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B.Groveの活動

--そういう意味では、イメージ的にはAngelに近いですよね? 出資はされてないと思いますが、ちょうどビジネスのマッチングみたいなものをして、その中で必要なら経営指南みたいなものも入る、という感じでしょうか?

Intelの後半からエグゼクティブコーチングもやってたんですね。会社の役員に対してコーチングするとか、経営コンサルをやってるような方々とお話をしたりとか、VC(Venture Capital)の人たちとも話をしましたが、その結果感じたのは、それぞれの役割に偏りすぎているのかな、ということです。

例えば会社の役員にコーチングをしたとします。コーチングを受けた側は、表現が難しいんですが、それなりに「良い人」になったとするじゃないですか。ところが、会社の経営者にとっては、人格的に立派なのに越したことはないのですが、目的は企業として成功することであって、良い人になってもビジネスが成功しなかったら「何のためにコーチングしたの?」という話になるわけです。もちろんパーソナルコーチとかで自分の人生のために何かするというコーチングは良いと思うんです。ただ、少なくともビジネスに対してのコーチングをする以上、ある程度の価値を出さないといけない。つまりコーチングしている先にビジネスの成果を何か担保できることは無いのか? というのがまず課題ですね。

逆に経営コンサルは、ビジネスプランなどは一生懸命作るのですが、その中から人は育たない。「こういう風にやれば事業は出来ます」というのは出てくるんですが、それを貰っても、それをやるためにどういう人材が必要なのか? という話は出てこない。また、VCはお金を出しますから、事業としての儲けを第一に考えていくことになりますので、そこでも人は育てません。これらを踏まえた時、この3つを一体化させる活動が必要なんじゃないか、というのが僕の中での仮説なんです。周りをみてもそういう事をやっている人が居なかったので、自分でやってみようか、という事で始まったのがB.Groveのプロジェクトです。

--これはIntelを卒業されてから始められた事ですかね?

そうですね。Intelに居たときは、やはりIntelの製品を売らなくてはいけないという使命感がありました。この使命感は無茶苦茶縛りが強くて、それ以上のことがなかなか出来なかった。「絶対これをやったら面白いな」ということがあって、「これやって良いですか?」と聞いた時に「それ、うちのプロセッサを売るために何か意味があるのか?」と言われてしまうと、「うーん、多分そこじゃないんだよね。でも社会的解決にはこちらの方が有効だよね」といった答えしか返せなくて、結果としてIntelとしての優先順位は付けられなくなるわけです。

ただ、いろいろな方々とお知り合いになる機会が得られたのは、多分Intelという会社に居たからだと思うので、その意味ではすごくIntelに感謝しています。また、こういった考え方や方法論のベースも、Intelで学んだものです。Intelがマイコンのマーケットを作り、パソコンのマーケットを立ち上げてきた時のノウハウは、結構しっかりしたものだったので、そういうノウハウが使えるようなエリアで、何かそういうことが出来ればなぁ、と。そんなイメージですね。

--宗像さんはどちらかというとソフトを担当されたりとか、コミュニケーションをやられたりとか、あまり半導体を最前線で売るというのではなく、その裏側にずっと居られた感じがするのですが、そういう経験が利いてきてるのでしょうか?

恐らく、インテルの社内で人的なネットワークを一番持っていたのは、僕だと思ってるんです。僕以外の人は、営業を中心にプロセッサを売っている訳です。プロセッサを売る先は、PCメーカーのお客様になりますから、ターゲットとしてはそこをガッツりやる事になるわけです。僕の場合は、そこで売ったプロセッサをどうやって広げようか、どうやってPCを沢山使ってもらおうかというもので、どちらかというとエコシステムの端から端までつないで、これ、どうやったらマーケットが最大になるのかな、といったことを考えて、そういうエコパートナーの人たちをつなぎ合わせるという仕事をしていたので、範囲がものすごく広いんです。

Intelを卒業した後で、いろいろなお話を沢山頂くのですが、それがIntel時代以上に広がってる感触なんです。IntelのときはIntelとしての境界(Boundary)があって、その境界までしか出来なかったのが、今はその壁を取っ払っていける。例えばLeapMindでもそうですけど、Intelロゴがついてない他社の半導体製品も使って全体としての仕組みを作りたいと思っている方が結構いるわけです。そういう意味では、お声を掛けていただく機会が増えたかな、という感じですね。

(次回は5月25日に掲載します)