。
今回受けたビジネス英語実践セミナーは、チーフインストラクタのDavid Tedoneさんによる、ミーティングについてセミナーだった。UCLA Extensionが開設している「ビジネス英語コミュニケーションプログラム(BECプログラム)」という有料の講座の雰囲気もわかる内容となっていた。
UCLA Extensionでは、国際コミュニケーションにおいては3つの要素があるとしている。それは「異文化を認識する力」「基本的なビジネス知識」「英語でコミュニケーションする力」だ。今回のセミナーはこれら3つをカバーする内容になっている。
まず「異文化を認識する力」については、セミナーの前半で文化の重要性が語られた。BECプログラムでは異文化理解を重視しているという印象を受けた。異文化理解に関する代表的な書籍も紹介され、BECプログラムの中でもこれらの学説を取りあげるようだ。
「基本的なビジネス知識」については、いくつかのfinancial ratio(財務比率)の事例の紹介があった。common stock divident(普通株配当)/net income(純利益) = divident cover(配当倍率)などだ。理系の私にとっては"あなたの知らない世界"だが、ビジネス英語ではこのような財務の表現も学ぶ必要なのだろう。
そして「英語でコミュニケーションする力」で肝心のミーティングの話になった。まずは10個のフレーズが示された。たとえば、Thanks for coming everyone. Let's get down to business right away.(皆さん、来てくださってありがとう。さっそくビジネスに取りかかりましょう)に始まり、OK, let's move on to the next item on our agenda, project expenses.(OK、では、アジェンダの次の項目である事業費の見積もりに移りましょう)などである。
次に、効果的な会議のための10ステップが示された。カッコ内の単語は重要表現なので覚えよう。
会議の前に…
- 会議の目的(purpose)を決める
- 議長(chairpersonまたはchair)を選ぶ
- 議長がアジェンダ(agenda)を設定する
- 各項目(item)を議論する制限時間(time limit)を決める/議事録(the minutes)を書く人(minute-taker)を決める
会議中に…
- 議長が議題(issue)を示し、参加者(participants)が解決案(possible solutions)を提案し、良い面と悪い面を比較する(compare advantages and disadvantages)
- 時間がなくなりかけたら、議長は意見の一致を取ろうとする(reach a consensus)
- 意見が一致しなかったら、多数決で決めるか(take a vote)、さらなる検討がなされるまで決定を延期する
- アジェンダのすべての議題が議論されたら、議長は時間通り(on time)に会議を終える責任がある
会議の後で…
- 参加者は議事録を受け取り、正確さ(accuracy)をチェックする。
次に、参加者のグループで会議のシミュレーションを行った。私のグループでは私がchairとなり、「従業員のコンピュータ技術を向上させる方法」「売り上げが急落している会社のマーケティングマネージャとして取るべき対策」について10分間議論した。上のステップに従い、まず解決案を3つくらい上げ、良い面と悪い面を比較し、最後にコンセンサスを取るというステップを踏んで、見事、意見の一致を得ることができた。
解決案を挙げていくときに、ブレインストーミングという手法を使う。これはできるだけ多くのアイデアを挙げていく手法である。ただし、ブレストでは決して相手の批判をしてはいけない。他の人のアイデアに触発されて、新たなアイデアを思いつくことを狙ったものだ。
これらは会議の進め方のパターンであるが、こうしてまとまってやってみると「会議とはこう進めるものなのか」と腑に落ちる感じがした。普段の会議ではこういうステップを意識していないが、今度、日本語での会議でも取り入れてみたい。
このように非常に実りの多い1時間のセミナーであった。最後にUCLA Extensionで開講している「ビジネス英語コミュニケーションプログラム」を紹介しておくと、レベル別に5つのコースからなっており、すべてのビジネスパーソンのコミュニケーション力を高める内容になっている。サイトで公開されている受講者の感想などを読んでみると、本コースは「英語を学ぶ」のでなく、「英語で学ぶ」という内容のようだ。
著者紹介
本多義則 (Yoshinori Honda)
日立製作所勤務のIT系研究者。10年前に趣味と実益を兼ねて英語学習を再開以来、アナログからデジタルまであらゆるツールを駆使して英語学習に励んでいる。職場では「英語ができる男」と見られているが、実はそうでもない真の実力との差を埋めるべく、英語学習をやめられなくなっている。休みの日の朝は英語のメルマガ執筆にいそしむのが習慣。取得した英語関連の資格は、英検1級、TOEIC955(瞬間最大風速)、通訳案内士(英語)。座右の銘は「あきらめない限り必ず伸びる」。著書に『伸ばしたい!英語力―あきらめない限り必ず伸びる』