アリアン5ロケットは、欧州が誇る大型ロケットである。9月25日(現地時間)、南米・仏領ギアナにあるギアナ宇宙センターから、100回目の打ち上げが無事に行われた。筆者は今回、射点から5kmほど離れたトゥーカン見学場より、打ち上げを見ることができたので、当日の模様を振り返ってみたい。
アリアン5とは
まずは、アリアン5の機体構成について、概要を説明しておこう。現在、静止衛星の打ち上げに利用されるのはアリアン5の「ECA」と呼ばれるタイプで、液体水素+液体酸素の第1段と第2段に、2本の固体ロケットブースタが付く形になる。これは、日本のH-IIA/Bロケットと同じスタイルだ。
現在運用されているタイプには、ECAのほかに、低軌道・中軌道向けの「ES」もある。両者の違いは第2段。ESの第2段エンジンは推進剤にヒドラジンと四酸化二窒素を用いており、再着火が可能となっている。以前は国際宇宙ステーションに物資を運ぶ「ATV」の打ち上げに使われていたが、現在は主に測位衛星「ガリレオ」で利用されている。
アリアン5は、最初期の「G」型以降、改良によりいくつかのタイプが作られているのだが、これまでの合計100機の内訳は、Gが16機、 G+が3機、GSが6機、 ECAが67機、ESが8機。ECAが圧倒的に多く、それだけ商業打ち上げで頻繁に使われているということが分かる。
打ち上げ直前、カウントダウンが一時停止
筆者は打ち上げの1時間前、18時ころにトゥーカンに到着。急いで撮影機材を設置し、打ち上げの瞬間を待った。
しかし、カウントダウンが直前にストップ。機体側ではなく、地上側の問題という情報が入ってきたが、今回の打ち上げウィンドウは18時53分~19時38分の45分しかなく、あまり時間的な余裕は無い。正直、筆者も「今日の打ち上げは厳しいか…」と思い、スケジュールの変更をあれこれ頭の中で考えていた。
しかし19時25分ころ、同31分よりカウントダウンを再開するという一報が。アリアン5は、打ち上げ7分前まで戻ってシーケンスを再開するため、本当にウィンドウのギリギリ最後、ラストチャンスだ。
19時38分、メインエンジンに点火
そして19時38分、メインエンジンの「ヴァルカン2」に点火。H-IIA/Bの場合、カウント0でブースタに点火し、すぐ上昇を開始するのだが、アリアン5の場合は、カウント0はメインエンジンの始動で、ブースタの点火はその7秒後だ。日本の打ち上げに慣れていると、「あれ? 上がらない?」と思ってしまうかもしれない。
現地は18時半ころに日没を迎え、すっかり夜になっていたが、ブースタが点火されると、周囲は再び昼の明るさに。これが夜間の打ち上げの醍醐味ではあるのだが、撮影は難しくなるので、記者泣かせでもある。
やや雲は多かったものの、あまり遮られることもなく、ロケットの飛行を最後まで見ることができた。打ち上げ2分後ころのブースタの分離まで確認できたのは嬉しい。
なおいつものように動画もアップしようと思ったのだが、現地の通信環境があまり良くなく、残念ながら断念した。帰国後のレポートで掲載しようと思うが、アリアンスペースから公式動画がいろいろ出ているので、まずはそちらを参照して欲しい。
トゥーカン見学場では、我々プレスが取材するだけでなく、衛星側の関係者も打ち上げを見守っている。まず「Horizons 3e」、続いて「Azerspace-2/Intelsat 38」と、分離が無事に行われると、それぞれ拍手が沸き起こっていた。