CM-1のデータプロセサのトポロジ
CM-1のデータプロセサは12次元のハイパーキューブネットワークというトポロジで接続されている。最初の5次元はチップとプリント板の中に納まり、次の4次元はバックプレーン内に収まり、残った3次元をラック間の接続で実現していた。物理ネットワークは12次元のキューブであるが、ルーターのプログラミングで、ブロードキャスト、グローバルORなどの色々な構造のネットワークを作ることができた。
CM-1のプログラミングにはParisという言語が開発された。Parisは豊富な並列処理プリミティブを持っており、それらのプリミティブはCM-1のシーケンサで実行されるファームウェアで実現さていた。また、高級言語としてはアレイ拡張を加えたFortran、並列拡張された*LispやCM-Lisp、C*言語などがサポートされた。
CM-1は、図3.9の写真に示すように、4つの黒い箱のような形(Cube of Cubes)をしている。それぞれの箱が32個のデータプロセサLSIを搭載したプリント基板を32枚収容している。消費電力は12kWと比較的少なく、空冷で冷却していた。
Computer History Museumの展示では、64Kデータプロセサのシステムのお値段は250万ドルと書かれている。
しかし、このフルサイズのマシンは2台しか売れず、Hillis氏は、当時は人工知能関係の予算はそれほど多くなく、このような大型のマシンを買える研究機関が少なかったのが原因と述べている。一方、CM-1は人工知能の計算を行うために設計されたマシンであり、物理シミュレーションのための浮動小数点演算器を持っておらず、スパコンの用途の主流であるシミュレーションには使えないマシンであった。
(次回は11月15日に掲載します)