今回の選書

「仕事ができる」と言われる人の13の行動習慣(藤田聰) ぱる出版

「仕事ができる」と言われる人の13の行動習慣(藤田聰) ぱる出版

選書サマリー

「サラリーマン」は旧い時代の産物となった。これからは「ビジネスプロフェッショナル」を目指すべきだ。専門的技能を有し、周囲の期待以上の成果を出し続ける、「仕事のできる人」であるべきだ。

「仕事のできる人」になる上で重要なのは行動習慣だ。なぜなら、能力とは行動習慣の結果だからだ。毎日の習慣や、クセが積み重なって能力になるのだ。

まず、これから述べる行動習慣を実行することだ。そして3日、1週間、1ヵ月、3ヵ月と習慣化することだ。3ヵ月当たり前のようにできるようになれば、習慣化した状態であり、能力と呼べる。

行動習慣を身に着けるために、まず「できる人」の一日単位の行動に注目してみたい。出社前、出社中、出社後、退社後に分けて考えてみたい。

はじめに出社前だ。できる人にとって、早起きは必須の習慣だ。朝起きて、まず10分程度のストレッチ体操をするなり、熱いシャワーを浴びるなどして、頭をフル回転させる前提を整えることだ。

新聞やインターネットやテレビのニュースで情報収集したり、1時間程度余裕があれば、資格取得の勉強や英語など、自己啓発の時間に当てることだ。

家庭は全てのプラットフォームだから、家族はとのコミュニケーションも重要だ。帰宅時間はバラバラなので、せめて朝の食卓は家族が一同に会するようにセットしたい。

また、できる人は朝晩2回の移動時間を上手に活用する。まず、できるだけ歩くことだ。優秀な人には、健康のために、歩数計を常に持ち歩き、一日1万歩を課している人もいる。

電車等での移動中も活用するべきだ。新聞や本を読む、スマートフォンで情報収集をする、英会話の勉強をするなど、短時間であっても、できることは色々あるはずだ。

できる人は、出社時の行動習慣も違うものだ。まず、始業1時間前に出社することだ。始業前なので、お客様や社内からのメールや電話は、少ない。そのため、生産性の高い仕事ができる。

また、早く出社することで、周囲から仕事に対する姿勢の表れというポジティブなイメージを持たれるはずだ。

出社したら、本日課せられた仕事の再確認、優先順位付け、工数の設定を行う。これをTO DO リストにしておく。生産性を高めるには、それぞれのタスクの所要時間を決めておくことだ。

ランチタイムも情報収集の時間にするべきだ。自分を進化させるには、異質の人と交わることが重要だ。意識して多様な人との食事をセッティングするように心掛けるべきだ。

残業は極力しないことだ。できるビジネスパーソンは、就業後は自分自身の付加価値をつける時間帯に費やすものだ。その時間帯は、曜日毎に規則的にスケジュールすることをお勧めしたい。

たとえば、月・火曜日を休肝日にしたら、月曜日は自己啓発、火・木曜日はスポーツクラブ、水・金曜日は人脈形成、土日は家族との時間というように、自分なりのスタイルを確立することだ。

中長期的な習慣も考えるべきだ。できる人は中長期的な目標を持つ。10年後の理想像、在りたい姿、目的地を具体的にイメージしている。その中間地点として、5年後、3年後とイメージしていくのだ。

次に、今の自分とのギャップを考え、近い目標である1年後、3年後というように、今度は近い方から遠い方へ戦略を立て、アクションプランに落とし込んでいくのだ。

つまり、短期、1年スパンの職務上の目標と同時並行で、中長期スパンのマイゴールを保有しているのだ。2軸で目標を追いかけることで意識的な付加価値作りができる。これを適宜チェックするのだ。

これらの習慣を自分自身と重ね合わせ、参考になるものは自分の習慣として取り込んでほしい。その積み重ねが、やがて大きな能力差となって現れるものなのだ。

選書コメント

「仕事ができる」人になるために、どんな能力を高めればいいのか、そのために、日々何をすればいいのかを、具体的に教えてくれます。できる人の姿が、明確にイメージできるようになります。

著者の藤田さんは、10年以上前に「人材の市場価値」という概念を世に説いた方で、それを測定する「市場価値測定テスト」を開発した、いわば「人材の専門家」です。

その専門家が、自らの仕事を通して得たたくさんの事例から、できる人に共通する能力「ビジネス基礎力」に着目し、それを身に着けるための行動習慣としてまとめたものです。

ビジネスの環境が変わり、かつては企業内研修や、先輩や上司に日常業務の中で鍛えられた基礎力も、今では自分で意識して習得しなければ、身につかない時代です。

ビジネスパーソンの能力開発というと、一般には専門性の習得に重きが置かれます。しかし、基礎力こそ、どんな会社、どんな仕事にも必要不可欠な能力です。

これを考えると、転職、独立が当たり前の今だからこそ、まずは基礎力を鍛えるべきです。本書は、そんな基礎力に照準を当て、それを習得するために必要な、すべてをまとめたものです。

一般に、仕事力の本というと、経営者などが個人的な体験を書き連ねたものが一般的です。しかし、本書はその手の本とは一線を画します。プロが、実務で体系化した本物のノウハウです。

気づき、測定法、行動習慣、要件など、著者のノウハウの核心に迫ります。それを体系的、かつコンパクトにまとめてあります。著者自身が指摘する通り、人材の市場価値の集大成と言えそうです。

今の会社で頑張りたい人も、いずれ転職、独立したい人も、ビジネスのプロとして活躍したいすべての人にお勧めです。

選者紹介

藤井孝一

経営コンサルタント。週末起業フォーラム代表。株式会社アンテレクト代表取締役

1966年千葉県生まれ。株式会社アンテレクト代表取締役。経営者や起業家という枠にとどまらず、ビジネスパーソン全般の知識武装のお手伝いを行うべく、著作やメールマガジン、講演会、DVDなど数々の媒体を活用した情報発信を続けている。著書にベストセラーとなった『週末起業』(筑摩書房)はじめ、『かき氷の魔法』(幻冬舎)、『情報起業』(フォレスト出版)など。

この記事は藤井孝一氏が運営するビジネス書を読みこなすビジネスパーソンの情報サイト「ビジネス選書&サマリー」」の過去記事を抜粋し、適宜加筆・修正を行って転載しています。