先日、バラクーダネットワークスに興味深い問い合わせがありました。相談者はある有名大学のITディレクタでした。「学部、学生、スタッフをすべてOffice 365に移行したのですが・・・」というので、PSTファイルについて尋ねたところ、「大量にありましたが移行しました。MicrosoftのツールでPSTファイルもすべてクラウドに移行しました。現在は、クラウド上にPSTがすべて保存されています」とのことでした。

移行作業は社内スタッフではなく、Microsoftの指示に従ってPST Captureを使用したそうです。そこで、PST Captureのしくみと、Microsoftはこのツールを提供しているが実際に使用するかどうかはユーザ次第であることを説明すると、しばらく沈黙が続きました。このITディレクタは、PSTファイルがあちこちにまだ残っていることに気付いたのです。そしてこれが、問い合わせの理由でした。

データ管理のまたとないチャンス

仮想デスクトップインフラへの移行、クラウドへのメールの移行、ローカルOfficeアプリケーションからOffice 365 Webアプリケーションへの移行など、移行にはさまざまなタイプがありますが、いずれの移行作業もデータをクリーンアップして最適な管理状態を取り戻す絶好のチャンスです。

新品のシステムに投資しても、ビジネス価値のない情報を保存したり、価値ある情報を取りこぼしては意味がありません。情報管理プロセスの効率化には、データをクリーンアップして、移行/保持の対象となるデータを選別する作業が役立ちます。

その良い例がPSTファイルです。VDI、Office 365やExchangeオンラインへの移行、さらにはBYODイニシアティブといった戦略的ITプロジェクトの事前準備または実行中には、PSTファイルの特定と管理を行う必要があります。

PSTファイルは自動的に移行されない

Exchange 2010から自動アーカイブ(つまりPSTファイル)は使用されなくなり、オンラインアーカイブメールボックスの作成機能が提供されました。こうして、PSTファイルを移行するシンプルなツール、「PST Capture」がリリースされました。Microsoftは、すべてのPSTファイルをExchangeに移行する方法や、新しいアーカイブメールボックスの使用方法についてブログや技術情報の記事で情報提供しています。PST Captureは無償のツールですが、サポートがありません。

PST Captureは、小規模な環境でのPSTファイル移行には対応できますが、堅牢性に優れた自動ソリューションではありません。機能的な制限が多く、PSTファイルが存在するマシンすべてにクライアントソフトウェアをインストールする必要があります。また、手作業で実行しなければならない操作も数多く存在します。PSTファイルのディスカバリと移行を経験したIT組織であれば、その大変さを理解いただけるでしょう。移行を管理するコンサルタントを依頼しても、例外処理、ファイルの格納場所、ユーザの移行順序など、移行作業全体に適用するルールを設定しなければなりません。つまり、バックグラウンドで自動実行できるような作業ではないのです。

そしてもちろん、Office 365への移行もMicrosoftの機能で自動実行できる作業ではありません。

たぶん問題はそのうち「解決」する?

先ほどの問い合わせに話を戻すと、ITディレクタは、「PSTファイルに関する問題が報告されなくなったので、すべてのPSTファイルはユーザデータと共にクラウドに保存されていると思っていました」と語っています。問題が発生しなかったのは、古いPSTファイル内の情報にはビジネス価値がほとんどまたはまったくなかったからでしょう。実際この大学では、Office 365への移行前にメールボックスクォータを削除しており、ユーザは古いメールの保管方法としてPSTファイルを使わなくなっていました。

したがって、「PSTファイルにはユーザが必要とする情報は格納されていない」と判断したのです。PSTファイルがクラウド内にないことはわかっていましたが、最近ユーザからPSTファイルに関する問い合わせがないので、PSTファイルを必要とするユーザがいなくなったのだと考えていました。では、この状態のままで何か問題はあるのでしょうか?

持続的リスクを無視してはならない

この大学が解決すべき課題は、PSTファイルに格納されている未管理データに伴う法的リスクと責任です。

公立大学は、訴訟でのeディスカバリと情報公開請求(FOIA)でのeディスカバリという2つの対策を口実必要があります。FOIAでは比較的新しい情報が請求されますが、eディスカバリは一般的に過去のイベントに関する情報が対象になり、何年も前の情報が請求されることもあります。実際、請求された情報は、ライブのメールボックスやExchangeアーカイブではなく、PSTファイル内で見つかることが多いのです。

訴訟当事者の多くはPSTファイルに関連情報や有益な情報が格納されていることを知っていますから、情報請求の対象にPSTファイルを含めるように指示してきます。何年も前に廃棄しておくべき法的な理由や正当な理由があったとしても、「存在するデータはかならず検出可能」という法則が適用されるので注意が必要です。

したがって、Office 365への移行時に残ったPSTファイルは、深刻な問題になります。IT部門が一元管理できない場所にPSTファイルを放置しておくと、全社的なバックアップや保持プロセスの対象から外れてしまうので、コンプライアンス上の問題にもなります。そして、この大学がデータの調査やディスカバリを行う場合、ファイルがどこにあり、何が保存されているかを正確に把握することはほぼ不可能になります。法的請求には、「妥当性」の観点から対抗し、ユーザのデスクトップからPSTファイルを検索する作業を除外することが可能かもしれません。ただし、原告が元ユーザである場合、PSTファイルをすでに所有している可能性がありますから、「妥当性」の議論の余地はなくなり、処罰は免れないでしょう。

PSTファイルの問題は簡単に解決できるのか?

この大学の場合、幸運なことにPSTファイルに関するサポートはなくなっていたので、ファイル内のすべてのデータにはもはやビジネス価値がないと考えるのが妥当でしょう。

ただし、PSTファイルのリスクを回避するためには、まず各ファイルの場所と所有者を特定し、次に保持が必要なデータを移行して、最後に不要なデータを削除する必要があります。

以上の作業に最適なソリューションは、Barracuda PST EnterpriseをはじめとするPST移行専用ツールです。このツールを使用すれば、IT環境全体をスキャンしてPSTファイルをすべて検出できます。ユーザデスクトップ上にあるファイルやネットワーク共有に保存されたファイルなど、一見してわかりにくいファイルの検出も可能です。次に、各PSTファイルの内容をスキャンして、所有者を自動的に特定します。データの保持と廃棄を判定する移行ポリシーの設定も可能です。そして最後に、処理済みのファイルを自動削除します。

「PSTファイルは管理済み」という思い込みは危険

この大学の問題は、PSTファイルがもたらす問題の大きさや深刻さを理解していなかったことと、Office 365への移行でこの点を誰も指摘/対応しなかったことです。

PSTファイルで問題が発生しているか、問題が発生する可能性があるのであれば、適切な対応が必要になります。クラウドへの移行作業では、誰もPSTファイルを移行してくれません。そしてクラウドへの移行が完了したとき、何か取りこぼしがないか確認してください。存在している問題を無視すると、非常に大きな代償を払うことになります。

Office 365への移行でBarracuda PST Enterpriseを活用する方法はこちら

※本内容はBarracuda Product Blog 2015年2月9日Migrating to Office 365 … have you forgotten something?を翻訳したものです。

Peter Mullens

本稿は、バラクーダネットワークスのWebサイトに掲載されている『バラクーダラボ』3月11日付の記事の転載です。