マイクロプロセサのテスト
ウェハの状態では、このようなスキャン系を使ったFFのテストと組み合わせ回路のテストやメモリBISTを使ったメモリのテストなどで不良の有無を検査し、不良品にマークを付けて置く。そして、ダイシングソー(ウェハ切断用の丸鋸)でウェハを賽の目(ダイス)に切って、良品のチップだけを取り出す。
余談であるが、プロセサメーカーなどではプロセサチップを透明なプラスチックでモールドしてキーホルダーや携帯ストラップなどに加工したものをお土産にくれることがあるが、このような用途に使われるのは、この段階で不良品として落とされたチップである。
ウェハの状態では、ウェハプローバと呼ぶ細い針をダイの入出力端子と電源に接触させて回路を動作させるが、針のインダクタンスなどのために、チップをフルスピードで動かすことが難しい。また、高速のクロックで動かすと消費電力が大きく、プローバの針からの電源の供給や冷却も難しい。このため、高速や高温でのテストは、パッケージに入れたチップで行われる。
パッケージに入れられたチップは、ウェハ段階でのテストにはパスしたチップであるが、スキャン系を使ったウェハ段階でのテストは速度が遅く、スイッチ速度が遅いあまり電流を流せないトランジスタがあったり、配線は繋がっているが細いところがあって配線の抵抗が大きく高速でスイッチできないという不良が残ったりしている可能性がある。このため、パッケージに入れた状態で、高速でちゃんと動作するかを測定し、また、どこまで動作するかでクロック速度の異なる品種に区分し、高速で動作するものは高く売り、低速でしか動作しないとか、消費電力が大きいチップは安くして売るということになる。
部品の故障
このようなテストを経て、一応、不良個所が無く、定格のクロックや消費電力で動作するプロセサができるが、使っているうちに故障することがある。部品の故障率は一般に図1.10に示すようなバスタブカーブと呼ばれる傾向を示す。なお、このバスタブは西洋の浅いバスタブで、日本風の風呂桶ではない。
部品は、製造直後は高い故障率を示す。これは検査では一応動作するプロセサでも、切れそうな細い接続でかろうじて繋がっているとか、トランジスタのゲート絶縁膜にひびが入っていてショートしそうな部分があるなどという初期不良が内在しているために、短時間の動作で故障してしまうケースがあるからである。
このような使用開始直後の故障を初期故障という。しかし、このように故障頻度が高いものを出荷してしまうとユーザからのクレームの山になってしまい、修理や交換などの費用がかさんでしまう。このため、部品の出荷前に、工場内である程度の時間動作させて、初期故障の大部分が起こってしまい、故障率が下がったところで出荷するという方法が取られる。
通常の動作状態では、初期故障が出切るまでに何十日もかかってしまうので、高温で動作させたり、電源電圧を上げたりして故障の発生を加速した状態で動作させることが行われる。このように加速して、短時間の動作で初期故障を取り除く方法をバーンイン(Burn in)という。
しかし、微細化が進んだ最近のプロセサではあまり電圧を上げると、初期不良ではない正常なトランジスタのゲート絶縁膜を壊してしまうなどの問題があり、なかなか、加速率を大きくすることが難しい状況になってきている。