今日は、バラクーダネットワークスのノッティンガム(イギリス)オフィスで勤務するソフトウェアエンジニア、ジョナサン・ファーンズワース(Jonathan Farnsworth)をご紹介しましょう。ジョナサンは、2008年の3SPの買収を契機にバラクーダネットワークスに入社しました。3SPでは、PhD取得を目指しながらパートタイムの社員として働いていました。買収のすぐ後、ジョナサンは論文を書き上げ、Barracuda SSL VPNの常勤エンジニアになりました。
ジョナサンは、仕事と遊びの両方に全力投球するタイプです。旅行、スキューバダイビング、スキー、登山が趣味で、最近は、カシミールで壮大な冒険を楽しみました。カシミールは探検的登山で有名です。探検的登山とは、標高4,000メートル(13,000フィート)級の山に登り、前人未踏の場所を探検する登山です。ジョナサンにとって登山とは、肉体的な挑戦と未知なる領域への探究心を満たすスリリングなスポーツです。ここでは、ジョナサンから直接聞いた体験談をご紹介しましょう。
今回、私は探検的登山に初めて挑戦しました。このタイプの登山には、満たさなければならない前提条件がいくつかあります。たとえば、標高6,000メートル(20,000フィート)での登山経験が必要になります。また、6,000メートル級の登山をするには、4,000メートル級の登山経験とスキルが必要です。
登山の趣味は、高校生の頃に始めたハイキングの延長です。スキルを積んで自信が付いてくると、数日泊まりがけのハイキングへと移行し、ウィンターハイキング、さらにスクランブリングを始めました。2010年、レーニア山(ワシントン州)で登山セミナーを受講し、標高の高い山に挑戦するためのスキルをすべて学びました。たとえば、ロープワーク、クレバスからの救出テクニック、セルフアレスト、スノーキャンプなどがあります。そして2012年、学んだスキルをデナリ(マッキンリー山)で実践してみました。デナリは標高が6,194メートル(20,320フィート)ある北米最高峰です。14日で登頂を成功させ(これはかなり短い日数です)、3日で下山しました。
今回カシミールで挑戦した探検的登山では、2つの未踏峰の登頂を果たしました。3番目の登頂にも挑みましたが、山頂からおよそ100メートル(300フィート)の地点で、危険だと判断し断念しました。このような山では、地図、道、クレバスマーカーなど何もないので、進むべき道は誰にもわかりません。したがって、ベースキャンプから偵察ハイクを行い、山頂までの最適な道筋を考えてから行動します。
今回の登頂では、全行程に25日かかりました。ロンドンから飛行機でデリーに入り、次の日にカシミールに移動しました。カシミールで2日間過ごして高地順応し、トレッキングを開始しました。その後14日かけ、標高5,000メートル(17,000フィート)地点にあるベースキャンプに到着しました。距離にするとわずか60~70マイルですが、高地順応のためにゆっくりと進む必要があります。ベースキャンプからは、山頂に1日で到達できます。もちろん非常に大変な1日です。山頂アタックの日は午前2時か3時に起床し、朝食を食べてから出発です。12時間後には、疲労困憊の状態でしたが無事キャンプに戻ることができました。
今回の登山では、「もうだめだ」という状況に何度か遭遇しました。まず、ロンドンを出発する飛行機に乗り遅れそうになりました。出発のわずか2分前に滑り込んだのです。しかし最大のピンチは、4日目の体調悪化です。普通の発熱とちょっとした下痢でしたが、標高13,000フィートのテントの中ではとてもつらかったです。キャンプで1日長く過ごしましたが回復しなかったため、一番近い町に引き返して午後は病院で治療を受けました。安静時の脈拍が116、酸素飽和度が87%にまで低下していましたから、酷い状態でした。さらに2日間町で過ごしましたが、その町も標高が十分に高かったので、高地順応を維持できました。回復後、トレッキングを再開しました。埋め合わせが必要なのは4日間だったので、登頂成功の可能性は十分にあったのです。休養日をなくし、1日の距離を少しずつ伸ばすことで、結局は当初のスケジュールよりも1日遅れでベースキャンプ入りできました。ベースキャンプで6日過ごし、いよいよ出発です。ベースキャンプに到着してからは幸運に恵まれ、最初の山にはなんとか2日かからず登頂できました。すぐに次の山へと向かったのですが、山頂のすぐ手前で引き返すことになり、1日休養した後で2番目の登頂を果たしたのです。
