ブルース・バートンに学ぶ

今回の選書

１２人の漁師たちを優秀なマーケターにする方法　消費者心理をとらえる７つの秘密(ジョー・ヴィタリー 著 / 林田レジリ浩文 訳) フォレスト出版

選書サマリー

ビジネスは、私たちに多くのことを教えてくれる。リスクを負って夢に向かうこと、恐怖を乗り越えて感情をコントロールすること、苦手な人たちとも付き合うことなどを強制するからだ。

真剣に仕事に向き合えば、最高の学びが得られる。このような考え方をする人は多くない。だが、過去の広告手法を調べている時、同じような考え方をする人と巡り合えた・・ブルース・バートンだ。

彼は、自動車王ヘンリー・フォード、鉄鋼王アンドリュー・カーネギーと共に時代を席巻した伝説のマーケターだ。彼の足跡から「７つの成功の秘密」をまとめたので紹介したい。

この７つのうち、いくつかは「有効なテクニック」として聞いたことがあるかも知れない。だが、本来それは小手先のテクニックではない。しっかり学べば、人生を根本から変えるインパクトさえ持つ。

彼のやり方は、フォードやカーネギー、そしてクーリッジやアイゼンハワーなど歴代のアメリカ大統領たちの名前を売り出すことにも使われた。効果は、歴史が実証しているのだ。

はじめに「あなたのビジネスの新たな面を見せよ」だ。「あなたのビジネスが、お客様にもたらすものは何か？」「あなたのお客様の真のニーズは何か？」をもう一度考えて欲しい。

ニーズは、誰の目にも明らかなものだけではない。「誰も知らなかった新たな面」を、新しい切り口で見せることだ。そのために「人々が本当に欲しがっているものは何か」を考えることだ。

たとえば、化粧品会社が本当に売っているものはリップスティックではない。ロマンスだ。リップスティックは、それを手に入れるための手段に過ぎないのだ。

ビジネスを新たに定義し、いままで誰も考えてこなかった面を消費者に見せるために、化粧品会社はその製品を使うことで得られる、ロマンスにフォーカスをするべきなのだ。

人々が望むのは「安心」「セックス」「権力」「若さ」「富」「幸福」「安全」「健康」「名声」「愛」だ。あなたとあなたのビジネスは、人々のこうした「本当の」ニーズを満たすものであるべきだ。

「あなたのビジネスの新しい面を見せる」とは、他人に「あなたは、何をしている人なのか」を教えることだ。ほとんどのビジネスは、あなたがやっていることの、ほんの一部しか伝えていない。

広告を載せる際も、ほとんどの会社は「長い広告は読んでもらえない」という理由で、短いものを小出しにするが、それは間違いだ。自社のストーリーをすべて語るべきだ。

あなたが、自分のビジネスを語れば、顧客はあなたを身近に感じる。「あなたが何者か」を伝えることで、あなたのビジネスの新しい面が見え、より多くの「良い顧客」を得ることができるはずだ。

第二の秘密は「人々の"神"であれ」だ。人は「専門家」が好きだ。第一人者に惹かれる。あなたも権威のある人の言葉に耳を傾けるはずだ。それは、相手が第一人者だと思うからだ。

あなたの業界が何であれ、あなたは権威のある専門家になるべきだ。業界の「神」になるのだ。そのためには、本を書くことだ。不思議なことに、本を書くと誰でも途端にその道の第一人者と思われる。

ぜひ、自分の専門分野について本を書くことを考えて欲しい。その時「自分には何もない」などとは思わないことだ。自分が気がつかないだけで、素晴らしい能力があるかもしれないのだ。

人には、案外本にできるほどの「黄金のネタ」が埋まっているものだ。それが見つかれば、瞬間的に自分の信頼性を伝達できる「自著」という武器を手に入れることができるのだ。

本は、あなたの代わりに、あなた自身を宣伝してくれる広告代理店だ。ぜひ、執筆に挑戦してほしい。そして「権威ある専門家」を目指してほしい。それが、ビジネスを大きく加速してくれるはずだ。

選書コメント

マーケティングの本です。といっても「最新のマーケティング手法を紹介する」といった類の本ではありません。歴史的人物から、現代のビジネスに活かす知恵を探る本です。

学ぶのは、1920年代の古き良きアメリカで大活躍したマーケッター、ブルース・バートンです。彼の足跡にマーケティングの本質を見だし、ノウハウとして体系化、紹介するというユニークな試みです。

著者は、あの世界的なベストセラー『ザ・シークレット』にも登場するマーケティング・コンサルタントで、スピリチュアルの世界でも有名なジョー・ヴィタリーです。

本書を読んで、改めて感じたことは「偉大な人物の教えは、時代も国も問わない」ということです。そして「だったら、学ばなければ損だ」ということです。

たとえば「業界の神であれ」という教えが出てきます。これは、私たちが、これからビジネスを始める人にするアドバイス「専門家になれ」と同じことを言っていると解釈しました。

もちろん、時代が100年近く違いますので、アレンジは必要です。しかし、人間の本質が変わらない以上、原理原則は、古今東西、変わらないのだと思います。

なお、メルマガでは伝わりにくいのですが、書籍のほうは、かなり凝った構成になっています。各章の冒頭で、バートンの言葉の引用があり、それを著者が解説していくスタイルです。

また、著者がスピリチュアル界の著名人だからなのか、タイトルやフレーズ、寓話なども、宗教的な雰囲気を醸し出しています。

マーケティングに興味のある方や、独立を考える方、独立したばかりの方などには参考になる本だと思います。

選者紹介

藤井孝一

経営コンサルタント。週末起業フォーラム代表。株式会社アンテレクト代表取締役

1966年千葉県生まれ。株式会社アンテレクト代表取締役。経営者や起業家という枠にとどまらず、ビジネスパーソン全般の知識武装のお手伝いを行うべく、著作やメールマガジン、講演会、DVDなど数々の媒体を活用した情報発信を続けている。著書にベストセラーとなった『週末起業』(筑摩書房)はじめ、『かき氷の魔法』(幻冬舎)、『情報起業』(フォレスト出版)など。

情報提供: ビジネスパーソンの情報サイト「ビジネス選書&サマリー」