この解説は、SignNowの創設者であるクリス・ホーキンズ(Chris Hawkins)によるものです。
The Conference BoardのTotal Economy Databaseは最近、「グローバル規模での生産性の伸びは鈍化している」という報告を行っています。いったい何が起きているのでしょう?アメリカは「雇用なき景気回復」に陥っているのでは?ソフトウェアが世界のあらゆる領域に入り込んでいる現在、誰も仕事をしなくてよい未来へと向かっているのではないのでしょうか?しかし経済の実体を見てみると、力強い回復基調にはない一方で、マクロでは堅調なトレンドが維持されています。つまり、テクノロジによって生産性は毎年向上しているのです。
それではまず、誤解を解くために用語について説明しましょう。
労働生産性とは何でしょうか。労働生産性とは、1時間あたりの労働によって生み出される実GDPを指します。したがって、株式市場で使用されるGDPとは異なります。次のグラフが示すように、株式市場の動向はGDPとGDP成長率から大きく乖離することがあります。
出典: Seeking Alpha |
ここ数ヵ月の間、株式市場は約30%という大幅な成長を遂げ、GDP成長率は4%と堅調ですが、労働生産性の伸びはわずか1.7%に留まっています。
では、「雇用なき景気回復」とは何でしょうか。理論上は、経済成長が回復したにもかかわらず雇用が創出されない状態を意味します。現在の経済状況を考えてみれば、生産性は向上しているのですからこれは当てはまりません。過去数年の労働市場の回復に関する統計をみると、オークンの法則の通りになっています。つまり、これまでの景気回復での成長率と比較すれば、もはや「雇用なき」状態ではないわけです。
では、2008年の不況はなぜ「雇用がない」と考えられたのでしょうか。一番の相違点は、GDP成長率が鈍化したことです。実際、不況後の1981年にGDP成長率は5.9%へと回復しており、現在よりもおよそ50%速い速度で回復していたことになります。
したがって現在の景気回復は、「テクノロジによる堅調な生産性向上に支えられた景気回復がこれまでよりも遅いペースで進んでいる」というのが事実であり、雇用なき景気回復ではありません。1950年代から、労働生産性は着実に向上を遂げてきました。テクノロジは人間の労働効率を高め、代替的な労働力となることにより、小さな労力でより大きな成果を達成することに貢献してきました。そしてこれは一時的な増大ではなく、ムーアの法則が示すような集団的努力の成果なのです。労働生産性が2%で継続的に成長すれば、およそ36年後には、現在の生活水準を、人間が労働することなく実現できる計算になります。
出典: 全米経済研究所 |
以上の内容には、テクノロジ業界に身を置く人であれば誰もが納得するでしょう。人間が処理できる作業量と作業速度はすさまじい勢いで向上しています。今では場所や時間を問わずに仕事ができますし、作業オートメーションツールによって人々は単調な作業から解放されています。高度なITインフラの導入コストは低減を続けており、今後も大幅なコスト低減が実現されるでしょう。
このようなトレンドから本当のメリットを得るのは、テクノロジに投資する企業です。従業員の生産性を毎年着実に向上することに取り組んでいない企業は、すぐに競争力を失ってしまうでしょう。
生き残るためには、人間が行っている作業の中で自動化できるものを探し、テクノロジで自動化することが必要です。
クリス・ホーキンズ(Chris Hawkins)はSignNow(電子署名とワークフォースオートメーションツール)の創設者であり、現在はバラクーダネットワークスのGMを務めています。バラクーダネットワークスは、あらゆる規模の企業に使いやすいITソリューションを手頃な価格で提供することに取り組むテクノロジのリーディングカンパニーです。
※本内容はBarracuda Product Blog 2014年2月14日 Productivity Growth Relentlessly Grows Through Technology を翻訳したものです。
クリスティーン・バリー(Christine Barry)(バラクーダネットワークス、チーフブロガー)
本稿は、バラクーダネットワークスのWebサイトに掲載されている『バラクーダラボ』3月11日付の記事の転載です。