「登山を続けるモチベーションは?」と聞かれることがあります。足を前に踏み出すたびに、誰も行ったことのない場所へと1歩1歩進んでいると思うことが大きなモチベーションです。また、山頂に立ったときの高揚感もモチベーションの1つです。山頂では息を飲む絶景が広がっていました。北側には深い谷が続き、雪が積もったカラコルム山脈の峰が連なります。尾根からは、ほとんど誰も見たこのない爽快な谷が広がっていました。もちろん、登山には、モチベーションだけでなく訓練も必要です。まず、山では疲労感や荷物の重さに悩まされます(不要なものを一切なくしても、高地では重さを感じます)。そして、徐々に悲惨な気分になってきます。3歩すすむだけで呼吸を整えなければならないのですから。孤独感との戦いもあります。5人のメンバーがロープでつながっているものの、お互いが10メートル/30フィートほど離れた状態で進みます。そしてそのうち、下山後のことを想像し始めます。何を食べようか考えたり、水道から流れる水を想像したり、清潔な下着を身につけ、本モノのお風呂に入り、快適なベッドで寝たい、などと考えるわけです。
他にも、登山中に恋しくなるものがあります。私の場合は家族です。家から遠く離れた場所に何週間も出かけるような危険な登山の場合は、特に家族に会いたくなります。アラスカとカシミールには電波は届きませんが、アラスカでは衛星電話があったので、結婚記念日や山頂から妻に電話できました。カシミールでは衛星電話を使用できなかったので、まったく連絡できませんでした。もう1つ、登山中に恋しくなるのは、蛇口から流れる水道水です。下山して日常生活に戻ると、蛇口をひねるだけで水が出ることに驚いてしまいます。このように探検的登山では、モチベーション、訓練、集中力の3つはすべて重要な要素だといえます。
探検的登山に挑戦するには、身体とメンタルのトレーニングに数年を要します。また、日常的な体力維持と筋力アップも欠かせません。私が勤務するノッティンガムのオフィスでは、ランチタイムにグループでジョギングをしているのですが、体力維持に大変役立っています。また、水泳とサイクリングも定期的に行っています。足首とバックパックにウェイトを装着して犬の散歩に行きますし、スケジュールが合えばハイキングや登山にも出かけます。さらに、ロープワークの練習も欠かせません。大きなグローブを装着した状態で酸素の少ない場所で的確に作業を行うには、何も考えずに手足が動く状態にしなくてはなりません。つまり、動きを身体に記憶させる必要があるのです。平地なら数秒でできる作業が、標高6,000メートルでは数分もかかります。それから、登山中はどうしても体重が減るので、数キロ体重を増やすという楽しみもあります。
私には、まだ登っていない山がたくさんあります。グリーンランドに行ってみたいし、エベレストも素晴らしいでしょう。でもまずは、登山者の少ない8,000メートル級の山、シシャパンマのような山に挑戦したいと思っています。いずれにしても、雪の多い山を選ぼうと思います。カシミールの雪線は5,000メートルだったので、雪が恋しかったです。
もしも、山に登りたいと考えている方がいたら、是非挑戦してみてください。肉体的にも精神的にもつらい経験ですが、それだけの価値はありますし、人があまり行かない場所に行ってみるチャンスでもあります。誰にでも登れる難易度の低い山はたくさんあります。標高の低い山に慣れたら、レーニア山やアダムズ山などの登山ツアーに参加してもよいでしょう。また、登山セミナーに参加して、そこからレベルアップを図ることも可能です。登山関連の情報としては、『Mountaineering: The Freedom of the Hills』という書籍もお勧めです。
ジョナサンが登山で撮った写真は、こちらのPinterestボードでご覧いただけます。
ジョナサンとつながりたい方は、Google+(google.com/+JonathanFarnsworth81)からどうぞ。
※本内容はBarracuda Product Blog 2015年5月20日Meet Jonathan Farnsworth, engineer, mountaineerを翻訳したものです。
クリスティーン・バリー(Christine Barry)(バラクーダネットワークス、チーフブロガー)
本稿は、バラクーダネットワークスのWebサイトに掲載されている『バラクーダラボ』6月1日付の記事の転載です。