スマートフォンやタブレットの普及で、いつでも、どこでも、Webアプリケーションの利用が容易になった。しかし、通信のインタラクティブ化、通信頻度とセッション数の増加といったWebアプリケーションの複雑化と、Webアプリケーションのユーザ数の増加によって、システムに対する負荷は急増する一方である。こうしたネットワークのパフォーマンスやレスポンスの課題に対する有効な改善策として注目を集めているのが、アプリケーション・デリバリ・コントローラ(ADC)だ。
コストパフォーマンスに優れた「Array APVシリーズ」
もともとサーバの負荷分散を行うためのネットワーク機器側からのアプローチとしては、1990年代後半のドットコムブームの到来以降、ロードバランサがその主流となっていた。米国カリフォルニア州に拠点を構えるネットワークアプライアンスベンダーの米Array Networksは、いち早くこのロードバランサにSSL(Secure Socket Layer)アクセラレーションを標準搭載したADCを「Array APVシリーズ」として2001年から販売開始し、米国、アジア、ヨーロッパなどの世界各地で5,000社以上の導入実績を誇っている。
アレイ・ネットワークスは同社の日本法人として2001年に設立された。日立ソリューションズ、NECネッツエスアイ、ネットワークバリューコンポネンツ、エフビットコミュニケーションズの4社を一次代理店とし、Array APVシリーズのチャネル販売を展開中だ。
Array APVシリーズの特長は、コストパフォーマンスに優れたSSL機能にある。他社のADC製品と比較して、性能が同じであれば価格は20%安く、価格が同じであれば性能が20%高いものを目指していると、アレイ・ネットワークス代表取締役の岡本恭一氏は語る。
「当社の強みはSSLに対する豊富な経験と知識、そしてテクノロジーです。Array NetworksはADCの黎明期より市場をリードする製品を世に送り出し、パフォーマンスとコスト面で多くの企業に高く評価いただいています。こうしたグローバルでの知見と、チャネルパートナーの提案力を活かし、日本の企業が抱えるネットワークの課題をArray APVシリーズで解消していきます」
"アプリケーション・デリバリ・ネットワーキング(ADN)"を標榜しているアレイ・ネットワークスでは、他にもSSL技術を活かしたセキュアアクセスゲートウェイ「Array AGシリーズ」や、WAN最適化装置「Array aCeleraシリーズ」といった製品群を提供しており、同社のADCソリューションをさらに強固なものにしている。
個人情報保護法の施行でADCは”当たり前”の存在に
アレイ・ネットワークス 代表取締役 岡本恭一氏 |
Array APVシリーズをはじめとするADC製品は、企業の情報システムにおいて、いまや"当たり前"の存在となっている。現にArray APVシリーズも、官公庁をはじめ、金融系や通信系を中心とする多くの日本企業に導入されているという。
日本でADCが普及するきっかけとなったのは、2005年の個人情報保護法の施行だ。法律によってWebサイト上で名前や住所を入力させる場合は個人情報を暗号化させることが義務付けられた。そこで多くの企業に採用されたのがSSLサーバ証明書を使用した暗号化方式だった。
さらに、SSLの暗号化通信で利用される公開鍵が1024bitからセキュリティ強度の高い2048bitへと移行する中で、よりパフォーマンスの高いADCが求められるようになる。
「SSL暗号化通信が1024bitから2048bitになることで、一気に5倍近い処理能力が必要となります。こうしたパフォーマンス面からSSLの置き換え需要が高まり、ADCの普及に繋がっています」(岡本氏)
モビリティの普及やサービスのクラウド化が進み、データトラフィックが急増する中で、ADCの重要性は今後さらに増していくと岡本氏は指摘する。
「エンタープライズシステムで要求されるSSLの能力とクラウドの世界で要求されるSSLの能力は、クラウドの方が桁違いに大きくなります。つまり、世の中を流れるトラフィックがますますSSL化されるとすれば、ADCにはさらに高いSSL処理能力が求められるでしょう」
SaaSプロバイダーの要求に最適で、クラウドでも活用できるADC
ADCの需要が増す中で、着実に販売数を伸ばしているのがArray APVシリーズだ。Array APVシリーズはエントリーモデルからクラウド事業者向けなどのハイエンドまで幅広いラインナップを揃え、アプリケーションやトラフィック統合に対する高速化をセキュアに提供する。社内システムのADCとしてはもちろん、一つのアプリケーションを数百万のユーザに提供するSaaS事業者のスケーラビリティ確保にも、Array APVシリーズは特に有効だと岡本氏は説明する。
「SaaS事業者には、アクセス・ユーザ数やデータトラフィック量の増大に対して、常に一定品質のアプリ制御と機動性、スケーラブルなSSL、新たなアプリケーション・ネットワーク機能の迅速な実装と拡張が求められます。Array APVシリーズはこうしたSaaS事業者の要求も満たすように設計されたADCです。米Array Networks独自のSpeedCoreアーキテクチャを擁するArrayOSは、最新のハードウェアを、最大限に活用できる拡張性と柔軟性を備えています」
さらにArray APVシリーズは、カーネルレベルのクライアント証明書認証や、Webアプリの第一防御線となるマルチレイヤーセキュリティといったSaaS事業者に求められるセキュリティの担保を、パフォーマンスを犠牲にすることなく実現するという。
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次回の連載第2回目では、Array APVシリーズのさらなる特長やそれを裏付けるテクノロジー、そして間もなく提供予定の新OSで実装される新機能などについて紹介する。