Azureの無料アカウントを作成すると、主要なサービスの大半を1カ月無料で評価することができ、その後は従量課金の有料サブスクリプションにそのまま移行することができます。通常は、この無料アカウントから始めることをお勧めします。
無料アカウントを作成すると、200ドル(2018年7月時点では2万2500円、為替レートにより変更あり)の利用クレジット枠が無料提供され、その日から1カ月間、その利用クレジット枠の範囲内でさまざまなサービスを特に機能制限なく評価してみることができます。
無料期間終了後に無料アカウントの利用を停止することもできますし、作成済みのリソースを維持したまま有料サブスクリプションに移行することもできます。
なお、有料サブスクリプションに移行しない場合でも、データは一定期間(90日間)保存されるので、完全に削除される前であれば無料アカウントの有効期限が切れた後でも有料サブスクリプションにアップグレードすることが可能です。
無料アカウントでは主要なサービスのほとんどを利用できると言いましたが、サービスの利用を開始するために有効化が求められるサービスやマイクロソフト以外の提供元からのサービス(エンタープライズサポートを含むRed Hat Enterprise Linuxなど)については無料クレジット枠では利用できません。
ただし、サービスの無料評価版が用意されている場合は、無料アカウントと有料サブスクリプションに関係なく、無料で評価できるものもあります。
例えば、AzureではAzure AD無料版(Basicプラン)が提供されますが、より高度な機能を備えた有料のPremiumプランを購入前に無料評価版で評価することが可能です。後述するEnterprise Mobility+Security(EMS)にも無料評価版があります。
無料アカウントに必要なオンラインアカウント
Azureの無料アカウントをサインアップするためには、次のいずれかの有効なメールアドレスを持つオンラインアカウントが必要です。また、サインアップを完了するためには、電話による本人確認と、有効期限内のクレジットカードによる本人確認が要求されます。
Microsoftアカウント・・・マイクロソフトのコンシューマ向け製品(Windows 8.1/10)やサービス(OneDrive、Outlook.com、Skype、MSN、Xbox LIVE、個人向けOffice 365など)へのアクセスのために使用されるアカウントであり、個人でAzureを使用する場合は通常、Microsoftアカウントを使用します。
会社または学校アカウント(組織のアカウント)・・・Azure、Microsoft Intune、企業/教育機関向けOffice 365など、ビジネスや教育分野での使用のために組織の管理者によって作成されたアカウントです。
Microsoftアカウントを持っていない場合は、Azure無料アカウントのサインアップ時に、個人のメールアドレスをMicrosoftアカウントとして登録するか、新規にMicrosoftアカウントを作成(ユーザー名@outlook.com、@outlook.jp、または@hotmail.com)してから、サインアップを進めます。
サインアップが完了すると、Azure Active Directory(Azure AD)に既定のディレクトリが準備され、サインアップしたMicrosoftアカウントがテナントの全体管理者としてセットアップされます。
すでにMicrosoft IntuneやOffice 365の組織のアカウントがある場合は、そのアカウントの認証情報を使ってAzure無料アカウントにサインアップすることで、組織としてサインアップすることができます。その場合、Microsoft IntuneやOffice 365のディレクトリ(ドメイン名)でAzure Active Directoryが準備され、サインアップした組織のアカウントがテナントの全体管理者としてセットアップされます。
組織としてサインアップを望んでいる場合で、まだ組織のアカウントを用意できる環境が無い(Office 365サブスクリプションなどの契約が無い)場合は、Enterprise Mobility + Security(EMS)の無料評価版(90日)に先にサインアップすることで、組織用のドメイン(@名前.onmicrosoft.com)を取得し、管理者アカウントを作成後に1カ月の無料アカウントのサインアップに進むことができます(画面3)。
EMSは、Azure ADを中心としたデバイス、ユーザーID、アプリ、情報の保護と脅威からの保護のためのさまざまな有料サービスを1つにまとめ、お得な料金で導入できるスイート製品です。
この方法でサインアップすることで、Azure ADの1つのディレクトリを中心として、AzureとMicrosoft Intune(どちらもEMSに含まれる)、Office 365(無料評価版版として追加可能)などの利用環境を準備することができます。
1カ月で終わらない、最初の12カ月無料サービスを活用しよう
2017年9月末より、Azureの無料アカウントに対するオファーが大幅に拡張されました。それは、1カ月の無料期間の終了後、有料サブスクリプションに移行したあとも、一部のサービスについては最初の12カ月間、無料で提供されるというものです。
詳しくは、以下のFAQのページで確認してください。例えば、最初の12カ月はWindows/Linux仮想マシン(ただしB1Sシリーズ)がそれぞれ750時間、128GBのManaged Disks、5GBのBlobストレージ、5GBのFileストレージ、250GBのSQL Database(Standard S0)などが無料で利用できます。
Azureの全体管理者のIDは多要素認証でしっかりと保護
Azureの無料アカウントにサインアップし、完了したら、まず行っていただきたいのは管理者(全体管理者)アカウントの認証を強化しておくことです。ユーザー名(メールアドレス)とパスワードだけの認証では、世界中のどこからでも、悪意を持つ第三者にサインインされるリスクがあるからです。
Microsoftアカウントの場合は、Microsoftアカウントのポータルで「その他のセキュリティオプション」を構成し、2段階認証の保護を有効化してください。
組織のアカウントの場合は、Azure ADの「多要素認証(Multi-Factor Authentication:MFA)」を利用できます。組織の一般ユーザーに対するMFAはAzure MFAやAzure AD Premiumが必要ですが、全体管理者(サインアップに使用した組織のアカウント)はMFAによる保護が可能です。
MFAを有効化するには、Azureポータルで「Azure Active Directory」ブレードのディレクトリの「ユーザー > すべてのユーザー」を開き、「Mult-Factor Authentication」をクリックして「多要素認証」のページで設定します。
山市良
Web媒体、IT系雑誌、書籍を中心に執筆活動を行っているテクニカルフリーライター。主にマイクロソフトの製品やサービスの情報、新しいテクノロジを分かりやすく、正確に読者に伝えるとともに、利用現場で役立つ管理テクニックやトラブルシューティングを得意とする。2008年10月よりMicrosoft MVP - Cloud and Datacenter Management(旧カテゴリ: Hyper-V)を連続受賞。ブログはこちら。
主な著書・訳書
「インサイドWindows 第7版 上」(訳書、日経BP社、2018年)、「Windows Sysinternals徹底解説 改定新版」(訳書、日経BP社、2017年)、「Windows Server 2016テクノロジ入門 完全版」(日経BP社、2016年)、「Windows Server 2012 R2テクノロジ入門」(日経BP社、2014年)などがある。