これまでの連載で、ひとつの造形物をフルスクラッチして完成させるというプロセスをお見せしました。今回は、私が造形で日々使っているツールに関して解説していきたいと思います。私にとってはすべて普通の道具なのですが、一般的には知られていないものもあるようなので、この機会に知っていただけると、嬉しいです。なお、あまりに一般的だったり、普通の使い方しかしていないツールはあえて紹介していません。

ニッパー デザインナイフなど

締切間際は精神的にも、机の上的にも、パニック状態になることが常なので、道具がなくなることが多いのです。そこで、よくく使う道具は複数用意してあります。

すぐに消えるので、それぞれ複数用意

定規とコンパス

結構適当に見える造形物が多いのですが、実はこの辺りのツールも駆使しています。コンパスは、設計の仕事をしていた父から譲り受けた精度の高いものなので、ディバイダーの代わりで使っています。

しっかりと寸法を測り造形するケースもあります

瞬間接着剤と硬化促進剤(セッター)

これがないと仕事になりません。もしかすると、一番大事なツールかもしれません。用途は多岐にわたり、大抵の場合、これがあればでなんとかなります。

接着にはほとんどこれを使用しています

糸ハンダ

0.3~2.0mmくらいのものを各種用意しています。縁に貼ればエッジが出せます。ラインをひいたり、模様を描いたり、コイルや三つ編みも作れる。何より、均一な太さで、自由に曲がるのがたまりません。意外でしょうが、造形でかなり使えます。

電気工作とはまったく違う使い方をします

そのほかの特殊なツール

下の画像左のオイルステインは、ハイキャストの複製品に墨入れするためのものです。木部に塗るという、本来の目的にも重宝しています。中央上の歯磨粉は、塗料につや消し剤として混ぜます。中央下のベビーパウダーは、キャスト流し込み時の誘導剤として利用しています。画像右はソフビシンナー。エアエブラシの掃除、エンビのおもちゃの塗装剥がし、プラ材の接着等、ちょっと強めの万能溶剤です。

歯磨粉やベビーパウダーも造形に使ってます

さらにこんなものまで活用

標本。これは造形の参考資料です。標本をそのまま流用して原型制作に活用することもあります。また、空薬莢などは、バイクのマフラーなどに流用できます。もちろん、市販のプラモデルや玩具も、流用パーツとして使用することがあります。

標本は生物的な造形には欠かせない

大量のプラモデル&玩具。まったく別の形に生まれ変わります

こんな感じで、日々作業に勤しんでます。次回より、また新たな造形を開始したいと思います。

安藤賢司
バンダイ『S.I.C』シリーズなど、多数のハイエンドな玩具の原型を担当。「原型師がマスプロダクツ製品のパッケージに名前を刻まれる」という偉業を成し遂げ、「玩具原型」の認識を「作品」のレベルまで高めた。『S.I.C』シリーズ最新作の原型を常に製作中。某ゲームのキャラクターデザインもやってます

次回より安藤が新たな造形をスタートする