最近、書籍や記事で情報管理と情報ガバナンスがよく取り上げられており、アナリストは「情報管理とガバナンスが企業の戦局を変えるゲームチェンジャーになる」と予測しています。

でも待ってください、それはエンタープライズコンテンツ管理(ECM)も同じではないでしょうか?ECMの分野ですでに成功を収めているベンダやECMのインストール環境は存在しますし、ECM戦略はあらゆるレベルで企業内に展開されているのではないでしょうか?

ECMとIG(情報ガバナンス)は別物

エンタープライズコンテンツ管理は、「個々のドキュメントは一意であり、明確な目的を持ち、管理対象になる」という原則に基づいています。

ECMは、製薬など法規制の厳しい業界で重要な役割を果たします(たとえば製薬業界では、薬のラベルの改訂を管理する必要があります)。このような業界では、ECMソリューションは優れた信頼性を発揮するソリューションとして理想的です。ECMは、販促資料やトレーニング資料を定期的に作成する作業や、契約やドキュメント改訂の追跡といった日常業務をサポートします。

しかし、これは情報ガバナンスではありません。また、情報管理でもありません。この違いは、徐々に理解されつつあります。ECMでは1対1の関係性が前提になりますから、この点でECMは情報ガバナンス向けのソリューションとはいえないのです。

情報管理と情報ガバナンス – 難題は「1対多の関係」

情報ガバナンスでは、「1対多」が基本原則です。この大きな要因はメールです。メールには、反復性という特性があります。メールの処理には、バラクーダネットワークスも提供しているメールアーカイブシステムを使用できますが、このような重複を排除することはできませんし、排除するべきでもありません。

たとえば、メールの作成者が同じドキュメントを複数の宛先に送信する場合、SIS(シングルインスタンスストレージ)という方法が用いられます。SISでは、ドキュメントのコピーはすべて元のドキュメントをポイントします。ところが、ドキュメントが組織の外部に出て、コメントを付けられ、それを元に別のメールが作成されると、同じ情報が反復されます。

したがって情報ガバナンスは、「単一のドキュメントや項目を特定し、すべての派生物を追跡する」という枠組みを超えた概念になります。メールの場合、派生物は枝分かれしたスレッドであり、会話でもあります。構造型管理ソリューションでこのような関係を処理することは不可能であり、できたとしても簡単ではありません。

コンテンツベースの管理と価値ベースの管理

では、情報の管理方法という点でEMCを考えてみましょう。ECMでは、コンテンツベースの管理を行います。つまり、ドキュメントの内容に応じて、ドキュメントやその関連ドキュメントの管理方法が決まります。

これに対して情報ガバナンスでは、管理の基準となる変数は非常に多岐にわたります。ここで問題になるのは、ドキュメントが重複しているかどうかだけでなく、組織内にメールの添付という方法でドキュメントが入ってきて、それを元に他のコンテンツが作成されるという点です。このプロセスには一貫性がなく、ランダムです。

したがって、コンテンツにどのような価値があるかを理解し、適切な方法で管理することが情報ガバナンスのカギになります。コンテンツの価値はとらえどころがないものです。しかし、Information Governance Initiativeのように、情報の価値評価で成功を収める方法を模索する動きもあります。情報の価値評価でよく使用される方法には、経過時間をベースにするものがあります。メールには一過性という特性があるので、件名を別の方法(たとえば、金融機関でブローカ/クライアントの関係に関する話し合いをメールで行う場合など)で管理する場合を除き、時間の経過と共にメールの価値は低減し、最後には価値がなくなります。企業では事前に定義した期間をドキュメントに適用することにより、訴訟ホールドやコンプライアンスの対象にならない限り、保管期間が過ぎたメールは削除します。

ECMと情報ガバナンスは両方必要か?

答えは恐らく「イエス」ですが、ここではまず「エンタープライズコンテンツ管理が必要かどうか」を考えてみましょう。組織内に存在するコンテンツの処理方法は多岐にわたり、機能が重複したソリューションが数多く提供されています。SAPやOracleなど多分野共同ソリューションは、コンテンツ管理はもちろん、エンタープライズリソース管理、ルーティング、追跡、プログラムによる対応などの機能も備えています。ただし、メールなどの非構造型データの情報ガバナンス機能が提供されていることはほとんどなく、提供されているとしても、メールは他のコンテンツと関連付けて管理されます。

一方で情報ガバナンスは、アーカイブを行うシンプルなものもあり、単にメールをキャプチャして保存することにより、法規制やその後の検索/ディスカバリに対応するソリューションもあります。非常に細分化された分類を行うのであれば、情報ガバナンスはECMに類似しており、非構造型コンテンツの特定、分類、コンテンツ固有の管理ルールの適用、といった役割を果たします。

ECMとIGの両方が企業に必要だという根拠は2つあります。企業がECMを必要とする理由は、管理される情報は業務上極めて重要だからです。一方、情報ガバナンスを必要とする理由は、未管理の情報や非構造型の情報が社内に溢れているためです。このような管理機能がなければ、情報から重要な知見を発掘することができなくなります。また、情報が引き起こすリスクを軽減できなくなってしまいます。

テキサスの法律事務所であるFirm Gray, Reed & McGraw P.C.がArchiveOneで情報管理を効率化させた事例をご覧ください。

※本内容はBarracuda Product Blog 2015年2月2日Where Worlds Collide – Why Enterprise Content Management is not Information Governanceを翻訳したものです。

Dave Hunt

本稿は、バラクーダネットワークスのWebサイトに掲載されている『バラクーダラボ』2月24日付の記事の転載です。