フィギュア複製のための、作業を進めています。今回から、頭部と腕の部分の作業です。原型に制作に使用しているスカルピーは、生地むき出しのままシリコンゴムで型取りすると、表面にシリコンが付着してしまう場合があります。対応策としては、スカルピー表面を軽くコーティングすると良いです。そこで原型に「スモークグレー」の缶スプレーを吹きます。

手と顔のパーツにスプレーを吹き、コーティングする

スモークグレーはクリアー系の塗料なので、表面を平滑にする効果もあります。原型師によっては、耐水ペーパーでかなり原型を磨くのですが、スカルピーでは、あまりに細かい表面処理には耐えられません。複雑過ぎたり、細か過ぎて、削りで仕上げきれないモールドや、あまり平滑にすると味気なくなってしまう部分の仕上げには、今回のように、クリアー塗装をすることで対処できる場合もあります。コーティング目的なら、クリアー系塗料でなく、サーフェイサーでも問題はありません。

スプレーした原型の表面が乾いたら、シリコンゴムを流す容器にセットします。今回は、形が比較的シンプルなので、粘土に半分埋める2面以上の型ではなく、片面(1面)で型取りしてみたいと思います。シリコンが流れないようにする壁も、物が小さいので、今回は紙コップ(今回は小サイズ)で代用します。紙コップの底に両面ガムテープを貼ります。

日常品を駆使してお手軽に複製

原型を紙コップ内にセットする時には、複製品を抜き易いよう、原型の傾きに注意します。キャストを流した時に気泡が溜まらない様、配慮も必要です。コップ内で原型の角度を変えるために、原型の底の部分にスカルピーを盛って土台としていますが、これは、焼く必要はありません。実際の型の中ではこう配置されています。

土台を付けた原型をセットする

手首も頭部同様、角度に注意してセットします。手首部分は、余り部分を多く取って造形しているので、原型を切断して複製し易いように、角度を調整してセットします。セットといっても、両面ガムテープで貼って紙コップに固定しているだけです。次回から、これにシリコンゴムを流し込んで複製していきます。

両面テープで紙コップに固定

安藤賢司
バンダイ『S.I.C』シリーズなど、多数のハイエンドな玩具の原型を担当。「原型師がマスプロダクツ製品のパッケージに名前を刻まれる」という偉業を成し遂げ、「玩具原型」の認識を「作品」のレベルまで高めた。『S.I.C』シリーズ最新作の原型を常に製作中。アニメ『TIGER & BUNNY』のデザインにも参加

次回、神レベルの造形物がついに複製!