DenelcorのHEP
昔むかし、Denelcorという会社があった。Denelcorは1972年に「Heterogeneous Element Processor(HEP)」というスパコンを開発した。このマシンのアーキテクトは、 2018年4月に亡くなったBurton Smith氏である。なお、Burton Smith氏は、その後、Tera Computer社の創立者の一人となり、スパコンの開発を続ける。2000年には、Tera社は経営の傾いたCray Computerを買収するが、社名としてはTeraを止めて、名門Crayを存続させることを選んだ。Smith氏は永らくCrayの技術担当副社長を務めていたが、社長との経営方針の対立からCrayを辞めてMicrosoftに移り、Technical Fellowを務めていた。
HEPは図3.5に示すように、右側の部分は普通のプロセサであるが、左側にはPSW QueueとDelayとインクリメンタからなる制御ループがある。PSW(Program Status Word)は実行中のプロセスのプログラムカウンタなどのアーキテクチャ状態を記憶する。
PSW Queueには8個以上の実行中のプロセスのPSWが格納されており、キューを次々と読み出していくと、次々と実行するプロセスが切り替わっていく。そして、PSWの中のプログラムカウンタに従って実行する命令を読み出してファンクションユニットで実行していく。
そして、ファンクションユニットの中の1つのユニットとしてレジスタとデータメモリの間のデータ転送を行うユニットが設けられており、このユニットがデータメモリとレジスタ/定数メモリ間のロード/ストアを行っている。
なお、命令長は64bitであり、プログラムメモリは32Kから1024K命令を格納することができた。Register Memory部は64bit長で、レジスタ部は2048エントリ、定数メモリ部は4096語であった。スーパバイザプロセスは定数メモリに書き込むことができるが、ユーザプロセスは読み出しだけができるようになっていた。
(次回は9月20日の掲載予定です)