今回の選書

たった5秒思考を変えるだけで、仕事の9割はうまくいく(鳥原隆志) 中経出版

たった5秒思考を変えるだけで、仕事の9割はうまくいく(鳥原隆志) 中経出版

選書サマリー

「頑張っているのに評価されない」または「成果があがらない」、そういう人は、仕事のやり方が的外れなのかも知れない。だから、成果が出ないし、評価もされないのだ。

そういう人は、ほんの少し、普段の行動を変えることだ。それだけで、仕事の9割はうまくいく。

具体的には、行動する前「5秒」の思考を変えることだ。たった5秒だが、それだけの習慣が加わることで、あなたの仕事や人生が好転するはずだ。

はじめに、5つの力を身につけることだ。1つ目は「優先順位をつける力」だ。仕事の成果の大半は、優先順位設定で決まる。だから、取りかかる前に「何からすべきか」と考えるのだ。

どんな仕事にも制限時間を設けることだ。人は、時間の制約があるから考えるし、制約がなければ考えない。だから、期限がない仕事には作業の終了時間を決める。これが大前提だ。

そうすれば「何からすべきか」と考えるようになる。重要なものから手をつけていくことができれば、これだけで大きく行動に変化をもたらすことができるはずだ。

加えて「本当に、それからすべきか」「今やるべき仕事なのか」と考えることだ。「ほかにするべきことがあるのでは?」と考えれば、本来やるべき仕事が見えてくるはずだ。

2つ目は「問題発見力」だ。「問題解決」は、解決することよりも、「何を解決すべきか」を把握することが重要だ。仕事のできる人は、解決すべき問題を整理してから、本当の問題を明確にする。

なぜなら、本当の問題を解決しないと、同じトラブルが起こるからだ。「これは解決せねば」と感じている問題が、本当に解決するべき問題であるとはかぎらない。これに気づくことが大事だ。

「本当にそれで問題が解決するのか」を5秒だけ考えるようにする。そうすると、これから起きる問題の多くを事前に回避することができるようになるはずだ。

3つ目は「思いやりの力」だ。忙しいと「自分中心」になりがちだ。「自分の言葉や行動を受け取った人が、どう思うか」を考えるべきだ。「自分が言いたいこと」でなく「相手が望むこと」を言うのだ。

仕事を頼む前は、相手の立場で考える。自分の願望や思いをぶつけるだけでは、相手に理解してもらえない。自分の言葉や行動が、相手にどう映るのかを考えることこそ、自分の願望を実現する近道だ。

4つ目は「自己分析力」だ。たとえば、叱られたら「なぜ叱られたのか」を考える。叱られるのは、改善すべき点があるからだ。必ず、あなたを成功に導く改善点が見つかるはずだ。

叱られたときこそ「考えるチャンス」なのだ。中には、あなたに考えさせる目的で叱る人もいる。叱るほうにもパワーが必要なのだ。あなたは、そのパワーをマイナスでなくプラスに変化させるべきだ。

5つ目は「確認する力」だ。「自分は信用できない」から「本当にそれで大丈夫か」と確認するのだ。

「自分が一番信用できる」などと言って確認を怠る人もいるが、そういう人ほど、自分を疑うべきだ。「自分は信用できない」と考えるからこそ、確認作業ができるのだ。

確認は、ミスが起こる確率を最小化するために必要な行動だ。その行動を引き起こすためには、「本当にそれで大丈夫か」と考えるステップが必要になのだ。

また「任せる」と「放置する」は違う。たとえ人に仕事を任せても、進捗の確認は、任せた人の義務だ。任せっ放しで確認しないのは、放置だ。そこからミスが発生すれば、原因はあなたにある。

ここでは、初級編として、5つの考える力を紹介した。まずは、この力を身に着け、あなたも仕事ができる人に近づいてほしい。

選書コメント

行動する前に、ほんの少し考えることを推奨し、そのやり方を教えてくれます。著者は、日本におけるインバスケット思考の第一人者です。

インバスケットとは、アメリカ生まれのトレーニングツールです。架空の人物になり、限られた時間内により多くの案件を、正確に処理するビジネスゲームです。社内研修でやった人もいるはずです。

そのとき、明暗を分けるのが、アクションを起こす前に、優先順位や段取りを、ちょっと考えるかどうかです。焦って、いきなり動き出すと、結果的に時間がかかり、たいした成果が上がりません。

本書では、そんなインバスケットの発想がベースです。はじめに職場でありがちな問題を示し、原因を分析した上で「どうすれば、よかったのか」を解説してくれます。

著者も指摘する通り、職場で成果がでないのは、誰かのせいではありません。職場の風通しが悪いせいだったり、上司の能力不足のせいだったり、色々な要因が関係しています。

でも、職場や、上司の行動や考え方を変えることはできません。まして、権限の与えられていない、若いビジネスパーソンならなおさらです。

そこで変えられるものは、唯一、自分の考え方と行動だけです。そんな唯一、変えられる自分を「どう変えるか」で、未来が決まってしまいます。

しかし「何を、どう考えたらいいのかわからない」というのが本音だと思います。そこを、本書は教えます。仕事を始めたばかり、または、これから仕事を始めるビジネスパーソンに特にお勧めします。

選者紹介

藤井孝一

経営コンサルタント。週末起業フォーラム代表。株式会社アンテレクト代表取締役

1966年千葉県生まれ。株式会社アンテレクト代表取締役。経営者や起業家という枠にとどまらず、ビジネスパーソン全般の知識武装のお手伝いを行うべく、著作やメールマガジン、講演会、DVDなど数々の媒体を活用した情報発信を続けている。著書にベストセラーとなった『週末起業』(筑摩書房)はじめ、『かき氷の魔法』(幻冬舎)、『情報起業』(フォレスト出版)など。

情報提供: ビジネスパーソンの情報サイト「ビジネス選書&サマリー