東海地方を中心に予備校や学習塾を運営するさなるグループは、スケジュールや各校への連絡、保護者からの問い合わせなどを処理するためにグループウェアを導入している。

基本的にはPCから利用する設計になっているが、各校の責任者である「教室長」との連絡がリアルタイムに行えないのが悩みだった。この課題を解決するために、同社はNTTドコモのスマートフォンを一括導入した。同社は、どのように課題を解決したのだろうか。

さなるは、業務のスケジュールや連絡、保護者や生徒からの問い合わせなどをグループウェアで管理している。

各校にはインターネット回線を敷き、無線LAN環境を構築しており、基本的には貸与されたノートPCでグループウェアからスケジュールや業務連絡、問い合わせなどを確認して処理している。生徒の成績や出欠などの情報も同一のグループウェアで管理しているという。

ドコモのシステム導入で何を目指したのか。さなるのIT室・指導技術研究室の眞野 尚己氏に話を聞いた。

2年前からMDMソフトで端末管理

さなるでは、教室長や講師が各校舎に出勤している間の連絡は携帯電話を使っていたが、これは各講師が所有する私用の端末で、連絡が多い講師の中には通話料金が万単位の額になる人もいたそうだ。

そのため、会社側が携帯電話を貸与することになり、それを契機としてグループウェアとの連携も検討した。色々な製品を検討していたが、当初は要望に満足に応えられる端末がなかったという。

その後、スマートフォンが登場した際も検討を行ったが、当時のスペックでは「うまくいく感じがなかった」と眞野氏は言う。

さなる IT室・指導技術研究室 眞野 尚己氏

ドコモ以外の他社も検討したが、いったんは見送られた。その後、スマートフォンの画面の大きさを重視した結果、導入を決めたのが「GALAXY Note II SC-02E」だ。

実際は、当時初代GALAXY Noteでドコモから提案され、導入に向けて進めている中でGALAXY Note IIが発売されたため、端末を切り替えて導入したという。

導入は2012年春。180台以上のGALAXY Note IIが導入され、全国に200弱ほどあるさなるグループの各校を管理する教室長(一人が複数の校舎を受け持つ例もある)に配布された。

それに合わせ、グループウェアと連携するコミニュケーションウェアも導入。これはドコモの開発ではないが、スマートフォンの導入に合わせて最適な形で利用できるようにした。

GALAXY Note IIに加え、「スマートフォン総合管理システムSPPM2.0」によるMDMも採用。

端末紛失などのセキュリティを考慮し、microSDカードの使用不可、USB接続によるデータ移行の禁止といった設定を行っている。

また、コミニュケーションウェアの添付ファイルは保存せず、ログアウトすれば端末内にデータが残らないようになってるという。

通信は「ビジネスmoperaアクセスプロ」で、外出先からでもセキュアにコミニュケーションウェアにアクセスできるようにした。

コミニュケーションウェアでは、本部からの連絡や保護者・生徒からの連絡が届いていれば通知が行われ、すぐに内容を確認できる。

さなるでは、いったん地域の拠点に集まり、夕方から各校へ講師が移動するが、この拠点から校舎への移動から授業が終わり、拠点に戻るまでの間、連絡が取れない場合もあったという。

GALAXY Note IIとコミニュケーションウェアを導入したことで、通知があればすぐに内容を確認でき、リアルタイムに情報がやりとりできるようになった。

グループウェアの操作画面。独自開発アプリで、念入りにカスタマイズを施しているという

通話の利用に関しては特に制限はなく、私用の利用もできるが、6月までは分計で処理していた。7月からはドコモがカケホーダイを開始したため、プランを切り替えたそうだ。

これによって仕事の電話でも私用の電話でも通話料金は変わらず、会社側ですべて負担する形になった。眞野氏によれば、通話料金のためというよりも、分計による処理の手間が削減できたことが大きいという。

夏期講習で箱根で合宿することもあるが、使っていてドコモの電波で繋がらない場所はほとんどなく、その点でも問題は起きていないそうだ。

さなるでは、「サナネット」と呼ばれる保護者が利用するサポートサイトを設けており、子どもの登下校時にメールを送信したり、諸連絡などに活用されている。

「教育に関して、子どもや親との連絡はとても重要」と眞野氏。これまでは、保護者への連絡でも子どもにプリントを渡すぐらいしかできなかったが、インターネットを活用することで、保護者に直接連絡ができるようになり、保護者からの連絡もタイムリーに届くようになった。

スマートデバイスの導入で重要なことは「何ができるか」

さらに、現在はタブレット導入の検討も進めているという。iPadの登場で眞野氏は興味を持ったそうで、生徒の学習用途で提案を受けたことがあったそうだ。

ただ、当初は端末代が高すぎたため、見送っていたとのこと。その後、Android 4.0が登場し、実用的になったと判断して、再び検討を行なった。

眞野氏は、スマートデバイスの導入にあたって「何をやるかが一番重要」と強調する。「便利そうな端末だから、これを使って何かをしよう」という考え方ではうまくいかないという。

眞野氏は、「授業でこういう使い方ができれば、家で生徒がこういう使い方ができれば、絶対に学力アップにつながる」ということを考え、それを実現するための仕組みを考えた結果、タブレットに行きついた。

タブレットを導入している学習塾などはあるが、「自立学習用が多い」。しかし、眞野氏は「授業で使いたかった」ため、それを実現できるシステムを開発した。

開発する側、それを使う側に、「生徒の頭の中にどういうものを作っていきたいか」というイメージがあれば、それに合わせたものを開発できるし、それに合わせて使いこなせるようになり、利用頻度も高くなり効果も出る、というのが眞野氏の考え方だ。

実は、当初Androidタブレットの導入を進めてきたさなるだったが、「ペン入力にこだわっていた」という。その観点での選定も進めてきたが、東芝からペンの書き味にこだわったWindowsタブレットの提案を受け、実際にテストした結果、これを採用することにしたそうだ。

「やりたいことを実現する」ためには、自由度の高さが重要で、そのためiPadよりAndroidを選び、そしてWindowsタブレットの方が実現しやすいことから、それを選択したという。

コスト面では上がることになったが、価格だけで考えるのではなく、「実現したいことを実現する」ことを追求しているわけだ。

GALAXY Note IIやドコモのシステムの導入も、同様に「実現したいこと」が先にあり、それを実現するためのシステムとして最適だったから採用された。

グループウェアは、それに合わせて新たに開発しており、ここでも「実現したいこと」を優先する姿勢が現れている。

眞野氏は、こうして導入したシステムが、費用対効果は十分に出ているという認識で、今後も生徒の学力アップを目指して、さまざまな取り組みを続けていく考えを示している。