圧倒的な電力効率を実現したBlue Gene/L
地球シミュレータの次にTop500の首位に就いたのはIBMのBlue Gene/Lである。最高性能の世界トップのスパコンを作るには最高性能の計算ノードを出来るだけたくさん並べる必要があると考えられていたが、Blue Gene/Lは、必ずしも最高性能の計算ノードは必要なく、全体として高い計算性能が出せればよいという考えに立ち、2コアのプロセサを持つPowerPC 440というPCクラスのプロセサを使った。クロック周波数も700MHzと低めのプロセサである。
そのため、消費電力も小さく、より多くのプロセサを搭載できる。このため従来のスパコンの作り方と比べて経済的な設計となっている。
地球シミュレータの場合、ピーク性能が40.96TFlopsで消費電力は3200kWであるのに対して、Blue Gene/Lは13万1072コアを使っても、ピーク性能が367TFlopsで消費電力は1433kWである。もちろん、時期が違い、テクノロジ的に地球シミュレータの方が電力効率が悪いのは無理のないところではあるが、Blue Gene/Lは9倍のピーク性能を半分弱の電力で実現しており、圧倒的に電力効率が高い。
Blue Gene/LではPCクラスのSoCをベースにしているが、スパコンで必須の機能は追加している。スパコンでは倍精度の浮動小数点演算は必須であり、Blue Gene/Lでは、普通のPowerPC 440コアに倍精度の浮動小数点演算器を追加している。また、大規模で部品数の多いスパコンでは故障やエラーの頻度が高いことから、安定に動作させるために、メモリのエラー訂正などを付加している。
2005年の6月のTop500ではトップ10の10システムの内の1、2、6、8、9位と5システムをBlueGene/Lが占めた。このように、トップ10の半分のシステムを(規模は異なるが)1つのスパコンアーキテクチャが占めるというのはBlue Gene/Lだけが達成した快挙である。これはBlueGene/Lがコストパフォーマンスが高いスパコンであったことを証明するものである。
次の図はBlueGene/Lの概要を示すものである。左から順に、2コアを集積するPowerPC 440チップ、2チップを搭載するコンピュートカード、16カードを搭載するノードカードである。その右は32枚のノードカードを収容するラックである。
1つのラックには1024チップが収容されており、ピークで5.6TFlopsの演算能力と512GBのメモリが入っている。なお、BlueGene/Lの2コアは、一方は演算用、一方は通信用のような使い方と、両方のコアともに演算と通信を行うという使い方ができるようになっており、5.6TFlopsは両方のコアともに演算に専念した場合のピーク性能である。
(次回は12月18日の掲載予定です)