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終わらない旅

--そういう意味では宗像さんの旅はまだまだ終わらないですね

終わらないですね。僕は商売をやって育ててもらったので、やっぱり、こう実業の中でやるのが一番性にあってるという感じを受けてます。実は先ごろ、65歳から起業する、65歳アントレプレナーシッププログラムみたいなのをやってみたらどうか? という、お話しをいただいたところなんです。

定年すると退職金を貰うじゃないですか。でも今時、貰った退職金では死ぬまでには足りないんですよ。ということは、これを元手にもう一花咲かせないといけない。だから、65歳位から起業するぞっていう人が一杯でてくる。ただ問題は、これが難しい。ある若い方のお父さんが公務員を定年された。それで退職金の2000万で飲食店を作ったんですが、1年で潰れちゃったらしいんですね。そりゃあ、公務員やってた人がいきなり外食産業やるというのは無理だよね、という話にしかならない。

--それがまた、皆さん蕎麦屋とかなんですよね(笑)

昔、自分が若かった頃にやってみたいなという憧れがあったというのは判るのですが、もちろんその気持ちは大事なんですけど、そこに向かっていくノウハウだとかそういったことを仲間でサポートするサポーターチームが無くちゃいけないな、と感じてます。これを65歳アントレプレナーシッププログラムのスタートアップスタジオみたいな感じでやれると、面白くないですか?

--それは逆に、そういう方の退職金を全部集めて、それを元手にエンジェルを始めても良い訳ですよね?

エンジェル投資家もいいですが、本当に自分で実業やりたくて、俺は毎日店で仕事したいんだという人がいれば、それはやってもらえばいいわけです。ただ問題は、それをやるノウハウがない事です。何しろ帳簿のつけ方も判らないのに、店は始まっちゃったみたいな方までいらっしゃるんですよ。少なくとも最低限、1人で商売始めるならこういう事を知ってないとね、みたいな事を知るために、ちゃんと自分に再投資しないといけない。

最近のスピード感で言うと、大学までで学習したことが30年40年持つわけが無い。下手をすると10年持たないかもしれません。ということは、常に自己投資をして、学習し続けていかないといけない訳です。ところが得てしてそれが途中で止まっちゃっている方が多い。特に大企業の役員の方には、ほとんど勉強してない方が少なくない。例えば「こういう本読んでますか?」「こういう講演聴いてますか?」とかお話しても、そういう情報をご存知なかったりする。

そういう大手企業で事業化の話をしても、圧倒的に(経営陣の)知識が足りないんですよ。もちろんご自分のやられているところは判っておられるんですが、そこから外側の話は全然分からない。今時の若いベンチャーの子でも「こんなこと常識で知ってるよ」という事を知らなかったり。下手をするとスマホのアプリとか使ったことが無い。UberとかAirbnbとか使ったことなくて、ネットサービスを新規事業で始めますとか、それは無理でしょう。

そこはもう少し体験型で、一生懸命やってもらったほうが良いんじゃないかなぁ、と。そういう人に寄り添って行くのが、B.Groveのプロジェクトかな、と思う次第です。

--こういう言い方は申し訳ないところもありますが、前期高齢者向けのサービスというのもB.Groveの中には入っているんですね?

それもありますが、B.Groveの持つ課題は「社会的弱者」に目を向けることだと思ってます。最初にお話したベンチャーと大手企業をつなぐというのもありますし、それからセカンドキャリアの話。これは、定年になった人たちのビジネスをどうサポートするかという話と、スポーツ選手のセカンドキャリアをどうしていくか。あともう1つは障がい者の方たちですね。障がい者の方たちの雇用をどうやってサポートしてあげるか。要するに皆さん人権を持った方なので、例えば「歳取ってるからといってあんた方は解雇ね」とか言われたら、やはり、おかしい話だろう、ということになるわけです。

確か徳島県の神山町だったかと思いますが、 料亭などにもみじを出荷するという「いろとり」というビジネスがあります。70歳以上のお爺ちゃんお婆ちゃんが、年収1000万円を超えてるんですよ。皆さんタブレットとか使って嬉々としながら相場をチェックして、「あの山いってこういうの取ってきて」「これは単価いくらだ」とかやってる。医療費もほとんど掛かってないそうです。70歳代の方々がわくわくしながら仕事している訳です。

一方で、介護老人ホームに行ってしまった結果、70歳そこそこで認知症がどんどん進んで、という方も居られる。これはおそらく、認知症だから守らないといけないという考え方も判るんですが、それ以上に年寄りだって元気に働いたほうが幸福な人生を送れる可能性があるなという示唆だと思うんです。働く価値があるし、価値を出せるだろう、と。そういうことが出来ると、社会全体が改善されていくんじゃないかと思うんですね。

これは障がいを持った方々もまったく一緒だと思ってます。障がいがある方とない方が居て、障がいがない人たちが「君たちは障がいを持っている人だから、こういう風にしてね。税金でサポートするよ」と言われてしまうと、障がいがある人たちもそういうものかという想いを植えつけられてしまうじゃないですか。でも、豊橋だったと思うんですが、久遠チョコレートというチョコレート屋さんがあって、そこは障がいがある方たちを雇用されているのですが、彼らがパッケージのデザインなどをやっている。もちろん、きちんとお給料を支払ってるわけですが、そういうお仕事は障がいがない方よりもちゃんとデザインできたりするんですね。

要するに老人だとか障がいのある人だとか、もっと広範に言えばLGBTの話もそうですが、これは個性が違うだけであって、誰の目線でその議論をしてるんだ、ということになる。多分オヤジ目線で社会を作ってるんですよ。これはおかしいんじゃないか、と。こういう事に対してやはり課題感があって、オヤジ目線で作られている社会のいろいろをもう一回見直す。本当にニーズがどこにあって、どういう事をしなくちゃいけないかを現場目線で考えながら、産業を作ってゆくのが大事なんじゃないかなぁ、と思ってます。

僕はそういう想いがあって、それをLeapMindをはじめ、色んな人達に、志を共有してくれる人に、まぁ皆さんご協力を、とお願いしているわけです(笑)。

--傳田さん3)の下で働かれていた方々を傳田チルドレンと言いますけど、つまり今やられているのは、宗像チルドレンをいろいろな会社に作ろう、という最中なんですね?

Intelを卒業するときに傳田さんに挨拶に行きましたら、「宗像、お前何やるんだ」と言われて。傳田さんもベンチャーに投資とかされてますので、僕も傳田さんと課題感は一緒で、これからの若い、産業を興す人たちを何とか支援して、頑張りたいと思ってますと答えたら、「宗像、それはお前の天命だ」(笑)と。まぁ傳田さんに一喝されて、「わかりました、頑張ります」と答えましたね(笑)。

--Intelを卒業されて現在各所でご活躍されている方って、みなさん、言ってしまえば傳田チルドレンですからねぇ

傳田さんにはいろいろお世話になりましたし、沢山色んなことを教えてもらいました。どんなに辛いことがあっても客先から逃げるなとかね(笑)。

インタビューを終えて

というわけで、長いインタビューになってしまったが、宗像氏が、今、何を考えているのかについての話をお届けした。LeapMindとは直接関係の無い話題も多かったが、33年ものインテルジャパンでの経験に裏打ちされたメッセージには、強い説得力があった。久々に、良いお話を聞けたと感じたインタビューであった。

注釈

3) 傳田信行氏:最初のインテルジャパン社員。その後インテルジャパン代表取締役社長や本社副社長などを経て2001年退任。現在は「傳田アソシエイツ」を主催。