情報管理と情報ガバナンスの違いを取り上げた先日のブログでは、情報ガバナンスの導入アプローチには2つの方法があることを説明しました。
今日は、おなじみのトップダウンアプローチについて説明しましょう。
包括的な視点
これまでの情報ガバナンスでは、最初に、データが企業に与える価値を特定し、理解することから始まります。次に、データをビジネス資産として管理する上で必要になる情報管理プロセス、戦略、メトリックを個々に決定します。
企業環境には、特定および把握すべきデータソースが数多く存在します。データソースに格納されているデータには構造型データがあり、これはすでにある程度管理されています。ただし、データソースのほとんどが非構造型データであり、さらにその大部分を占めているのが、管理が必要なメールです。
データ管理に関連する部門
企業では多くのステークホルダが多かれ少なかれ情報ガバナンスに関心を持っており、データの特定と把握というプロセスに関与しています。このプロセス全体では、特に次の4つの部門が大きな役割を果たしています。
1.コンプライアンス部門
大規模な組織には、コンプライアンスオフィサーやビジネスインテリジェンスマネージャなど、法規制のコンプライアンス確保を担当する役職が存在します。また、専任の役職がないとしても、コンプライアンスのさまざまな責務を日々の業務において果たす担当者がほとんどの企業に存在します。もちろん、効果的な情報管理は、業務にプラスの影響を与えます。
2.法務部門
企業が保持する情報はすべて、法的な検査の対象になる可能性があります。情報管理を効果的に行い、業務に必要なデータのみを保管することによって、保管期限を過ぎたデータを大量に保管する無駄を省くことができます。これは、ディスカバリ(電子証拠開示)に関わるコストの低減につながります。特に、開示が求められるデータの90%以上をメールが占める現状では、大きな効果があります。
3. オペレーション部門
オペレーション部門の多くは、価値ある洞察やトレンドにつながるデータを保持し、データマイニングを行うことを目指しています。ビジネスインテリジェンスアプリケーションを使って有効で役立つ結果を得るためには、ビジネス価値を生み出すデータが社内に存在しなければなりません。したがってオペレーション部門は、有益なデータのみを保持することを徹底します。取得した結果のピントがずれないようにするには、重複データ、古いデータ、無関係なデータを削除する必要があります。
4.IT部門
IT部門には、ビジネス価値に連携した方法でデータを管理するために、さまざまな情報管理プロセス、戦略、メトリックを実装する責務があります。したがって、情報ガバナンスでも役割を担うことになります。
理解と認識の一致
トップダウン型の情報ガバナンスでは、それぞれのステークホルダが情報に対してどのように価値を与えているのか、そして情報はどのようなライフサイクルを経ていくか、という点を主要なステークホルダが理解しなくてはなりません。価値とライフサイクルの両方を的確に把握できていないと、「すべてを保存」という、何も生み出さない戦略へと簡単に陥ってしまいます。
ステークホルダの認識が一致し、価値とライフサイクルを理解することにより、それぞれのニーズが他のグループにどのような影響を与えるのか、さらには情報ガバナンス戦略全体にどのような影響を及ぼすのかを捉えることができます。トップダウンのアプローチを採用している企業の多くは、主要なステークホルダグループに所属するメンバーを集めてチームを編成しています。また、外部のコンサルタントを採用し、特定の法規制に関する指導やベストプラクティスの提案を依頼している企業もあります。
トップダウン型のメリット
トップダウン型の情報ガバナンスには包括的な性質があるので、ビジネス全般で扱われているデータのライフサイクル全体をカバーできます。ステークホルダは、各グループの問題点を組織全体の視点で捉えることができ、結果として、一貫性がありバランスの取れた戦略を策定できます。
情報ガバナンスを推進するさまざまなビジネスシナリオを検討し、複数のプロセスフローを通じてデータがどのように管理されるのか、それぞれどのような影響を及ぼすのか、という点を理解する上で、トップダウンのアプローチが威力を発揮します。これは、メールなど、多くのビジネス部門でカギとなる非構造型データにおいて特に重要です。
また、トップダウンのアプローチは、外部コンサルタントを最も経済的に採用できる方法でもあります。このようなコンサルタントは、法規制やベストプラクティスなど、社内にはない専門知識を得る上で必要になります。
トップダウン型のデメリット
トップダウン型の情報ガバナンス戦略を導入する際に問題が起こりがちなのは、適用の規模と範囲を設定し管理する作業です。特に、1つのガバナンス戦略を全社で適用する方法が現実的でない場合などは、この作業は複雑になります。
また、チームのメンバー選定が適切でないと、日々の業務に適さない方法が提案されてしまう場合もあります。情報ガバナンス戦略は既存の業務手順やワークフローにも影響するので、この点をチームがよく理解していない場合、新たな問題を生み出す原因になってしまうでしょう。
中堅市場で業務を行う企業が大企業に対抗するには、さらに規模の小さな企業との取引や市場へのフォーカスが不可欠になります。また、トップダウン型情報ガバナンス戦略を実装するためのリソースが社内にない場合や、外部コンサルタントを依頼する予算がない場合もあります。
戦略を現実に変える
トップダウンのアプローチには、完全な情報ガバナンス戦略の実現や、チームがさまざまな課題に取り組む長期的なガバナンス戦略の作成など、さまざまな目標がありますが、いずれの場合も、この戦略を実装していく過程ではITプロジェクトがいくつも必要になります。
情報ガバナンスはフレームワークを確立し、必要な成果を生み出しますが、それを達成するために必要な情報管理プロセス、戦略、メトリックは具体的に規定されていません。これは、情報ガバナンスの別の側面であり、全社的な情報管理の実装という実務的な課題には、多くの企業がそれぞれの方法で対処しています。
これに対して、ボトムアップ型の戦略は実際的なアプローチであり、既存の管理プラクティスや利用可能なリソースとの整合性が高くなります。次のブログ記事では、ボトムアップのアプローチについて詳しく解説する予定です。
※本内容はBarracuda Product Blog 2014年11月5日Information Governance – The top-down approachを翻訳したものです。
Peter Mullens
本稿は、バラクーダネットワークスのWebサイトに掲載されている『バラクーダラボ』12月8日付の記事の転載です。