Windows 10 バージョン1607(Anniversary Update)からサポートしたWSL(Windows Subsystem for Linux)。その結果としてWindows 10上でもUbuntuなどのLinuxディストリビューションが動作し、各種コマンドが利用可能になった。本連載ではWSLに関する情報を紹介する。

WSL用openSUSEがWindowsストアに登場

Microsoftは2017年7月19日(以下すべて現地時間)、openSUSE Leap 42をWindowsストアでダウンロード可能にしたことを公式ブログで発表した。本連載でも何度か紹介してきたように、Windowsストアには登録済みだったものの、今回の発表からダウンロードボタンが現れたことを筆者も確認している。

Windowsストアに並ぶ「openSUSE Leap 42」。こちらのURLからダウンロードできる

Windowsストア版Linuxディストリビューションは、Windows 10 Insider Preview ビルド16215以降が必要なため、執筆時点で最新のWindows 10 バージョン1703(Creators Update)で試すことはできない。そこで今回は、Windowsストア版openSUSEの概要を紹介する。

そもそもopenSUSEはUbuntuやDebian GNU/Linuxと同じく、オープンソースベースでコミュニティが開発しているLinuxディストリビューションの1つ。Novellがスポンサードしているため、先進的なソフトウェアを積極的に採用するFedoraと、安定性を重視した企業向けLinuxディストリビューションであるRed Hat Enterprise Linuxの関係を想像すると分かりやすい。

openSUSEは業務でSLES(SUSE Linux Enterprise Server)を利用する開発者が、本番環境に展開する前の開発環境として用いるのが一般的だ。今回のWindowsストア版openSUSEの登場により、仮想マシンやコンテナーを用いずともWindows 10上で開発環境を得られることになる。

なお、5月11日の発表時にMicrosoftは、FedoraのWindowsストア版もリリースすると述べていたが、同社によれば「Fedoraチームはパッケージのテストを行っている。まもなくストアで公開する予定だ」と説明した。

初回起動時は他のLinuxディストリビューションと同じく展開処理に時間を要し、ユーザーおよびパスワードの基本設定を行う

openSUSEを起動してみると、至極当然なのだが実機や仮想マシンにインストールした状態と同じである。強いて違いを挙げれば、見慣れたKEDのデスクトップが現れないことくらいだろうか。ちなみにWindowsストア版Ubuntuと同じく、環境変数LANGは「en_US.UTF-8」のため、必要な場合は「ja_JP.UTF-8」に変更しておこう。

Windowsストア版UbuntuとopenSUSEを並べて起動した状態

改めてLinux側のデスクトップ環境を使う必要はないものの、Ubuntuと同じく環境変数DISPLAYの設定を事前に行い、Windows 10側でVcXsrvなどのXサーバーを起動すれば、openSUSEのGUIアプリケーションも難なく起動する。

openSUSE上でgvimを起動してみた。特に問題なく動作する

いくつかのシェルスクリプトも実行してみたが、至極当然ながらこちらも問題はない。これでUbuntu、openSUSE、そして2017年の夏が終わるまでにはFedoraと、クセも特徴も異なるLinuxディストリビューションがWSL上で動作可能になるのは確実だ。Visual Studioのクロスプラットフォーム開発環境も充実し、Linuxディストリビューションの選択肢が広がると同時に互換性も着々と向上している。Windows 10上で開発を行っている開発者に対して、多くの福音をもたらすことになるだろう。

「/etc/os-release」を確認したところ、Leap 42.2であることが確認できる。なお、「etc/SuSE-release」は本バージョンでも残っていた

阿久津良和(Cactus)