CM-5のネットワークは仮想アドレスをサポートしており、以前説明したように、アドレス変換のやり方でネットワークを分割して規模の異なる複数のマシンとして使うことができた。
また、図には書かれていないが、全ノードに接続できる診断用ネットワークを持っていた。CM-5は大規模なマシンであったので、故障個所を素早く、正確に見つけられることが重要であり、エラーチェックが充実した設計であった。レジスタやメモリはエラー訂正回路やパリティーチェックで守られ、データネットワークも、その40%のハードウェアは診断のための機能であり、単にデータのエラーを見つけるだけでなく、どのリンクが故障しているかまで切り分けられる機能を持っていたという。
そして、故障が見つかると、ネットワークの仮想アドレス対応を変更して、故障個所を切りはなして運転できるようになっていた。
CM-5のControl NetworkもData Networkもバンド幅は20MB/sである。CM-1からCM-200のデータネットワークは12次元ハイパーキューブであったが、CM-5のネットワークは図3.15に示すファットツリーになっている。下段の〇が計算ノードであり、その上の□がルーターである。ルーターは下向きに4本のポートを持っており、4つの計算ノード、あるいは次の段のルーターの上側のポートを接続することができる。
最下段の計算ノードとルーターの間のリンクは20MB/sのバンド幅で、その上の最下段のルーターとその上の段のルーターの間のリンクは2倍の40MB/sのバンド幅となっている。したがって、水平方向に切るとどこで切ってもバンド幅は一定という作りになっている。なお、これらのリンクは双方向に信号を伝送することができる。
そして、ネットワークとのインタフェース部は次の図3.16のようになっている。
CM-5の外観を図3.17に示す。物量が増えているため、大型の筐体になっているが、黒い(Darth Vader Blackと呼んでいた)箱と赤いLEDのインディケーターはCM-2の筐体から受け継がれている。
そして、TMCは、クロックを40MHzにアップしたCM-5Eというモデルも作ったが、あまり出荷しないうちに潰れてしまった。CM-5/128のHPL性能は16.38GFlopsであったのに対して、CM-5Eは20.48GFlopsにアップしており、SuperSPARCだけでなく、ベクタユニットのクロックも40MHzにクロックアップしたようである。
(次回は12月27日に掲載します)