ついに複製作業に突入です。前回で完成したシリコン型に、注型用樹脂(無発泡ウレタン、以下「キャスト」)を流すための加工を施します。複製品にキャストを流すための道となるランナーをシリコン型に彫ります。プラモデルにある外側の枠のようなものと同じものです。そのランナーを通って、本体に樹脂が入る入り口を「湯口」といいます。また、メス型にキャストを注ぎ込む口周辺を「湯溜まり」といいます。湯溜まりは、ランナーより直径を太くして、キャストを注ぎ込みやすくします。入り口をつけて空気の抜け道もつけておかないと、流れるものも流れないので、空気の出口も彫ります。鋳物の型と同じ様な構造だと思えば分かりやすいでしょうか。ちなみに、もともと「キャスト」とは「鋳造する」という意味であり、注型用樹脂(無発泡ウレタン)を「キャスト」と呼ぶのは、模型用語だけで、他の業種では、通用しない言葉です。
図面に従って、ランナー部分を掘ります。大きなところは型取りの時にいっしょに埋めたバルサ材を取り去った空洞部分です。湯口は足の裏に設けました。湯溜まりを掘り込んで作り、流し込むキャストに押し出される空気の通り道を掘ります。さらに、その先にも湯溜まりを掘ります |
次にキャストを流す為の下準備です。まず、キャスト用の離型済を軽く吹きます。次に、ベビーパウダーを撒いて、余分な分を吹き飛ばします。
ちなみに、ベビーパウダーの主成分のタルクを撒いておくと、細かいところまでキャストが回りやすくなるのですが、撒きすぎると逆効果だったり、表面がボソボソで使い物にならなくなってしまいます。次に、ふたつの型を合わせて、太い輪ゴムで固定します。
注ぎ込むキャストを用意します。ハイキャスト アイボリーを使用します。今回は作例を見やすくするために色をグレーにします。A液に適量エナメルの黒を入れます。それから同量に計ったA液にB液を混ぜます。
キャストを静かに型に流し込みます。空気抜きからキャストが溢れるまで注ぎます。注ぐと、キャストの色が変わり、固まり始めます。空気抜きのキャストに触れて、固まるまで待ちます
キャストが硬化したら、いよいよ型から複製品を取り出します。
キャストが回っていない部分の型を修正して、再び複製します。
以上で複製作業は終了です。今回は、一般的なやり方を紹介しました。実際のお仕事の時は、締切ギリギリの作業となる事が多いので、ここまで丁寧にやる事はあまりありません。複製作業には辛い湿気の多い季節になりました。僅かな湿気でキャストが発泡して、複製品が泡だらけになってしまうからです。窓を開けているか、閉めているかだけで、複製品のクオリティに違いが出るほど、気候は複製に影響します。なんと、扇風機の風さえも、発泡の原因になってしまいます。今回、複製したフィギュアを元に、次回いよいよ完成の予定です。
安藤賢司 |
ついに複製完了。次回、神の塗装テクが披露される?