1978年に日立は、IBM互換のメインフレームである汎用機「HITAC M-180」に接続する「IAP(Integrated Array Processor)」を発表した。

富士通のF230-75 APUはCPUから命令を供給する付加プロセサであったが、日立のIPAはM-180 CPUの命令セットを拡張してベクタ処理命令を追加した形になっていた。

  • HITAC M-180 IAP

    図2.5 HITAC M-180 CPUにIAPを付けた構成のブロックダイアグラム。一点鎖線で囲まれた部分がIAPでCPUと並列の処理装置となっている (出典:日立評論 Vol 60 No. 6(1978-6))

日立のIAPもF230-75 APUと同様に、乗算器の回路数の多い部分にLSIを開発して使用している。富士通は100ゲートのNTL LSIであるが、日立はM-180 CPU用に開発した200ゲートのECL LSIを使っている。

  • HITAC M-180 IAP

    図2.6 HITAC M-180のIAPの乗算器のプリント板。8個搭載されているLSIは最大200ゲートでMECL 10Kと混在して使える設計になっていた (出典:日立評論 Vol 60 No. 6(1978-6))

なお、M-180 IAPシステムの演算性能を見ると、IAPの演算部であるHSA(高速演算機構:High Speed Arithmetic)は乗算を高速に実行するもので、加減算の高速化は行っていない。このため、加減算はCPU単体の場合と同じ速度である。一方、浮動小数点乗算はHSAがない場合と比べて5~6倍高速化している。また、浮動小数点除算は加減算と乗算を使った収束法で計算しており、浮動小数点乗算が速くなった効果で、こちらも1.5~1.9倍の性能向上となっていた。

  • HITAC M-180 IAP

    表2.2 HSA有りのM-180 IAPの演算性能とHSA無しのM-180の演算性能(命令実行時間)

(次回は4月12日の掲載予定です)