先週、アンドリュー・ブラウン(Andrew Brown)が書いたOffice 365に関するブログ記事はお読みいただいたでしょうか。Microsoftは先日、Office 365インポートサービスを発表し、現在プレビューが提供されています。そこで筆者は、Office 365インポートサービスにはどのような機能があるのか、Office 365のユーザにとってどのようなメリットがあるのかを検証したいと思います。

Office 365インポートサービスとは何か

Office 365インポートサービスとは、簡単に言えば、PSTファイルを使ってメールをOffice 365(Exchange Online)メールボックスにインポートするサービスです。このサービスは「ドライブの配送(Drive Shipping)」という方法で提供されますが、実際には2つのオプションから選択できます。Office 365 Import Service ... drive shipping

移行するデータが大量に存在する場合、PSTアーカイブファイルをハードドライブにコピーし、それを近くのMicrosoftのデータセンターに直接配送します。ドライブが到着すると、PSTファイルがデータセンター内のサーバにコピーされ、ファイルに格納されているメールがユーザのExchange Onlineメールボックスへとインポートされます。

データ容量が少ない場合には、PSTファイルをAzureストレージアカウントにアップロードします。そして、ファイルに格納されているメールがメールボックスへとインポートされます。

現在、公式にはこのサービスは「プレビュー」モードとなっていますが、Microsoftのユーザであれば誰でも利用できます。このサービスは、当面は無償で提供される予定ですが、プレビュー期間が終了すると料金が発生する可能性があります。

今回の初期リリースはPSTファイルのみが対象となりますが、今後のリリースではこれ以外のタイプのデータもサポート対象に加わる予定です。

Microsoftがこのサービスを提供した理由

Microsoftには、顧客やパートナーから「大量のデータをOffice 365にアップロードしてExchange Onlineにインポートする作業が非常に煩雑で大変だ」というDrive Shipping to circumnavigate painfully slow uploads to Office 365フィードバックが数多く寄せられました。このサービスは、このような要望に応えることを目的にしています。Microsoftは、「移行の支援サービスに対する要望は常に寄せられていたが、サービスの完成に数年を要した」としています。

このサービスは、Microsoftの社内データセンターネットワークを使ってデータをExchange Onlineにロードすることにより、「スループットの大幅な向上と遅延時間の短縮が可能になる」とされています。ただし、サービスの全体的なパフォーマンスについては信頼性の高い統計データはまだなく、他の移行方法と比較できません。

Microsoftは、「無償で提供しているPST Captureとインポートサービスは併用可能」としていますが、実際のところはわかりません。というのは、この2つのツールは統合されているわけではなく、PST Captureとインポートサービスには機能の重複があるからです。

サービスのしくみ

このサービスを利用するには、最初の手順として、Office 365にインポートしたいPSTファイルをすべて一箇所にまとめる必要があります。PSTファイルが大量に存在する環境、PSTファイルの数を把握できない環境、PSTファイルの格納場所を把握できない環境では、この作業に非常に長い時間がかかる可能性があります。

第2の手順として、各PSTファイルのデータのインポート先を設定します。具体的には、CSVファイルを作成し、PSTファイルとターゲットメールボックスを紐付けします。Outlookプロファイルにアタッチされておらず所有者が不明なPSTファイルが存在する場合には、この作業にも時間がかかってしまうでしょう。

物理ドライブを配送する場合には、第3の手順として、ドライブを準備してPSTファイルをすべてコピーします。特殊なデータ形式でコピーしなければならないので、Microsoftからツールをダウンロードしなければなりません。データをすべてドライブにコピーしたら、Office 365にログインし、インポートジョブを作成します。そして、配送会社を手配し、Microsoftのデータセンターへの配送を依頼します。

ネットワーク経由でPSTファイルをアップロードする場合には、第3の手順として、Office 365アップロードストレージアカウントをAzureで作成し(この作業は無料です)、Microsoft Azure AZCopyツールを使ってPSTファイルをすべてAzureにアップロードします。データのアップロードが完了したら、Office 365にログインし、インポートジョブを作成します。

データがMicrosoftのデータセンターに到着すると(ドライブの配送またはAzureのアップロード)、Office 365によってPSTファイルが順次開かれ、内容が指定のメールボックスにコピーされます。このプロセスの開始後は、ユーザがプロセスを制御することはできません。Office 365 Admin Centerで、プロセスの進捗と発生したエラーを確認することができます。

このサービスは便利なのか?

以上のように、Microsoftのデータセンターに送信するデータを準備するために、手動で行わなければならない作業がいくつかあります。特に大規模な環境を持つ企業にとっては、時間とコストがかかってしまうでしょう。

これでは、PSTファイルの問題を解決する包括的なソリューションとはいえません。Office 365インポートサービス以外にも、さまざまな機能セットを備えたソリューションが提供されています。PSTファイルをエンドユーザやネットワーク上で検出および収集した時点で、他のソリューションの方が適しているとわかるケースもあるでしょう。

Office 365インポートサービスについては詳しくは、MicrosoftのTechNet記事をご覧ください。

次回のブログ記事では、Office 365インポートサービスの欠点を詳しく検証し、バラクーダネットワークスのPST Enterpriseをはじめとするサードパーティツールが適しているケースを解説します。

※本内容はBarracuda Product Blog 2015年6月15日Office 365 Import Service – The What, Why and How …を翻訳したものです。

Peter Mullens

本稿は、バラクーダネットワークスのWebサイトに掲載されている『バラクーダラボ』7月3日付の記事の転載です。