Exchange 2010から、個人用アーカイブ機能がExchangeメールボックスに追加されました。さらにこのバージョンでは、メールボックスのサイズが格段に大きくなったことから、PSTを新たに作成する必要性がなくなりました。Exchange 2010のリリース後、2012の登場を待たずに、マイクロソフトはPST Captureを無償で提供しました。これはネットワークやエンドユーザPCに格納されているPSTを検出、移行、削除するツールです。
PST Captureは無償だったため広く普及し、ユーザはその分の予算を他のデータ移行の購入に割り当てることができたのです。
PST Captureを利用することは近視眼的な対策でしかないのでしょうか?今日はこの点について、ツールのサポートという側面から考えてみましょう。
PST Captureにはサポートがない
PST Captureではかなり充実したマニュアルが提供されている一方で、大きなバグがいくつか報告されており、制約があることも広く認識されています。メッセージングやネットワーク分野のスペシャリストの間では、「PST Captureは、限定的な移行や綿密な管理下で移行を行う場合のみに適している」という点で意見が一致しています。また、Exchange Server 2010以前のバージョンではサポートされないので、2003や2007からPSTを移行する場合などには使用できません。
PST Captureはフリーウェアなので、マイクロソフトによるサポートは提供されません。実際、マイクロソフトのエンジニアはPST Captureに関するトレーニングを受けていませんし、サポートオプションも存在しません。
では、PSTの移行において、サポートがないことは問題になるのでしょうか?まったく同一のExchange環境は2つとして存在しないのですから、サポートがないことは問題です。ユーザごとにさまざまな環境が存在するので、そのような環境のニーズに柔軟に対応できるツールが必要不可欠です。PST Captureは、基本的なExchangeインストール環境向けに設計されたツールであり(PSTが深刻な問題となる大規模な企業環境は想定されていません)、複雑なExchange環境向けにツールを調整する方法を解説したマニュアルはほとんど提供されていません。
実際のところ、PST Captureでの移行プランを作成し予算を確保したところ、設定したスケジュールと予算内で作業が進まず、最終的にはPST Captureでの作業を断念し、サードパーティツールを導入した、というケースが多くみられます。こうして、どのIT部門も「時は金なり」を実感するわけです。
ユーザにも及ぶ影響
PST CaptureでPSTデータの検出と移行を行うには、すべてのエンドユーザデスクトップにエージェントをインストールする必要があります。
ツールのサポートがないのですから、エージェントのサポートも提供されていません。IT部門は、デスクトップとそこで実行するソフトウェアの標準化に最大限の努力をしてきたわけですが、必ず例外はあります。ところが、ユーザが何百人もいる大規模な企業環境の場合、この例外の影響は大きくなり、マイクロソフトがサポートしない以上、IT部門が直接サポートすることになります。
問題が発生した場合の対策
ユーザ数が少ない標準的な環境では、PST Captureは試してみる価値のあるユーティリティでしょう。ところが、大規模なユーザ環境になると話は別です。したがって、バラクーダネットワークスのようなベンダがさらに強力なツールをライセンス供与しています。
PST Captureのようなツールでエラーが発生した場合、ユーザはどのように対処すればよいでしょうか。幸運に恵まれた場合は、設定上の問題の解決をあきらめて、PST Captureとは別の方法を選択することができます。ところが一部だけ動作するような場合には、ますます深刻な状況へと陥ってしまいます。
PST Captureのエラーを引き起こす要因には、さまざまなものがあります。処理が非常に低速で、クライアントソフトウェアのインストールが必要である点以外にも、場所ごとに手動で検出しなければならない、Outlookで開くPSTファイルを処理できない、ネットワーク共有をスキャンできない、孤立したPSTファイルを手動で検出しなければならない、ユーザのOutlookプロファイルからPSTファイルを手動で切断し削除しなければならないなど、PST Captureを使った手順には非常に多くの時間と手間がかかります。
安全なのは、サードパーティがライセンス供与する移行ツール
PST Enterpriseのようなサードパーティ製の移行ツールは、このような問題や制約を解消し、大規模な移行環境のニーズにも対応できるように設計されています。先頃、PST Enterpriseの製品レビューが2つ発表されましたが、いずれのレビューでも、サードパーティツールの方が機能性と容量の点で無償のPST Captureツールを大幅に上回っていることを結論としています。
「… マイクロソフトが無償で提供するPST Captureツール、その他多数の機能、さらには分散型の移行アプローチの欠点を考えると、PST Enterpriseは真っ先に検討すべき製品の1つである」。
スティーブ・グッドマン(Steve Goodman)氏、Exchange MVP
「マイクロソフトのPST Capture 2.0は無償だが、PST Enterpriseが提供する機能、容量、Network Computing logoレポートツールと比較すると、無償であるというPST Captureのメリットも色あせてしまう」。
Network Computing Magazine
サードパーティツールを使用すれば、貴重なITスタッフの時間を節約し、移行にかかる時間を短縮できるので、ライセンスコストを簡単に回収できます。Office 365に移行する場合、いずれにしても移行予算を確保する必要があるわけですから、サードパーティツールの購入を最初から検討するべきでしょう。
PST Enterpriseなどのサードパーティツールは、一時ストレージや帯域幅など他の移行作業にもプラスの影響を与えますし、ベンダがサポートするので、万が一エラーが発生してもIT部門がトラブルシューティングを行う必要はありません。
※本内容はBarracuda Product Blog 2014年11月24日PST Capture, Why Unsupported Software is a Riskを翻訳したものです。
Ken Hughes
本稿は、バラクーダネットワークスのWebサイトに掲載されている『バラクーダラボ』1月6日付の記事の転載です。