水冷で121個のLSIを冷却

NWTのシングルボードプロセサは水冷である。121個のLSIそれぞれに伸縮ができるベローズが接触するようになっており、ベローズの中には水を吹き出すノズルがあり、LSIに接触するベローズの内壁を水冷する構造であった。

現在のサーバでは高発熱のLSIはCPUとGPUで、数個のLSIに水冷のコールドヘッドを取り付けるという構造が使われているが、NWTでは121個のLSIを水冷する必要があり、このような構造を採用したと考えられる。

次の図の左側に見えるボードについている円形のものがベローズで、右側の金色のものが121個のLSIである。そして、左右のボードは密着させて使用する。この写真では一部しか見えないが、プロセサモジュールの左上と右下に、冷却水の接続コネクタが見える。

  • NWT

    Computer History Museumに展示されているメインフレームのM1900 CPUのボード。左側が水冷のモジュールで銅色の丸いものがベローズで、中にノズルがあり、LSIに接触する部分を水冷している。LSIを搭載したボードに密着して使う。この写真はM1900のものであるが、冷却機構としてはNWTも同じものを使っている (出典:筆者がComputer History Museumにて撮影)

PEのメモリに1Mbit SRAM素子を活用

ベクトルプロセサに限らず、高い演算性能を実現するためには、演算器にデータをよどみなく供給することは重要であるが、パイプライン演算を行うベクトルプロセサでは、これは必須である。このため、バス幅特大で距離最短のメモリ接続が必要となる。そこでNWT用に1MbitのSRAM素子を開発し、PEの256MBの主記憶に使用した。

  • NWT

    PEの写真で右側が冷却モジュールを付けたPEボード、左側の8枚のプリント板はメモリボードである。データをよどみなく供給するため、NWTの2次キャッシュとして開発したSRAMメモリを使用した (出典:2011年に開催された三好甫先生記念計算科学シンポジウムにおける広島市立大学の北村名誉教授の発表スライド)

次の写真のように、プロセサ側は4段3列にPEを並べた。CPU側は2枚のモジュールで冷却ループを構成しており、水が回っていれば冷却は可能である。しかし、この写真で見られるようにプロセサボードの裏側に256MBのSRAMメモリが並ぶことになる。そして、この部分はメモリモジュールが4段積まれており、これを空冷することになる。このため、天板の穴あきパネルを触ると熱かったとのことである。何とか冷却の改造で、規定値に抑えたものの、天井が低い計算機室では陽炎が立つマシンであったという。

  • NWT

    筐体にはPEを3列4段に実装した。CPU側は水冷であるが、各PEの裏側についているメモリは空冷で、4段分を冷却した空気が排出される。そのため、天井の低い計算機室では陽炎が立つ (出典:2011年に開催された三好甫先生記念計算科学シンポジウムにおける広島市立大学の北村名誉教授の発表スライド)

(次回は3月27日に掲載します)